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第7話 討伐任務2

 到着した街は、いや町と呼ぶべきか。何とも寂れた町だった。

 レンガ造りよりも木造建築が多い。家の数からして住む人の数は一万人は絶対に行かないだろう。俺の実家とその近辺を彷彿とさせる。

 そんな町が抱えていた問題点は、三つ。

 一つ目に畑を食い荒らす何かの被害。

 二つ目に森林に異常繁殖した昆虫類のモンスター。

 三つ目に井戸の水に住み着く何かが水を汚染する被害。

「一つ目は無事解決した。三つ目は順調に行けば三日後には解決するだろう。しかし、二つ目には苦戦していてね」

「はぁ」

 討伐任務というよりも、何でも屋みたいな仕事だった。

 モンスターが引き起こしているかもしれない事件の解決も討伐任務に含むのだから仕方ないのだけれども。

「先に三つ目の方を終わらせて、騎士を総動員して森林のモンスターを倒すのも手だけど。相手が中々強く、それでいて数が多い」

「ただの昆虫類モンスターではないのですか?」

 アラン君が聞いた。

「ただの、じゃないから苦戦している」

 カイさんははぁと大きくため息をついて、そのことについて説明してくれる。

「モンスターの正式名称はアトチェーヤニエ。略してアトと呼んでいる。アトに限らず昆虫類モンスターは交配を重ねるごとに進化をし、それが他の種に比べて異常に速い。でもアトはその中でも特に速い。それも厄介な進化をした」

「厄介な進化?」

「昆虫類モンスターの主食は小動物が多いが、アトは相手を選ばない。小動物ではなく大型の他の動物、モンスターに目を向けたら、そいつらも捕食対象にする。数で攻めて勝つ。そして繁殖でその戦いで減らした仲間を増やしてを繰り返す。でも少なくとも最初の頃は死ぬ数の方が多かったはずだ」

「…………」

 頭が追い付かなくなってきたぞ。

「アトはその捕食の中、学んでいった。今の姿では数を減らすことに。アトは大型にも勝てるように進化をしたのさ。より丈夫に。頑丈に。巨大に」

「ちなみに、ですが。アトはどんな姿をしているのですか?」

「細長い胴体に十数本の脚があって。頭には顎、尻尾には針だね」

 細長い胴体に数十本の足。それに顎と針だね。ムカデかな?

 いや、ちょっと待って。ムカデなのか。俺にとってこの世の中で最も嫌いな虫であるムカデ?

「…………」

「女性にはきついだろうけども、一緒に」

「今回の任務は井戸の方にさせてください!」

 ムカデは殺したくない。

「いやでも。シモンさんにも勝った君がいたらものすごく心強いのだけれども」

「嫌です!」

 お願いします。土下座でも何でもしますから、ムカデ退治だけは。

「これは仕事だぞ。リヴァ」

 アダン君に怒られる。

 いや、そうだけどさ。

「ちなみにですが、そのアトはどれぐらい強いのですか?」

「一対一でも負けないだろう」

「騎士の数は何人ですか?」

「僕を入れて十六人だね」

 少な!

「アトの想定数は?」

「少なくとも数百体はいると思う」

 多!

