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第1話 騎士の幕開け

 日は7の15。

 騎士見習いが騎士になる前に一度長い休暇を挟む。それは14日、正確には授与式で二日つぶれるため12日なのだが。それだけの日数が正当な権利として貰うことができる。

 そしてこの日は、長い休みを終え、騎士見習いが騎士になる日。

 あの日から気づけば十日が過ぎた。

 闘技場で最強の騎士であるシモンさんと戦った記憶。

 思い出すだけでも腹立たしい。

「まあ予想通りの結果だったけども」

 俺は最強の騎士を倒したことにより、新人騎士の中、一人。

 騎士隊長の座が確定してしまった。

 それにより、俺の顔は国民に知れ渡り、道を歩けば多くの人が俺に好奇な目を向けるようになってしまった。

 そう、あの日最強の騎士を倒したがために、俺ののんびりとした生活に大きなピリオドが打たれたのだ。


 騎士あるいは騎士副隊長が一対一の場で、騎士隊長を倒してしまった時の規則はすでにある。

 平たく言えば、その倒した騎士が新たな騎士隊長へと変わるわけである。順位は純粋な強さで決まるわけではないので、倒した騎士隊長と同じ順位とは限らないが、ほぼほぼその順位になるらしい。

 しかし、俺はまだ騎士隊長ではない。

 どうしてか。

 それはまだ俺が騎士になって日が浅いからだ。

 本来騎士は初めに半年間の指導を受ける。

 どういう仕事をするのかや、マナーなどといったものまで。平たく言えば会社の新人研修みたいなものだ。

 それを受けていない騎士が騎士隊長と戦う可能性はまずなく、だからそんな騎士になったばかりの人間が騎士隊長を倒す可能性まで規則に取り入れていなかった。

 これについて大きく議論された。

 即戦力になりえる俺をすぐに隊長にするべきだという意見。

 まずは先代から受け継いだ育成指示通り、半年間は騎士として教育するべきだという意見。

 結果的に、騎士および兵をまとめる最高責任者であるヨシフ・ファテーエワさんはこんな結論を出した。

「半年の間、君には騎士として騎士の仕事を学んでもらう。そして半年後、君を第四位の座へ就任させたいと思う」

 そんなわけで俺は騎士見習いが騎士になった後の育成指示通り。一人の騎士隊長の下で仕事を学ぶことになった。

 もちろん、うまく行くわけがないのだけども。



 場所は王都から少し遠く離れた街。

 その中央の騎士訓練場。その広場に総勢19名の騎士と騎士隊長が集った。

「ええ。皆さん。騎士試験合格、おめでとうございます」

 第五位の騎士隊長、ミリーさん。御年82歳ながら現役の騎士隊長であり、全騎士の中で、最高齢の騎士でもある。最高責任者であるヨシフさんでも逆らえない相手の一人とかどうとか。

 見た目は完全によぼよぼのおじいちゃんなのだが、目にして分かる。相当な手練れだと。流石に騎士隊長の座に立つ人が弱いわけがない。

 ただ歳もあり、現場に立つことはほぼないらしく、毎年後世の育成を担当しているらしい。

 噂では心優しい人と聞いた。何をしても決して怒らないらしい。そのためか、あるいは純粋な人徳か非常に人気がある。誰もが口をそろえて彼は良い人だと言うのだから、相当なものだ。

 俺も年寄りになったらこんな扱いを受けたいものだ。

 リヴァイアサンが年寄り扱いされるのは何千年未来かは分からないし、人の姿が変わるのかも分からないけども。

 そう思うと、俺はずっと同じ土地にいることが出来ないのだろうか?

 魔法で誤魔化しは出来るけども、実際の見た目は十年、二十年程度では変化しない。ずっと十代のままいれば必ず皆は不思議がるから。

 その辺りの問題も考えないといけないな。

 話がそれた。

 騎士になったばかりの子たちはまずはじめに二つのグループに分けられ、それぞれ騎士隊長の下に配属される。

 俺はミリーさんの下に配属になったのだが、もちろんこのグループには知り合いがいる。

 アリス。ラリサ。ナタリー。ホン君。アダン君。ロン君。

 19名中、6人が知り合いとはこれ如何に。運命の悪戯ではなく、悪意を感じる。ヨシフさんの仕業だと断言できる。多分彼はご厚意のつもりだったのだろうが。

 知り合い以外、他の男子含めた18人全員が妙に俺の方を見ている気がする。

「…………しくじった」

 恥ずかしい気持ちがあった俺は、あの日からずっと知り合いと出会わないように気を付けていた。決闘当日で俺は一度アリスとおさらばしたのだ。

 それからはずっとヨシフさんの家であるファテーエワ邸にお邪魔させてもらった。

 もちろん、俺から言い出したわけではない。

 どちらかと言うとヨシフさんから押し付けられる形でヨシフさんのご厚意を直に受けて、俺はファテーエワ邸にお邪魔させてもらったのだ。

 そして驚いた。

 なんとディーナさんはヨシフさんの子らしい。

 言われて気づいたが、確かに姓が同じだった。

 ヨシフさんはどんな考えで俺を迎え入れたのかは分からない。純粋なご厚意なのか、あるいは娘と面識があるからか。はたまた今の内に俺に取り次ぐろうとしていたのか。それは分からないし考えたくもない。

 ただ純粋に、俺はヨシフさんのご厚意を受け入れることにした。

 非常に楽しい毎日だった。

 至れり尽くせりとはあの事だろう。

 沢山のメイドが俺のお世話をしてくれた。変なことは何もしていない。そもそも見た目的には同性なわけだから。

 もしも男の姿をしていたら襲っていたね。多分。恐らく。けだし。もしかしたら。

 まあ、そんなこんなで。

 今日久々のご対面で、アリスは何とも言えない表情をしている。

 アリスだけじゃない。他の子、全員だ。

「これからは立派な騎士として、お国に命を捧げなくてはいけません。不安な気持ちになると思います。恐怖も抱くでしょう。あるいは一人に対して嫉妬をするでしょう。そんな時は気兼ねなく私に相談してください」

 その一人とは俺のことだろうか。

「堅苦しい挨拶はこれで終わりにしましょう。今後ともよろしくおねがいしますね」

 ミリーさん、じゃなくてミリーおじいちゃんが頭を下げる。

 ぱちぱちと拍手が鳴る。

「ああ、そうでした。お一人さん、騎士隊長任命おめでとうございます」

 がっちりと俺のことを指して言った。

 ああ、さらに注目を集める。

 なんだこれ。なんだこれ。なんだこれ。何故こんなに注目を集めなくちゃいけない。いや当たり前なんだけども。

 どうして九人二列の中、真ん中後ろとかいう全員から見られる位置に立たされたんだ。

「さてと、今日はこれから、何をしましょう」

 ミリーおじいちゃんはふむと考え込む。

「とりあえず、これから仲間となるわけですから、しばらくの間休憩時間としましょう。その間に自己紹介等済ませて、一人ぐらいは友人を作ってくださいね。それでは」

「リヴァちゃん!」

 ミリーおじいちゃんが背を向けた瞬間、アリスが飛びついてきた。

キャラ紹介38

モブ ミリー

通称ミリーおじいちゃん。82歳のベテラン騎士隊長。最高齢の騎士。

実力はそれ相応のものがあるが、何よりその経験則からの先を見通す力がすごい。ただ腰を痛め始めており、60を過ぎてからはずっと後世の育成に務めている。

ちなみにクロエ、ルドルフといった騎士も彼の育成を受けている。

性格は非常におだやかで、心優しい。

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