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第15話 侵入者1 (三人称視点)

 それは唐突に。

 侵入者の数は四人。

 隣国の兵士である。

 怒号。悲鳴。それぞれが聞こえる中、四人の兵士たちはある目的のために、老若男女問わず人々を斬り払い、殺していく。

 壇上からもっと離れた壁は粉砕されていた。その奥も同様に。

「騎士たちは貴族を守れ!」

 アレックさんの言葉で、騎士たちがその四人を止めるために行動を始めた。

 ヨハン邸に元からいた一般兵総勢40名と、騎士9名。副隊長2人に隊長が1人。その戦力の差、数という点で言えば火を見るよりも明らかだが、戦力とは質と量の二つを問われる。

 初めに一般兵たちが薙ぎ払われる。

 まるで虫を殺すかのように、侵入者たちは一般兵を殺していく。そしてそれが騎士へと向けられ。1人の侵入者に対して、2人の騎士が戦う。

 交差する剣。

 逃げ惑う貴族たち。

「ヨハン殿は奥へお逃げください」

「ですが」

「大丈夫です。この私がいるのですから」

 アレックの言葉に納得したようにヨハン夫妻は副隊長2人の護衛の下、奥へと逃げていく。一瞬。リヴァを見たが、声はかけられなかった。

 それを見届けて、アレックが剣を抜き、侵入者側へと走った。

「何が起きて?」

 それに気づくことなく、リヴァは侵入者たちを見ながら、小さくつぶやいた。

 そんなリヴァへクロエが近づき。

「あなたは友達と逃げなさい。これは私たち騎士の仕事」

 リヴァは有無を言わせようとしないクロエの言葉に、素直に従うことにした。

 その一番の理由はこちら側の戦力の方が多い点だった。

「分かりました」

 リヴァはクロエとともにアリスたちの下へ走った。

 リヴァよりもアリスたちの方が侵入者に近い。危険である。しかしながら、彼女たちまだその場から逃げていなかった。侵入者と騎士たちの戦いに目が向けられていた。

 リヴァがアリスたちと無事再会したことを見届けて、クロエは騎士たちの援護へと向かった。

「アリス! リナ! アラン君!」

 リヴァが声をかけると、はっと我に返ったように三人はリヴァの方を見る。

「リヴァちゃん」

「早く逃げるよ。私たちは戦う意味はないからね」

 そうリヴァが言うと、三人は小さく頷く。

 そして逃げる準備を始める時、誰かひとりの女性の悲鳴が響いた。


 それは一人の騎士の死を意味していた。

 侵入者の一人が、騎士の頭を跳ねた。その頭が床を転がる光景を見てしまったが故の悲鳴であった。

 その悲鳴がなければリヴァたち四人はその光景を見なかっただろう。

 リヴァを除いた三人にとって、それはこのうえない恐怖の光景であり。たちまちに三人の表情は青く染まった。

 そして、もう一人の騎士が死に、一人の侵入者と戦う騎士がいなくなる。

 それに初めに気づいたのはアレックだった。

 アレックがその侵入者との戦いを始める。

 騎士隊長はこの国に36人いる。いや、それだけしかいない。アレックはその騎士隊長の座に座るに値する実力を持っていることを意味する。

 アレック一人で対処できても問題ないはずだった。

 しかし、今回に限り違う。

 アレックと侵入者の剣が交差する。

「アレックだな。俺はアベルと言う」

「親切にどうも」

 アベルと名乗った侵入者は、剣を振り上げた。そしてその手に魔方陣が展開される。

 侵入者たちの名前はそれぞれアベル、ディエゴ、ガロ、ジェネ。

 その中で最も強い者はアベル。

 それは、騎士二人と戦い勝つことができていた時点で分かっていた。だからこそ、アレックは彼に向かったのだから。

 そして、仮にもアベルがアレックと同等、もしくはそれ以上の強さがあるのであれば。

 その戦いはこの小さな部屋で収まるものではない。

 目にも止まらぬ速さで振り下ろされた剣。それが生むかまいたちに風の魔法が合わさり巨大な斬撃へと変わる。

 テーブルや椅子を切り裂き。

 風を切る音が鳴り響く。

 アレックはそれが別の目的であると判断すると、回避ではなく、受け止めることを選んだ。

 一瞬の甲高い金属音。

 アレックは数メートル押されるも、その斬撃を跳ね返す。

 その斬撃の向かう方角は別の騎士であった。

「噂に違わぬ強さだな。まさか受け止められるとは思いもしなかった」

「一体、俺を誰だと思っているんだ?」

「水の一人だろう?」

 その言葉の意味を理解したアレックはうっすらと笑みを浮かべた。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 人が死ぬ光景。

