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アレクサンダー英雄戦記 ~最強の土魔術士~  作者: 大野半兵衛
十六章

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137/160

137_帝国激震

【書籍化】アレクサンダー英雄戦記

本作品が書籍化されることになりました。

発売予定は2020年12月2日の予定です( ^)o(^ )

Amazonで予約できますので、予約してやってください!

 


 テルメール帝国第六代皇帝デラーズ・フォン・テルメールは大柄な人物であり、文よりは武に傾倒した皇帝である。

 デラーズはまだ三十五にもなっていない若き皇帝であるが、その髪は白く染まっている。これは老けているわけではなく、生まれた時からこの白髪なのだ。

 父は四代目の皇帝であり、五代目皇帝は兄であった。その五代目の皇帝だった兄が在位四年で他界したため、六代目の皇帝として九年前に即位したのがデラーズである。


 デラーズは日課になっている槍の鍛錬を終え、日陰に置かれた椅子に腰を下ろした。

 侍女が音もなく現れてタオルを手渡して下がると、また別の侍女が現れて氷の入ったガラスの器を置いて下がる。

 ガラスの器に入った親指の先くらいの大きさの氷を手掴みで取り、口に放り込みガリッボリッと噛み砕く。

 とても大国を従える皇帝とは思えない所作だが、十五男であり、庶子として生まれたことで皇帝になるための教育を受けていないためだろう。

 しかし、デラーズは皇帝として能力が劣っているかというと、そうではない。礼儀作法を別にすれば、デラーズは決断力があり、情に流されない苛烈さを持ち、戦(いくさ)でも強い皇帝である。


「皇帝陛下!」

 汗が引く頃、筆頭大臣のゲレイロ・フォン・モニスが騒々しくやってきた。

「ゲレイロか、何ごとだ?」

 ゲレイロの慌てように、ただごとではないと感じたデラーズは、白目が目立つ赤い瞳の三白眼で鋭い視線を向ける。

「ケルツ様、謀反にございます」

 それは唐突なことだった。


 ケルツはデラーズの兄だが、小心者でとても皇帝の座に収まる器ではない。重臣の誰もがそう思っており、仮にケルツが皇帝の座を望んでも従う者はいない。そう思っていた。

 だが、ケルツが謀反を企てるだけでなく決起したということは、ケルツを神輿として担ぐ者がいるということだ。そんな人を見る目のない重臣がいただろうかと首を傾げるが、デラーズには一向に思い当たらない。

「誰がケルツを担いだ?」

「カール・フォン・オードストロフ侯爵にございます」

「オードストロフ……か。身のほどを知らぬ奴め」

 元南方方面軍司令官であったウインドス・フォン・オードストロフが隠居し、息子のカールに家督を譲ったのは一年ほど前のことだった。

 父ウインドスが更迭されてオードストロフ侯爵家は、国政の中枢から弾き出される形になった。

 そもそも、オードストロフ侯爵家に代わる家はいくらでもあることから、失敗を繰り返した家が国政の中枢から遠い閑職に就いた場合、復権はかなり難しい。

 その凋落にも似た状況のオードストロフ侯爵家を継いだカールが、簡単に中枢へ戻れるわけもなく、かなり憤っていたはずだ。

 人望のあった父ウインドスであれば復権も望めたかもしれないが、家柄に胡坐をかくだけのカールではそれも望めない。

 そういった事情から、業を煮やしたカールが皇帝の兄であるケルツを擁立し、謀叛を起こしたとデラーズは考えた。


「他に同調した者はいるのか?」

「いえ、今現在、そのような情報は得ておりません」

「ゲルバルド」

「ここに」

 ゲルバルド・フォン・アストリアはデラーズの側近中の側近であり、現在は帝国軍の元帥として軍を掌握している。

 ゲレイロが語っている間に、ゲルバルドがやってきて後ろに控えていたのだが、音も立てずに控えていたため、ゲレイロは自分の後ろにゲルバルドがいるとは思ってもおらず、思わず肩を震わせるが声を出すのはなんとか堪えた。


「誰を向かわせる」

「さればでございます。メンフィス将軍を向かわせるのがよろしいかと存じます」

「メンフィスか。ならば、第三軍団にケルツとカールの討伐を命じる。速やかに出陣させよ」

「承知しました」

 マルドレイク・フォン・メンフィスは中央軍第三軍団を預かる将帥であり、階級は大将だ。その用兵にはデラーズも一目置いている老将軍である。


 ゲルバルドは直ちにメンフィス将軍に討伐命令を発令し、その命令を受けたメンフィス将軍は二日後に、中央軍第三軍団を率いて帝都モニメスを発った。

 だが、その十日後にメンフィス将軍は、なんとケルツ側に寝返ってしまったのである。

 これによってテルメール帝国は、泥沼の内戦に突入していくことになる。


 アレクたちソウテイ王国の者たちは、まだこのことを知らない。

 これが、アレクやその家族、そしてソウテイ王国にどのような影響を与えるのか、誰も見通せていない……マリア以外は。



 --- キャラ ---

 デラーズ・フォン・テルメール(テルメール帝国第六代皇帝)

 ゲルバルド・フォン・アストリア(帝国軍元帥)

 ゲレイロ・フォン・モニス(帝国筆頭大臣)

 マルドレイク・フォン・メンフィス(中央軍第三軍団司令官、大将)


 

文化の日ですね。

ということで、ノベルで文化を!


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― 新着の感想 ―
[一言] 黒幕はマリアか。。。笑
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