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第10話 ちょっとした小休憩

 騎士試験は何とも不思議な終わり方をした。

 崩壊した岩の壁から出てきたディーナさんが俺の方を見て、ゆっくりと歩を進める。

 俺のすぐ目の前で背中の斧ではなく腰の剣を引き、振り回しこう言った。

「リヴァ、最後に。この私の剣を交えないか?」

 それがおそらく最後の試験内容なのだろうか。

 数度、剣を交えた俺とディーナさん。

 それを見守る、アラン君、ホン君、フィオナさん。そこに少しだけ引っ掛かりを覚えた。俺の記憶の片隅ではチームは四人だったから。

 本当に少しだけ、俺とディーナさんは戦い、そしてディーナさんが剣を柄に収めた。

「分かった。私がするべき行動が」

「どういう意味ですか?」

「さあな。それも考えてみたらどうだ?」

 そう言って、ディーナさんは通路の方を見た。

「そろそろ帰ろう。試験は終わりだ」

 その言葉で試験は終わりを迎えた。



「どうして?」

 実技試験の結果は明日となる。

 皆が緊張して眠れない夜を迎えるだろう。そんな中、試験の疲れを取るために俺はゆっくりと一人で風呂に浸かっていた。

 俺はディーナさんがどうしてそんなことを言ったのかを考えてみる。

「数度、剣を交えて。何が分かったのだろう」

 フィオナさん、そしてディーナさん。この二人、というよりも試験官という立場と戦った子は俺以外にいない。

 それほどまでに何故俺は特別扱いを受けたのだろうか。

 騎士でも倒せなかった侵入者を倒したから?

 違う。

 考えられる要因は一つ。

「俺の存在が怪しまれている?」

 どこからともなく表れた存在。

 どこの国出身なのか。

 今までどうやって生きてきたのか。

 俺はまだ何も、誰にも教えていない。

「もしもそうなら、最後にディーナさんが言った言葉の意味が分からなくなる」

 そのままの意味で捉えたら、合格あるいは不合格が決まったかもしれない。

 でも俺が仮に。

「私も入っても良いか?」

「アレットさん!」

 なんて思っていると、風呂場の扉が開き、アレットさんが姿を見せた。

 体はタオルで隠されていている。少しだけホッとする。髪はほどかれておらず、後ろで縛られている。

 大声をあげてしまった俺に不思議そうに、首を傾げて。

「どうした?」

「いや、どうもしませんが」

 今までずっと一人で風呂に入っていたから、誰かが入ってくるなど想像もしなかった。

 思わず無意識に呟いていた素の独り言に問題がないか、頭を巡らせる。大丈夫。一度俺とか使ったけども問題ない。聞かれてないはず。多分。

 アレットさんは俺のすぐ隣まで入り。

「リヴァは髪、平気なのか?」

「かみ?」

「リヴァの自慢の長い髪が湯舟に浸かっているが」

 確かに俺の髪は後ろでまとめるなどしておらず、湯舟に浸かっているけども。

 そんなに可笑しいことなのか?

 まあ女性の風呂の入り方など知る方法がなかったし。髪が湯舟に浸かったとしても後で洗うわけだから別に問題じゃないと思うけども。

 でも、とりあえず俺もアレットさんみたいに髪を後ろにまとめてみることにする。

 髪留めがないのにどうやってすればいいんだと苦戦する。

「髪を束ねるのが苦手か? 私がしてやろう」

「ありがとうございます」

 アレットさんに背中を見せて、俺は髪を任せることにする。

 アレットさんも優しい。

 というか女性らしい。本当に。

 格好良さの中に優しさがあり、すごく綺麗だし、スタイルは良いし、良い匂いはするし。

 こんな人と恋がしたかったな。まあ昔の俺みたいな不細工には無理でしたけどね。

「できたぞ」

 俺の髪が綺麗にこんまりとまとめられた。

 また並んた形になり、少しだけ静かな時間が進む。

 ちょっと空気を変えようと挑戦してみる。

「いつもこの時間帯に入らないですよね? どうしてですか?」

「私がいつも入る時間帯に先客がいたのだ。それも騎士隊長とその補佐官だ。流石の私も時間を変えることにした。そしたらリヴァがいた」

「そういうことですか」

 ディーナさんとフィオナさんがこの女子寮に泊っているのを忘れていた。

 貴族がこんな寮に泊るとは思いもしなかった。

 その理由としてディーナさんは貴族、そして隊長という身分だが騎士である以上一人で卒なくなんでもこなせるからだ。それは次第に貴族よりも庶民に近い価値観を生んだらしく全然平気らしい。

「今回の試験はどうだった?」

 アレットさんが聞いてくる。

「良く分からない試験でした」

「そうだろう。私にとっても謎の多い試験だった」

「アレットさんも知られていないのですか?」

「ああ」

 それは予想外。

「リヴァ、一つ良いか?」

「はい」

「何か悩みはないか?」

 悩み?

「特には」

「そうか。それは良かった」

「どうしてそんなことを?」

「いや、リヴァ。お前は秘密を多く持ち過ぎている。例え聞いても苦笑いをするだけだ。悩みなんか一切ない振りして、誰にも相談しようともしない。親から離れてここに来たというのに」

 ああ、確かにそうか。

 周りの評価としてはそうなるのか。

 悩みねぇ。

 あるんだけども。

「…………世の中、言えない悩みの方が多いと思う」

 少なくとも俺は今。

 アリスという友人の親を殺したのかもしれないという可能性が悩みの種としてある。

「…………明日聞こう」

 俺は小さく決意した。

キャラ紹介29

モブ リズ・ノイラート

42歳女性。夫と子持ちの貴族の妻。ダリアさんの友人の一人。

「まあまあまあまあ」が口癖でどこか庶民臭い。というのもダリアさん同様生まれは庶民なため。

ちなみにリズの子は現在19歳。

多分もう出ない。

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