3話
どうして、私は生き残ってしまったんだろう。
家族も、友だちも、みんな…みんな死んでしまった。
目を閉じると、あの時のことが鮮明に思い出される。
――生きろ。ゾンビに喰い散らかされながら、父は最期にそう言った。
私は、父の言葉を今でも恨んでいる。
なぜ、あんなことを言ったのか。なぜ、私も一緒に死なせてくれなかったのか。
たった一言で、私は死ぬことすら許されなくされた。
こんな世界で生きている意味もないが、父の遺言を果たすため――生きるために、どんなことでもしてきた。
そこら中に溢れているゾンビに対抗するため、武器を集め、銃の使い方を覚えた。
廃家に入り、食べられそうなものは何でも食べた。
ついこの間まで極々普通の女子高生だったというのに。あまりにも非現実すぎる光景に笑えてくる。
常に周囲に神経を集中させながら、慎重に進んで行く。
ここ最近ろくに寝ていないせいだろうか。霞む目で残りの弾数を確認する。
いつ弾が手に入るか分からない状況だ。節約することに越したことはない。
「アアアアアア!!」
突然、何かの叫び声が辺りに響き渡る。いや、咆哮と言った方が正しいか?
物陰に隠れようと思った時にはもう遅く、目の前には一体のゾンビ。
口には誰か襲われたのだろうか、青白い腕が咥えられていた。
こみ上げてくる吐き気と戦いながら、必死に照準をゾンビへと向ける。
ゾンビがゆっくりとこちらを捉える。やるしかないようだ。
引き金に力を込めた、まさにその時。
横から飛び出してきたヒトが、ゾンビを押し倒した。
いや、ヒトではない。こちらも同じゾンビだ。
何が起こっている?ゾンビが同士討ちするなど、今まで見たことがない。
バラバラに解体されていくゾンビを見ながら、私は立ち尽くすしかなかった。
ふと、足元に何かが転がっていることに気づく。さっきゾンビが咥えていた腕だ。
あとで埋めてやろう。そう思って私はその腕を拾い上げた。
やがて完全に息絶えたことを確認すると、もう一人のゾンビは立ち上がりこちらを見据えた。今のところ、私を襲うような気配もない。
服装を見るに、どうやらそのゾンビは少女のようだ。
もしかしたら、味方になってくれるかもしれない。
そんな淡い期待を寄せながら、少女に話しかける。
「助けてくれてありがとう。私はさえか。君は?」
だがそんな期待など、あっさりと崩れ去る。
肩に、焼け付くような痛み。私は、少女のゾンビに噛みつかれていた。




