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27点

 学校とは、俺にとって縁遠いものである。

 病院で毎日毎日点滴を受け、ベッドの上で、シミの数がわかるくらいには天井を見上げる機会があったくらいだから、小学校、そして二年と少し通った中学はまだしも、未だ通った経験がない高校については、未知の世界。

 だからこそ俺は昨日、その世界に飛び込むため、相当の覚悟を持ってバリーヒルズ高校の入学試験を受けようとしていた。


 そう、受けようとしていた、だ。過去形だ。


「じゃあリラックスしてください。息を吸ってー、吐いてー」


 棒読みで告げる白衣の男は、液晶のディスプレイを見つめたまま。

 それに答えることなく、足のついた極々普通のベッドで横になっている俺は、息を吸わずに、やりきれなさからため息だけをついた。

 俺の頭には、理容室でパーマをかける時に、頭部につけるようなでっかいヘンテコな装置がのっかっている。そこから色々なコードが頭の各所に繋がれていた。


「それではマズロー・アスモダイ君のバリーヒルズ高校入学試験、脳力判定テストを行います。確認ですが、試験内容の説明は受けていますよね? この脳力判定テストでは貴方が所有している知識及び肉体能力、人格、貴方が今まで送ってきた人生を客観的に点数化するものです。一定のライン、100点満点中の75点に達していれば入学が認められます」


 俺の、この試験のイメージは、パーマかけて合否が決まる。

 これで落ちたら、嫌過ぎる。


「では、少々痛みますが我慢してください」


 現代の知識がほとんどない俺が、勉強する時間も与えられずに、そこそこレベルが高いであろう高校の入学試験を、普通に受験したら合格出来るのか、という疑問は大いにあるんだが……えぇい、弱気になるなマズロー・アスモダイ!


「! っ……!」


 何だ、今何かこの機械、バチッって音たてて、青白い火花散らしたぞ!

 この痛みは、頭に特殊な電流とか電波とか流してるからか?


「ふむふむ、英語、フランス語、ジパン語は日常会話レベルで使用可能と。ドイツ語が、片言? 片言だけで売っている語学情報屋なんてあったっけ?」


 あー、アイツもなんか語学の知識を情報化して購入出来る、とか言ってたな。


「俺のは独学、語学情報を購入したものじゃなく、自分で勉強して学んだものです」


 男は珍獣でも見るような目付きで俺を見下ろした。


「まぁ、人生は無限だからね。そういう事に時間を使うってのもありか」


 その後は彼が俺に語りかけることはなく、五分ほど過ぎ、


「結果出たよ」唐突過ぎる。「100点満点中の27点。不合格」


「はぁ?! ちょ、ちょっと待て!」


 あんまりな点数に敬語を忘れ、頭にヘンテコ装置をつけたままベッドから飛び起きる。

 確かに俺は22世紀出身の人間だから、最近の情勢にゃ疎い。

 でも、高校の試験だと言うからには社会に限れば過去の歴史問題もある。数学は基礎的な事柄であれば、問題が劇的に変化しているとは思えない。国語、外国語も同様だ。理科系の科目は、科学の進歩があるだろうから大した点数は取れないだろうが、それでも平均して、27点だなんて有り得ない!


 白衣の男は俺の頭からヘンテコ装置を取り外すと、無言でパソコンのディスプレイをこちらに回し、一番左端にある数字を指し示す……確かにそこには27点と書いている。


「わかった? しかし、こんなヒドイ脳力で高校受けようなんて。犬でももう少しマシな点数が出そうなもんだけど」


 ……


「ま、そういう訳だから君は不合格ね。じゃあ僕は忙しいからこれで失礼するよ」


 ……俺の、人生が、27、点……?

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