 どうするべき。

 その数を十六人の騎士で倒すのは確かに心折れるし、何より危険だ。その数のモンスターが町を攻めてきたらこの町では勝てないだろう。

 警備の人員を少しこちらに呼ぶとか、融通は利かないのだろうか。

 明かに人の数に差がありすぎる。

 聞いた話のモンスターなら無双できると思うけども。

 そうか。魔法を使えば。

「分かりました。アト討伐頑張ります」

 一日耐えれば良いと考えれば。

「そうか。ありがとう。じゃあ、今休憩している仲間を呼んでくるからすぐにでも出発しよう」



「何これ」

 ほどなくして始まった討伐任務。

 十六人内四人は井戸の方を担当しており、実際の合計人数は俺とアダン君含めて十四人なのだが。森に入った瞬間、圧倒的な数の暴力が襲ってきた。

 アトは一匹見かけたら百匹はいるのだろうか。

 そんな数の暴力をするのは、恐らくアト達が学んでいるからだろう。

 人間が自分たちを討伐していることを。

 だからアト側も戦うことを決めた。

「次、南西からアトが四体来ます!」

「東北からアト五体!」

 少し森の奥に行き、アト一匹を見た時から。休む暇なく、アトが襲ってくる。

 仲間の騎士は一人一人、そこまで弱くはない。討伐任務を行う騎士なのだから、実践で相当鍛えられているのだろう。でもそれほど強いわけでもない。

 アト一匹を倒すのにかかる時間はおよそ三分。その間にアトはこちらの騎士の数以上が襲ってくる。

 その溢れた分を俺が倒す。

 魔法を使い、アトを一層する。

「リヴァがいるとやっぱり心強いなぁ」

 カイさんがそんなことを呟いた。

 討伐任務、それもこういった終わり時があやふやな任務の場合、アトの全滅ではなくある程度の討伐で終わるらしい。。

 そしてまた増えたら討伐任務が再び行われるだけ。

 無限サイクルだ。

 絶滅させるのは難しいのだから仕方ない。

「次来るぞ!」

 襲ってくるアト。

 見た目はやはり気持ち悪いムカデのような姿だった。アトを殺した時に飛び散る液体がさらに気持ち悪さを倍増させる。

 だから決して剣では殺さない。遠距離攻撃で倒す。

 水の魔法を発動し、俺は辺りのアトの胴体を切断していく。何度も何度も切断すればやがてアトは活動を止める。

 この殺戮で辺り一面の木々はなぎ倒され、アトの死骸の山へと変わっていく。

 リヴァイアサンに恐れをなさず襲ってくるムカデの軍隊。

 やはり虫は所詮虫だ。

 どれだけ仲間が殺されても何も感じない。

 死を恐れない。

 そしてすぐには学べれない。

 どれだけ襲って来ようとも勝てない事実に。

 流石に疲れてきた。

 もっと巨大な魔法を使えたらすぐにでも終わらせることができる。森林破壊と同時にだけども。

 ただ、それは周りの仲間を巻き込む。

 一人でくればよかった。

 ふいに取り逃したアトが俺のすぐ目の前まで襲ってきた。

 それをアダン君が剣で受け止める。

「大丈夫か?」

「ありがとう」

 大丈夫も何も全然、問題なかったけども。

 アダン君がアトを無事倒す。

 その時噴き出た液体が俺のすぐ近くまで飛び散り。

 ふと、アトに対して怒りが沸いた。

「ねぇ、アダン君」

「何だ」

「目を瞑ってて」

「は?」

「良いから」

 俺は先輩騎士たちの方を向き。

「先輩方も目を瞑っていただけないですか? 光魔法を使います」

「分かった!」

 その言葉でカイさん初め、先輩騎士たちは次々に目を瞑ってくれる。

 それを確認すると俺は光の魔法を形だけ発動した。

 でも目的は違う。

「…………本当に、虫ごときが。調子にのって」

 誰にも聞こえないように小さく呟いて。

 光魔法と同時に放った怒り。

 それを感知したアトたちが一斉に逃げだしていく。

 リヴァイアサンが放つ怒りはどうも目を瞑ればいくらかは和らげるごとが出来るらしい。見なければ、認識しないに等しく効果が薄いらしい。

 一つ問題があったとすれば虫が恐怖を抱くかどうかだったが。

 なんとかなった。

「もう大丈夫です」

「何をして」

 目を開けた先輩騎士の一人が辺りから生きたアトが消えたことに驚く。

「光魔法を使いました」

「光魔法はアトに有効なのか? 驚いて逃げて行ったのか?」

 カイさんが聞いてくる。

 いや光魔法ではなく、俺の怒りの方に逃げて行ったと思うけども、面倒だから言わない。

「恐らく」

「凄いな。でも結局は数が減っていないぞ」

「いえ。恐らく、もうこの近辺に現れないと思います」

「…………?」

 アトたちは遥か遠くへと逃げて行ったはずだ。

「明日、一応確認はしますが、今日はもうアトと遭遇できないと思いますので帰りましょう」

「ああ、そうだな。よし、皆。撤収するぞ!」

 カイさんの言葉で全員が帰宅の準備を始める。

 無事、誰も大きな怪我をすることなく終わった。

 良かった。良かった。

 そう思っていた。

 その巨大なモンスターが現れるまでは。

「なんだ」

 誰かが言った。

 空を飛ぶモンスター。

 それは巨大な翼を広げ、俺たちの上空に滞空をし。ゆっくりと地面へと降りて来る。赤い目。赤いうろこ。長い尻尾。

 口から火を吐き、甲高い咆哮が辺りに響く。

 それを人はドラゴンと呼ぶ。

モンスター紹介4

アトチェーヤニエ

通称アト。大きなムカデのモンスター。

アト一体、騎士一人で十分倒せるが、これは昆虫類という数で攻めて来るモンスター一体に騎士一人を裂く事であり異常。それだけ相当な強敵の部類に入る。

ちなみに名前の意味はロシア語で絶望。

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