4話
――何が、起こった?
分からない。ただ、ただ、走る。肩が熱い。酸素が足りない。
荒い呼吸を繰り返しても、肺の一番奥までは届かない。目が眩む。世界が色あせていく。
「はっ……はっ……はっ」
目に入った路地裏に、倒れ込むように身を潜める。
どれだけ息を吸いこんでも、楽にならない。頭の中ぐちゃぐちゃで、何も考えられなかった。
落ち着け、私。まず、何をしなければならない?
左肩が、ジンジンと鼓動を打つように熱を訴える。
そうだ、肩を怪我していたんだ。ええと、どうしてだっけ?
いや、そんなことは後だ。まずは治療をしなければ。
と言っても、こんな状況では応急処置程度のことしかできない。それでも、ないよりはマシか。
持ってきたリュックサックを漁る。たしか、消毒薬があったはずだ。
それと問題は出血だが……。これはもう、どうしようもない。せいぜい、布で縛って出血量を抑えることぐらいだ。
自分の腕を縛るのはなかなか難しかったが、口を使ってなんとか縛り上げていく。
白い布に、じわじわと血が広がっていく。ぼんやりとそれを眺めているうちに、忘れていた痛みがズキズキと全身を蝕んでいった。
座っているのも辛くなり、汚れるのも気にせず地面に横になる。
脂汗を浮かべながら、脚を折りたたみ、できるだけ小さくなるように丸まった。こうすると、気休め程度だが痛みが和らぐような気がする。
こんな処置で、本当に助かるのだろうか。
今まで経験したことのない痛みが、私を不安にさせる。このまま、死んでしまうんじゃないだろうか。
目を閉じて、こんなに苦しいのなら死んだ方がいいんじゃないかと考える。
痛いのも、苦しいのも、怖い思いをすることも、もう嫌だ。いっそのこと――……。
「死ぬ勇気もないのにね……」
死んでしまった街で、聞こえてくるのは私の息遣いだけだった。




