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第8話 討伐任務3

 ドラゴンの咆哮は辺りに火の海を生んだ。

 まるで逃がさないと言わんばかりに、その火は俺たちを囲う。

 逃げ道は作れるが、俺はドラゴンにしか目が行かない。逃げるという選択肢がなかった。

「お前たち実力を出せ! 虫とは比べものにならない強敵だ!」

 カイさんが叫び、先輩騎士たちは各々の武器を手にする。

 そのドラゴンが先輩騎士たちを倒すのに時間はかからなかった。まるで虫を蹴散らすかのように。

 強い。

 そこらのモンスターとやはり比べ物にならない。

 あらゆる攻撃を防ぐ鱗。

 力を象徴する爪。

 すべてを粉砕する牙。

 焼き尽くす火。

 思わず見惚れてしまう。

「いや、見惚れてる場合じゃないか」

 先輩騎士たちを蹴散らす時、ドラゴンは殺しはしなかった。だから分かる。こいつは危険ではないと。

 ドラゴンは気絶をしていようがいなかろうが、先輩騎士たちを火の海の外へ放り投げる。

 そして作られる俺とドラゴンの一対一の構図。

 ただ純粋に俺と戦いに来てくれたのだろうか?

 それとも何か別の意味で。

「考えても仕方ないか」

 俺は剣を構えた。

 瞬間放たれるドラゴンの火を高く飛び回避する。

 一回転しながら、剣で数度ドラゴンの頭を強打するが、目立った外傷はない。その攻撃の反動で後ろへ大きく飛ぶ。

 地面に着地すると俺はドラゴンの方を見る。

 傷はなくても効いている、なんてことはないみたいだ。

「硬いなぁ」

 普通に手こずりそうだ。

 いや、そうでないと困る。

 すぐに戦いが終わっては意味がない。

 だから決して本気を出さないようにしているのだけども。

 油断した表情だったのか。ドラゴンは俺目がけて尻尾を振り下ろした。それを剣で防ぐ。足が地面に少しだけ埋め込められる。

「ぐ!」

 ドラゴンの尻尾を押し返し、俺は地面から足を抜き出すと、そのままの勢いでドラゴンへと突っ込む。

 そして尻尾を全力で斬り放つ。

 剣は鱗の裂け目を通り、ドラゴンの皮膚を切り裂いた。真っ赤な血が飛び散る。ドラゴンの悲鳴のような咆哮。

 怒りを表すかのようにドラゴンは尻尾を振り回し、俺を攻撃する。

 それを寸前で回避して、二撃ドラゴンの体を斬った。

 ドラゴンの鱗は固い。

 でも斬れないわけではない。

「さてと」

 ドラゴンと距離を取り、俺はドラゴンの出方を伺う。

 俺ばかり攻撃しては不公平だ。

 さも戦っているように見せないといけない。

 いや、誰かに見せているわけじゃないけども。

 この考えを感じ取ってくれたのか。ドラゴンが動く。ドラゴンは火を放つそぶりを見せたと思ったら、その火をそのまま飲み込んだ。そして体が薄く光ったかと思うと、それは激しい閃光へと変わる。

 一瞬何が起きたのか分からず、身構える。

 そう、普通考えるべきだった。

 運よくドラゴンと出会うはずがないのだと。

 その閃光が終わった時、ドラゴンの姿はなく、一人の全身を鎧で隠した騎士が一人立っていた。



 それを。

 俺は人ではないと直感的に感じ取る。

 人どころか生物でもないみたいだ。ドラゴンが騎士に変身したわけではなく、騎士がドラゴンに変身していたと言うべきか。

 とにかく。つまるところ、誰かの指金になる。

「まあ、考えるのは後にしよう。今は戦う方が先決だ」

 その騎士の武器は槍であった。

 一本だけではない。七本、その姿が背中に見える。

 槍使いが相手ならばこちらも槍を使わなくてはいけない。

 そう思って俺も槍を精製し、構える。

 騎士は槍を構えた。剣道でいう上段の構えのように高く。

「へぇ」

 その高くから振り下ろされる槍。その速度、力は今まで戦ってきた人間の比ではない。少なくともシモンさん以上の強さを感じ取った。

 その槍で受けないで、横に流した。

 そのまま騎士は槍を横に薙ぎ払う。それを今度は槍の持ちてで防ぎ、そのまま遠くへ弾き飛ばされる。

 その隙を騎士は見逃さない。

 振り下ろされる槍。

 それを再びこちらの槍で防ごうとしたとき。

 俺の槍が真っ二つに別れた。

「うそっ」

 騎士の槍は俺の体、肩を縦に切り裂いた。

 勝機を見たのだろう。騎士は追撃を行う。槍による刺突の連打。それを俺はなすすべなく受け入れる。

 十数回ほど攻撃を受けた後、騎士は後ろへ飛び距離を取った。

 短くなった槍を遠くへ放り投げて、俺は肩の傷に手を当てる。

「初めてここまで怪我した気がする」

 流石に油断しすぎた。

 でもだからどうしたともいえる。

 この程度、かすり傷みたいなものだ。

「痛いのは嫌だし、何よりそろそろしたら日が沈む。先輩騎士たちを連れて帰れないとなると、すぐにでも終わらせるべきか」

 騎士は武器を持たない俺目がけて再び槍による突きを行おうとした。

 その槍を寸前でつかみ取る。

「何者かは知らないけども、調子に乗りすぎだ」

 その槍を純粋な握力で握り怖し。

 俺は騎士の頭目がけて手を向けた。

 使うことをためらい続けていた消滅魔法。

 騎士の上半身がなくなる形で戦いは幕を閉じた。



--------



 アリサはその光景に考え込む。

「あれが、シモンを倒した子」

 娘の親友。まだ騎士になったばかりながら最強の騎士を倒し、騎士隊長の座が確約された強者。

 少し前までアリサにとってリヴァとはそんな存在であった。

 リヴァと自身の召喚獣の戦いを見るまでは。

「危険ね」

 アリサはリヴァに一人、刺客を向けた。

 それは数多の魔法を学び、覚えてきた大賢者が持つ究極魔法の一つにして召喚魔法の一種。

 ドラゴンに変身することができる生物ではない騎士。

 それをリヴァは余裕の表情を残して、倒した。

「ああ見えて、私が持つ魔法の中で三番目に強い魔法だったのだけれども。これであそこまで余裕を見せるなら。本気の彼女を倒すには、大賢者を全員集めるべきかしら。あと騎士隊長クラスも何人か欲しいわね。そうすれば死者なく倒せるでしょう。今の彼女が仮にも実力の3割を出しているならの話だけども」

 アリサは知っている。

 リヴァが国宝の一つを持っていることを。

 そこから考えられる点は二つしかない。

「隣国のスパイ。と普通なら考える。でも、おそらく彼女は違うでしょうね」

 アリサは知っている。

 変身魔法を使うモンスターの存在を。

「変身魔法を使ったモンスターなら。可能性としては、ここ十数年姿を確認されていないベヒモス。テーバイのドラゴン。デルピュネー。リヴァイアサン。どれにしても強敵ね」

 そして仮にもこの中ならば。

 何故人間の姿になり、国宝を奪ったのか。

 それだけがアリサにとって不可解だった。

「リヴァイアサンが自身の名前をもじってリヴァと名乗るとは考えにくい。可能性はなきにあらずだけども」

 アリサは小さく呟く。

「一体あなたは何者なのかしら?」

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