第13話 護衛任務3
次の日。
護衛任務三日目は、爽やかな気分で起きることができた。それは城という優れた建物の優れた一室を貰ったからでもあるが。
護衛任務で女王の側近を任された俺は、アデリーナ女王と風呂、食事などを一緒にしなくてはいけず、アデリーナ女王の気前さもあり、同じ内容となった。
この姿になって何か月経ったか忘れたけども、さすがに女性の裸には慣れてしまい、風呂を一緒にしたぐらいで興奮するような真似はしない。
でも心の奥底で眼福、眼福とは思ったり、思わなかったり。
だってカピトリーナさん、すごく綺麗なんだもの。
そして訪れた三日目の護衛任務も、初日同様にボードゲームをしたりして過ごす時間になる。
「ありえない。そんなバカな」
別のボードゲームがテーブルの上に広がる。
一言で言えば手札を減らすゲーム。特定の組み合わせでカードを手札から出すか山札からカードを引く。ラウンドが終わる時に持っている手札の数だけダメージを負う、そんな内容だった。
山札のカードにはそれぞれ効果があり、ダメージを受ける代わりに使用することも可能。もちろん回復する手段もある。
「まけた~!」
アデリーナ女王の手札が辺り一面に広がる。
またしてもカピトリーナさんの圧勝だった。
「どうして手札がゼロになるの?」
「そういう風に動いているからよ」
「意味が分からない」
カピトリーナさんの頭の良さが怖い。
いや、それともこういったことに慣れているのだろうか。
すごい人だ。
ふと疑問になったことを聞いてみる。
「カピトリーナさん」
「何?」
「カピトリーナさんはずっとこうやってアデリーナ女王様とボードゲームをして過ごしているの?」
「だから私のことはリーナで良いって」
「リーナは少し黙っていて」
カピトリーナさんの言葉にアデリーナ女王は頬を膨らませる。
「そうね。基本こうやって過ごしているわね」
「他に何かしないの?」
「何かするためにはリーナと別れなくてはいけないでしょう? 私の存在意義は常に王族のすぐそばにいることなのに。もちろん王族のすぐそばにいながら、仕事をする騎士隊長もいるわよ? ハイデンとか、シモンとか。でも私はする必要がないから」
「必要がない?」
「ここにはアルカディーさんがいるからね」
確かにそうか。
「なら、質問を変えても良い?」
「どうぞ」
「アデリーナ女王様は何か仕事をしないの?」
ずっと遊んで暮らす毎日。
素晴らしいし、良いと思う。でもだからこそ思う。何もしなくて良いのか、と。
それは自分だけでなく、アデリーナ女王に対しても感じたこと。
「何それ。すごく失礼だと思う」
「リーナは役に立たないから。式典に出るぐらいしか仕事がないのよ」
「役に立たないとか言うな!」
「事実でしょう?」
「そうだけどさぁ」
その事実をアデリーナ女王が認める。
それで良いのかアデリーナ女王様。
昼過ぎまで続いたボードゲームはアデリーナ女王の言葉で終わりを迎えた。
その理由だが、アデリーナ女王は毎日昼寝を取るかららしい。
どうしてかは分からないけども、取らないといけないとカピトリーナさんは言った。
そして私がいれば大丈夫だからと初めて俺は休憩時間を貰った。
この休憩時間を除けば夜ぐらいか。睡眠時間の間はずっとカピトリーナさんが護衛を続けており、俺はいらないらしい。
暇になった俺は城の中を歩くことにする。
他の男性騎士たちを見ると。
何とも今の境遇が楽なんだと思い知らされる。
無言で立ち続ける騎士の人たち。そして一般兵、もとい雑兵の人たち。
ふと、アダン君の姿が見える。
アダン君はこちらに気づいたけども、すぐに目を逸らす。
近づかない方がよさそうだと思い、俺は一人になれる場所を探して城の中を再び歩く。
城の中庭に出た俺は、中庭に人がいないことに気づく。こんなところにいてさぼられているように見られるかもしれないし、何より俺が使って良いのか分からないけども。俺は中庭の茂みに隠れていたベンチに腰掛けた。
「やっぱり一人の方が気が楽だ」
一人でいれば、自分を偽る必要がない。
それだけで気がすごく楽になる。
空を見て、ただぼんやりと今後の人生を考えて。
今日の晩御飯は美味しいのだろうか、なんて思って。
その油断から、俺は気づくことができなかった
「それはどうしてでしょうか」
ふと聞いたことがある声に俺はギョッと体を震わせる。
俺の隣に座るその女性は俺に対して微笑みかけてきて。
「お久しぶりです」
その女性に見覚えがあった俺は思わず喜んでしまう。
「ララさん!」
ララさんの姿がそこにはあった。
「やっとでこの街に着くことができました」
「どうしてここに?」
「ちょっと城に用事があったものですから」
城に?
ふとララさんの言葉に疑問を感じて、聞き返そうとする前に。ララさんが空を見上げながら聞いてきた。
「リヴァさん。先ほどの言葉の意味は何ですか?」
「先ほどの言葉?」
「私はしっかりと聞きました。一人の方が気が楽だ、と」
「ああ。えっと、友人といるのも楽しいですけども、やっぱり一人の時間も大切じゃないですか? そんな意味で言った言葉です」
咄嗟に出た良い訳にララさんが首を横に振り。
「本当にそうでしょうか」
そうはっきりと言った。
ふと思ってしまう。
ララさんが怖い、と。
「私にはそうは聞こえませんでした」
「どういうこと、ですか?」
「あなたは本来一人でいるべき存在だったからではないでしょうか」
一人でいるべき存在?
「あなたは人を騙し、人を殺し。そうやって生きてきたはずです」
「何を言って」
「何を言っているのか分かりませんか?」
ララさんは立ち上がり、俺の前に来ると、スカートをたくし上げて。
「そうだ。リヴァさん。お願いがあるのですけども」
そしてお辞儀をする。
「私と殺し合ってくれませんか?」




