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番外編3 アリス

 私がこの街に戻るのはいつぶりだろう。

 偶然にも私、ホン君、ロン君の三人はヨハンさんの護衛任務が任されることになった。

 騎士になることができた私が騎士になれない友人たちに会いに行くのは、相手を悲しませるのではないかと思った。

 だからと会いに行かないのはそれはそれで、私がこの街にいるのに会いに来ないという事実が相手を悲しませるとも思った。

 騎士試験に受かった私と落ちた友人。

 友人、リナちゃんは私に対して憎しみや嫉妬といった感情を持っていないと信じたい。

 だから私は勇気を持って女子寮の扉を開けた。

「こんにちは。お久しぶりです。アレットさん」

「ああ、久しぶり。よく来たな。アリス。ヨハン殿から話は聞いている」

 私を最初に歓迎してくれたのはアレットさんだった。

 綺麗な金髪をまとめた、見た目はこの上なく美しく騎士らしい彼女に、初めの頃は恋愛感情を抱いていた。

 でもあの子が来た時にその感情は消えてなくなった。

「そしてリヴァのこともな」

 アレットさんがリヴァちゃんのことを話に持ち出した。

 今の私を悩ませる、存在。

「…………はい」

 小さく頷く。

「悲しいか?」

「…………少しだけ」

 あの子、リヴァちゃんは私の手が届かない所へ行くことになった。

 会いに行けば、きっと笑顔で出迎えてくれるだろう。でも私はあの子の隣に立つことは決してできない。

 それは、騎士隊長になるリヴァちゃんと力の差があるからではない。あの日。彼女が最強の騎士を倒す少し前から気づき始めた事実。

 リヴァちゃんは誰に対しても壁を作っている。

 一見すれば強くて、凛々しくて、誰とも親しくなろと努力している子。喜怒哀楽が激しくてよく笑い、よく悲しい表情を見せる子。

 でもそんなリヴァちゃんのすぐ隣にいたから分かる。

 リヴァちゃんの本当の心はまだ誰にも見せられていないことに。

「リナちゃんはいますか?」

 私はこれ以上リヴァちゃんの話がしたくなくて、私はリナちゃんのことを聞いた。

「ああ、いる。今は部屋の外に」

「入っても大丈夫ですか?」

「もちろん」

 あの日。

 リヴァちゃんは私に言った。

 アリスは私のこと何も知らないでしょう、と。

 私はリヴァちゃんに言った。

 何時か絶対、リヴァちゃんの素を出してあげる、なんて。

 でもこれは無理なのだ。

 あのリヴァちゃんはたまに素を出すときがある。でもそれまで。決して自分のことは話さない。秘密の作られた人格でいようとする。

 それはリヴァちゃんの固い決意を感じられるほどに。



「久しぶり、リナちゃん」

「アリスちゃん!」

 リナちゃんが住む部屋の扉をノックするとほどなくして出てきたリナちゃんは、私を見るや驚いた表情をした。

 アレットさんは秘密にしたのか、私が来ることを知らせていなかったみたいだ。

「どうしたの?」

「護衛任務でこの街に戻ってくることになったから」

「そうなんだ」

 リナちゃんに変わりはない。

 何時も通り可愛い子だ。

「入って」

「ありがとう」

 リナちゃんに招かれて、私はリナちゃんの部屋の中に入る。リナちゃんの部屋は私の部屋とは違い、何とも可愛くて女の子らしい部屋だ。

 ソファに座らされて、自分のために持ってきたのだろう紅茶が陶器の入れ物からティーカップへそそがれる。

「リヴァちゃんのこと、聞いた。すごいね、リヴァちゃん」

「うん。私の手が届かない所まで行ったよ」

「護衛任務は、リヴァちゃんと一緒、じゃないの?」

「うん。リヴァちゃんはアダン君と二人で違う場所で任務をやってる」

「そう、なんだ」

 少しだけ、気まずい空気が流れる。

「そう。アラン君。最近調子がいい、のかな。別人、みたい」

「アラン君が?」

 リナちゃんが小さく頷く。

「もう騎士見習いの中で、アラン君に勝てる子、いないぐらいに」

「へえ、すごい。どうして?」

 その言葉に思わずそんな言葉が出てしまう。

 アラン君はまだ男子の中でも許せる存在だ。

「分からない。でもあの日。リヴァちゃんが、おまじないをしてくれた日、から。変わったみたい。私も少しだけ、変わった」

 あの日、私がリヴァちゃんから衝撃の事実を聞いた時。その少し前の出来事のことだ。

「リナちゃんも? でも私、何も変わってないよ?」

 あの日、私も同じおまじないとしてもらったはずだ。

「そうなの?」

 リナちゃんはそう言って。

「でも、多分、あのおまじないに、何か込められているのだと思う」

「そうだったのかな」

「リヴァちゃん、いろんな魔法、知っているみたいだから。多分、魔法の一つ、だと思う」

「アラン君は、そのある意味でリヴァちゃんから貰った力で、無理やり強くされた? のかは分からないけども、そんなことで強くなれて、喜んでいるの?」

「多分だけども、力を強くする、魔法じゃないのだと思う。アラン君、リヴァさんの隣に立ちたいんだ、って毎日のように、自主訓練してるから。もしかしたら、そういったおまじないなのかも」

「ああ」

 確かにそうなのかもしれない。

 リヴァちゃんがそんな不正の力を与えるような子には見えない。

「じゃあ、次はアラン君とリナちゃんが合格間違いないね」

「…………ん」

 リナちゃんが頷く。

 リナちゃんも少しだけ変わったと言った。

 前のリヴァちゃんならこんな自信に満ち溢れた表情はしなかった。

 でも、どうして。

 私は変わらないのだろう?

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