第9話 小休憩のような飲み会
流石に魔法を使い過ぎた。
究極魔法を1回。
消滅魔法を1回。
変身魔法を約3か月維持する魔力。
その他魔法を幾つか。
究極魔法、消滅魔法の消費魔力は中々だが、何より、変身魔法に使う魔力が壮大だ。1月の維持で究極魔法十回分ほど。それがさらに3倍になる。
そして以外と侮れないのがその他魔法。便利だからと魔法を日常的に使いすぎている。塵も積もれば山となるのだから。
まだ残り魔力は7割はあるけども、流石にそろそろ抑え始めないと1年も持たないかもしれない。
魔力が尽きそうになったら、海に行って。当分の間身を潜めて。魔力回復をしないといけない。
うーむ。
まあ、当分先のことだから、その当分先にでも考えるか。
「いやぁ、良かった。本当に良かった。リヴァがいて助かったよ」
先輩騎士たちを連れて町に帰った俺に感謝したいと開かれた飲み会。
酒と多種多様な料理が酒場に並ぶ。中央の椅子にこじんまりと座りながら、俺は飲み会に参加せざるを得なかった。
正直に言えば飲み会は嫌いだ。参加する分には良いのだが、主役として扱われるのは嫌いだ。
でも酒を飲みながら料理を食べるのは好きだ。
今までは騎士見習いという立場で酒を飲むことが出来なかった。法律上は許されているみたいだったけども、ルドルフさんはダメだと言い放った。酒で色々と問題が起きるのだから当たり前か。
アダン君は初めてらしい酒に興味津々そうに、一口。強がっているが、何が美味しいのか理解していない表情と見る。
他の先輩騎士方は、好きなのだろうか。ガブガブ飲んでいる。
俺も酒を一口飲んだ。
うん、日本の酒とは全然違うけども、まあ美味しい。
「リヴァは酒が飲めるのか?」
「ええ、まあ。国にいた頃は毎日のように飲んでいましたから」
「そうかそうか」
酒をぐびぐび飲む。
こういう場は、遠慮せずに飲まないと、後のテンションに着いていけない可能性が出て来る。
「うん? 国にいた頃?」
カイさんが聞いてきた。
ああ。大丈夫だろうか、言っても。
「私が生まれ育った国です」
「噂では、リヴァはどこの国出身かをずっと隠しているとかどうとか聞いたけどもそういうわけじゃないのか?」
「いえ、あー」
そう言えばまだ誰にも言っていなかった。
酒を一口。
「言っていませんね」
「詳しく聞くことはできるのか?」
酒を二口。
「いえ、まあ。ダメです。はい」
「そうか。それよりも酔っているか?」
「まだ十杯はいけます」
酒を三口。
たしかに少し酔ってきている気がする。変なことを言わないように気を付けないといけないな。
「お。カイはリヴァちゃんを狙っているのか? 無理だぞ。お前みたいな男じゃ。リヴァちゃんを心動かすなんて」
「そんなつもりはない!」
先輩騎士の一人の言葉にカイさんが強く反論する。
「俺さ。実はリヴァちゃんのこと、前から気になっていたんだよね。リヴァちゃんは彼氏いるの?」
他の先輩騎士が一人聞いてきた。
「いませんし、いたこともありませんし、あなたにも興味ありません」
「それは残念だなぁ」
「…………ふぅ」
お酒美味しいなぁ。
「アダンはリヴァのこと、どう思っているんだ?」
「どうもなにも、普通です」
「またまた、本当は好きなんだろ。ここ数日ずっと一緒なんだろ? それでこんな綺麗な子に心奪われない男なんかいないからな」
「違います」
隣でアダン君が先輩騎士に絡まれている。
「噂では、リヴァとシモンの戦いを見たほとんどの人はリヴァに対して恐怖を抱いたとかどうとか聞いたけども。もしかして、それが関係するのかな?」
「それは特に関係ありませんし、その噂は止めてください。私の夢と希望が壊れます」
「夢と希望?」
「友達百人作るのが私の夢です。でもあの戦いの一件で同期の男子たちから嫌われていてすごく困っているのですから」
「ははは。それはすごいな。でも難しいんじゃないか?」
「…………?」
「性別が違うから、友達のままいるのは難しいと思うけども」
「性別が違うと?」
「ほら、男女の友情は生まれないだろ」
男女の友情か。
「確かにそうですね。でもそこは些細です。そこの料理、とって貰えますか?」
名前の知らない先輩騎士から料理皿を受け取り。一口。
料理も美味しいなぁ。
「リヴァちゃん。本当に俺に興味がないんだね」
「それほどでも」
お酒はもっとおいしいなぁ。
「お前はいい加減にリヴァに絡むのを止めろ!」
隣でカイさんが大声を叫ぶ。
「いやでもさぁ、カイとだけ仲が良いのはひどくね?」
「ああ、酷い。酷い」
「俺たちにもリヴァちゃん欲しいなぁ」
「俺たち仲間だろ?」
「こういう時だけ仲間面するんじゃねえよ!」
カイさんはどうも酒が入るとだいぶ口調が変わるみたいだ。
あの優しい口調のカイさんはどこへ。
「ちなみに、リヴァちゃんはここにいる男の中で誰が一番好き?」
さっきから絡んでくる先輩騎士からの問いかけに俺ははてと辺りを見渡す。
「いえ、男に興味ないので。反吐が出ます。ほら、先輩も男を好きになれないでしょう? つまり、そういうことです」
あ、お酒空になった。
「つまり? 君は男とでもいうの?」
「正確には男であり、女でもあるとも言えます」
お酒を新しく入れないと。
「どういうこと?」
先輩騎士の真面目なトーンに俺はふと何を口走ったのかを考え込む。
えっと。
ああ!?
「冗談です」
ものすごいことを口走っていた。
俺が墓場まで持っていこうと思っていた秘密を何あっさりとばらそうとしていたんだ。
「ものすごく真面目な感じで話していたのだけれども。冗談じゃないだろう?」
そう指摘される。その辺りは鋭いのだから
どう説明をするべき。
素直に話すべき?
いや、ここはお茶目な感じで行くべきだ。
「だって、私。女の子が好きですから。ほら、性別なんてあってないみたいじゃないですか? 女を好きなのは男の役目なのに、女が女を好きなんですから」
「いや、うん。そうだね。まさか君がそっちのタイプだとは思わなかった」
その言葉で。
先輩騎士全員から少し引かれた。




