第9話 実技試験4
「みんなは?」
松明の明かりが消える中、突然の天井の崩壊。
仮に松明の明かりが消えていなくても、天井の崩壊で少しは明かりが消えただろう。それでも通路側にいた俺の近くに少しは明かりがあったはず。
しかし、一切の明かりが見えない。
咄嗟に俺は火の魔法を使う。
光源として火の玉を操りながら辺りを見渡すが、誰もいない。
みんなは大丈夫だろうか。すぐそばにディーナさんがいたから大丈夫だとは思うが。天井が崩壊した洞窟から脱出できるのだろうか?
後ろを見ると、通路はある。
どうも広い空間部屋が二つに分断されたみたいだ。
「これも試験の一つなのだろうか? それなら、この岩の壁を壊して、合流するのが正解? それとも別の通路を探し、合流するのが正解?」
どうなのだろうか。
この広い空間に入って来た通路以外なかった。
なら壊すしか方法はないはずだけども、もしかしたら隠し通路などがあるのかもしれないし。可能性をあげればきりがない。
「とりあえず、通路を戻って、別の道がないか探そう。あとは」
そう思って周り右をしたとき。
ふいに風を切る音。
それは一瞬だった。
咄嗟に俺は首を横に動かし、飛んできた刃物を避ける。
「敵?」
その刃物、いや矢は地面に突き刺さる。
矢。つまりは弓。
ふと思い出す。
喋らないからその存在を忘れかけていた。
「フィオナさん?」
フィオナさんが俺の目の前にどこからともなく表れて。
そして、ゆっくりと頭を下げる。
フィオナさんと戦うことになるなど、予想にもつかないことだった。
でも、一つの大きな可能性が出てきた。
そう。
もしかしたらこの天井の崩壊は故意的に、俺とフィオナさんを二人にするためではなかったのか、と。
フィオナさんが俺目がけて数発の矢を放つ。それを避ける時には、フィオナさんは闇の中に隠れていた。
火の玉を回りに飛ばし、フィオナさんを探すが、見つからない。
そう思った矢先、先ほどよりもはるかに速い速度で矢が数発俺目がけて飛んできた。それを剣で打ち返し。
瞬間、フィオナさんが俺のすぐ後ろに立っていた。
それは矢を放った方向の真逆。
弓でフィオナさんは俺を思いっきり殴り飛ばす。攻撃を受け、俺はそのまま遠くに飛ぶ。そしてフィオナさんを見る時、数発の矢の後、また姿を隠す。
徹底した体術を交えたヒットアンドアウェイ。
「面倒くさいなぁ」
俺は火の魔法ではなく氷の魔法を使う。
自分の周囲数メートルの間に氷の壁を作る。土ではなく氷を使ったのは少しでも視界を良くしておくため。
その氷に突き刺さる矢。
それは魔力が込められた矢だった。
瞬間俺を守る氷の壁が崩壊する。その氷が崩壊する間。僅かな隙間を矢が飛ぶ。
「…………すごい」
関心しながら、俺はその矢を掴む。
また暗闇に隠れたフィオナさん。数発の矢が放たれる。
その方角へ俺は全力で向かう。剣で矢をはじき返しながら、俺はフィオナさんを探す。
目は使えない。音も使えない。なら匂いだ。フィオナさんから感じる匂いを頼りに俺はフィオナさんがいるであろう方角に進む。
火の玉を辺りに散らばせる。
その光源すべては矢で落とされるが、一瞬に明かりでフィオナさんを見つける。
その先へ。
しかし。
その先には弓が置いてあった。
「うそっ」
俺の行動はすべて読まれていた。
一瞬の隙を生んだ俺の背後にいたフィオナさんが俺を蹴り上げる。そのまま弓を取りに行く。そしてすぐさま構えられた矢が俺目がけて放つ。
その間、俺は空中を漂っていた。その僅かな時間にそれだけの行程を挟むほどの速さ。
矢を手でつかむ。
「すごい!」
フィオナさんすごい。
フィオナさん強い。
地面に手を付き、回転するように着陸すると俺は矢を地面に捨てて。
「フィオナさん、すごく強いんだね」
思わず賞賛の言葉をかけてしまう。
闇に隠れたフィオナさんから返事はない。
でも聞こえているはずだ。
俺はゆっくりとフィオナさんを探す。
火の玉は使わない。
初めは暗闇に目が慣れなかったが、今は暗闇でも少しは先が見えるほどまでになった。
わざわざ自分の位置を教えるような真似はしない。
氷の魔法を使い、辺りに大きな音を鳴らし、その間に少しだけ移動をする。
俺もフィオナさんと同じ戦い方をする。
これで五分。
「うわっ!」
の、はずだった。
まるで俺の姿がくっきりと映っているかのように俺の頭目がけて矢が放たれた。そして足音。
その先へ俺は走る。
足音は嘘は言わない。
でもフィオナさん相手では違った。
足音がなければ止まっているはず。一切の足音なく動くことなどできないはずだ。しかしフィオナさんはいるはずの場所にいなかった。
魔法か。
短距離を音もなく移動する魔法。転移魔法かあるいは空間魔法か。とにかく、何かしらの魔法を使っているのだ。
厄介だ。この戦い方にその魔法は強い。
でも俺も魔法が使える。
計画変更。フィオナさんと同じ戦い方はしない。
フィオナさんに相性がいい魔法を使う戦い方をすれば良いのだから。
「小さな火ではなく、輝かしい光の魔法」
光魔法。
その一つである小さな光源を俺は生み出した。火の玉と違い、フィオナさんはこの光の玉を消す術はない。
その光の玉は辺りを輝かしく照らし、火の玉と違いはっきりと辺りが見えるようにまでなる。
フィオナさんがやっとで現れる。
「これでフィナさんの得意な闇討ちができなくなりましたね」
そう言ったとき、フィオナさんの表情が少しだけ笑った。
これが二回目の戦い、いや第二段階に到達したと意味するかのように、再びゆっくりと頭を下げて。
瞬間、フィオナさんが消えた。
音もなく俺の頭上にいたフィオナさんが矢を放つ。それを寸前で回避する間に、フィオナさんは俺めがけて蹴りを行った。
その蹴りが諸に入り、高く飛ばされる。その間に十七発の矢が全方位から放たれた。
本気を出さなくても数発程度なら回避は可能だ。でも十発を超えるとそうはいかない。俺は数発ほど受けることになる。
それを気に留めないで俺は地面に足が着いた瞬間にフィオナさんとの距離を詰めた。
フィオナさんが弓を振る。
それをしゃがみながら回避して。
俺はフィオナさんの胸倉を掴もうと手を伸ばした時。
「そこまでだ!」
大きな怒号とともに、岩の壁が崩壊した。
そしてゆっくりとディーナさんが現れた。
モンスター紹介3
プルル
騎士試験のために作られた洞窟でリヴァたちのみを襲おうと出てきたモンスターの一種。
作中に登場はしてないけども、設定上してる。
青い水滴のような見た目をしている。常に空中を漂っており、そして体が限りなく半透明。暗い洞窟の中ではプルルに気づくことは難しいため騎士試験に選ばれた。
一般兵一人分と実はまあまあ強い。というか厄介な相手。




