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滅ぼしの醸成  作者: 藤野彩月
第二部
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証言②

男は遥を軽蔑の眼差しで一瞥しながら、

「これはつい昨日録ったものだ。」

と、もう1つの音声データを再生した。今度は若い男性が女性2人を相手に話を聞いていると思われるやり取りだった。

(以下、音声の内容)

「(女性の声)大丈夫なの?悦子(えつこ)。やめといた方が良いと思うんだけど。私からお話しして、あんたは部屋で…」

「良いの、姉さん。これは当事者の私から話した方が確実だから、それにあの人でなしに報いを受けさせられるなら、私何だってやるわ。」

「(男性の声)どうか無理なさらないでください。相模原(さがみはら)さん。確かにあなたのお話が城戸遥を追い詰める証拠となるのは確かです。ですが城戸と共謀関係だった探偵も吐いて、自分のやった事を認めています。もしもこれ以上話すのが辛いようでしたら、いつでも止めて大丈夫です。」

「お気遣いありがとうございます。早速お話します。私は娘と…あのお、いえ元夫と3人で暮らしていました。夫婦関係も決して破綻していませんでした。5年前に…あの、あの悪魔が現れるまではね!あの、人の形した悪魔は私達の家庭を取り返しのつかないまでに壊していきました。今でもどこかで平気な顔で生活していると思うと我慢なりません!」

「(姉の声)エッちゃん!」

「…あ、ごめんなさい。大丈夫、大丈夫です。ええと、元夫とあの…城…戸―本当は名前も口にしたくないのです―は仕事絡みで知り合ったのです。当時あの人は医療機器メーカーで働いていて、同じ部署にあの女が新入社員として入って来たのです。彼曰く、あの女の第一印象はとにかく清楚だったそうで、決して魔性だとか行き過ぎた派手さとかはなかったみたいです。今考えると、そう思わせるのが彼女のやり口だったんですよ。家でその女の事を仕事の話で持ち出す度にやたらと褒めて、妙にボケーとした表情をしていました。もう50過ぎの大人なのに。正直私は不快でしたが、いい大人が若い子相手に嫉妬するのもおかしな話と思って顔には出しませんでした。やがて帰りも以前は遅くて9時くらいだったのが11時か、日付が変わる寸前まで帰って来ない日もありました。少し不思議に思いましたが、その時はまだ不倫してたなど考えたこともありませんでした。元夫とあの女の関係が怪しいとわかったのは、忘れもしません5年前の4月です。きっかけは元夫が本社へ異動する際にもらったと言うこの手紙です!(ここで机上に何かを叩き付ける音がした。)何度これを破り捨ててやろうと思ったことか。本当なら、この異動は喜ばしいことでした。なぜなら栄転でしたから。同じ頃、娘の大学進学が決まったのですが、第一志望の国立だったのとあの人のお給料も以前より上がったので学費は心配しなくて済むと思っていたんです。結婚して20年、今まであの人のために尽くしてきたことだし、久しぶりに夫婦水入らずで海外旅行に行こうかと考えてもいたのです。ところが送別会のあった夜、帰宅した元夫の入浴中に私はあの人が頂いてきたたくさんのお餞別のお菓子を整理しようとしました。そのうちの1つのお菓子が入った紙袋の中に、この忌まわしい手紙が入っていたんです。いかにも若い女が使うようなショッキングピンクの封筒で、複数の便箋が入ってるとわかる分厚さでした。封筒にははっきりとあの人がべた褒めしていたあの女の署名がしてあったので、もしかしたら…と不吉な予感がしました。ですが封筒にはしっかりのり付けで締め切られていたので、とても気にはなりましたが…あえてそのままにしておきました。後々あの人から盗み見したと責められるのは嫌だったので。その翌日、元夫が仕事に行っている間に私はあの人の書斎や本棚を調べましたが、あの手紙がどこにもなかったんです。ゴミ箱を覗いてみても一緒でした。もう既にあの人が独自に処分したんだ。中身が私の目に入らないように。よかった、と私はホッとしました。しかし、今考えると私はバカでした。本社での新年度の飲み会があった夜、あんな形で手紙を目の当たりにするなんて!…」

再生の間、男は遥の様子を観察していた。

音声の主は明らかに自分への憎しみを顕にしているのに、遥は楽しそうに聞いていた。

ただ、ここで「長いわね。千歳さんの方がもっとはっきりしてたのに。」と呟いた。

男は聞こえなかったふりをした。引き続き相模原と言う女性の話に耳を傾けた。

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