2話
自分の足元さえもよく見えない、暗闇の中。
少女は一人、歩き続けていた。死んでしまった脳みそは、疲れを知らない。
身体はとっくに限界を超えているが、それでもなお歩を進める。
あれから一体何日が経ったのだろう。
三日か。それとも十日か。
辺りから立ち込める黒煙はやがて厚い雲となり、昼でも夜のように暗いままだった。
恐らく、世界中どこもこんな感じなのだろう。
やがて、少女の足元に瓦礫が目立つようになってきた。
どうやら、いつの間にか廃墟へと迷い込んでしまったらしい。崩壊が進んでいて、建物と呼ぶべきかも怪しい。
瓦礫の山に混じって、黒板や机などが散乱している。
かつてはここも、学校だったのだろう。今はもう、その面影を残してはいないが。
二階は、崩れていて行くことは出来ない。
少女は何かに引き寄せられるかのように、一直線に歩いて行く。一歩進むごとに、ギャリギャリと耳障りな音が鳴る。ガラスも割れてしまっているようだ。
靴を履いていたのは、少女にとって幸いだった。
これが裸足であろうものなら、ガラスは一切の容赦なく肉を切り裂き、文字通り骨身を削る結果になっていたことだろう。
突然、目の前が開けた。ここは、体育館のようだ。
少女はゆっくりと、辺りを見回す。
天井は崩れ落ち、床はボロボロ。だが、少女の目に映っているものは、違った。
湧き上がる歓声。大勢のギャラリーの中から、ただ一人だけを見ていた。
受け取ったボールを、ゴールへと運ぶ。それを目で追う。
高く、高く。
投げられたボールは吸い込まれるように、ゴールへと――。
ゴドン、と。嫌な音。少女に、物凄い衝撃が走った。
側には、別の生物が一体。いや、これもゾンビだ。
フーフーと荒い息を繰り返している。
少女は痛みを感じることができない。それは果たして、吉と出るか凶と出るのか。
少女は、先ほどまで持っていた誰かの腕がないことに気づいた。
さっき攻撃を受けた時に、飛ばされてしまったのだろう。
少女は真っ先に腕を拾いに行った。まるで敵のことが見えていないようだ。
あの腕がないと、少女は冷静でいられなくなる。理由は分からない。昔のことは、全て忘れてしまった。
「アアアアアア!!」
ゾンビは一際大きく雄叫びを上げると、少女に向かって走り出す。
ぐしゃりと、何かが潰れる音がした。