 それを目にして、足が止まったとしても、不思議ではない。

 しかし、逃げなくては、戦いに巻き込まれてしまう。

 リヴァはアリスは大丈夫と判断し、リナとアランの手を握った。

「早く逃げるよ。アレックさんとクロエさんたちが戦っている間に」

 そう言って、手を引っ張る。

 引っ張られるようにリナとアランは走り出し、アリスはリナの手を握り走り出す。

 しかし。

 アベルだけではない。

 他の騎士と侵入者の戦い。クロエが混ざり三人の所を除き、騎士側が押されていた。それは騎士二人と侵入者一人では侵入者の方が強いことを意味する。

 そして、一人の騎士が倒れた時、その戦いは簡単に終わることも意味する。

 ドミノ倒しのように。一人の騎士が倒れ、それに巻き込まれるようにもう一人の騎士が倒れた。そして、手が空いた侵入者は他の仲間を助けることではなく、追撃を選んだ。

 その目はリヴァたち四人に向いた。

 地を蹴り、一瞬にしてリヴァたちとの距離が詰まる。

 それに唯一気づいたのは戦いに視線を適度に向けていたリヴァだけだった。

「アリス!」

 リヴァはその侵入者の攻撃対象がアリスだと気づくと、手を離し、剣を抜いた。

 そしてその侵入者の剣を寸前で受け止めた。

 一瞬のことに眉を細めるリヴァ。侵入者は追撃へと転ずる。

 それをリヴァは何度も何度も受け止める。

「リヴァちゃん!」

「私は大丈夫だから、あなたたちはそこにいて」

「でも」

「大丈夫大丈夫っ!」

 侵入者、ディエゴは目の前の女の余裕に怒りを覚えた。

 そして数度剣を交え、理解する。

 少なくとも、先ほど倒した騎士よりも強いことを。

 本気を出さなくてはいけない。ディエゴは腰の剣をもう一本取り出そうと手をかけた。

 瞬間。

 それはリヴァイアサンという巨大な種のただの殺意であった。


 リヴァが初めて殺意を人に向けたのはこれが初めてだろう。

 初めは少なくとも不思議な感覚として、感じ取ったディエゴは剣を抜くことを止め、後ろに飛んだ。距離を取りたかった。

 それが死の恐怖であると理解すると、ディエゴの額を汗が流れ落ちる。

「せっかくクロエさんとの戦いを楽しんでたのに、邪魔をして。あまつさえ、私の大切な友人を傷つけようとした」

 リヴァはそう呟きながら剣をディエゴへ向け、魔法の展開を行った。

「万死に値する」

 ディエゴはもう一本の剣を引き抜く。そして同様に魔法の展開を始めた。

 そんなディエゴの行動に対してリヴァに気にした様子はなかった。

 あるのは怒りだけ。

 純粋な怒り。

 それをどのようにして発散すれば良いのかもリヴァは分かっていた。ただ、後ろの友人たちがその発散をする上で邪魔なため行動に移せないだけ。

「行くぞ!」

 ディエゴが咆哮に近い叫びをしたとき、リヴァの魔法が発動した。

 それは土の魔法。

 リヴァとアリスたちを遮断するための魔法。

 アリスたちに人が死ぬ瞬間を見せないためにリヴァは土による視線の遮りを行った。

 その行動を別の意味としてディエゴは捉える。リヴァよりもコンマ遅く、ディエゴの火の魔法が展開される。

 その瞬間。

 リヴァの剣がディエゴの首を貫いた。

 何が起きたのか理解できないまま、ディエゴの魔法が破棄される。そして、虚ろな目をリヴァに向けて。

 リヴァはそんなディエゴの首を横に斬り放った。

キャラ紹介19

モブ ホン

17歳少年。まだ登場していない騎士見習いの一人。

読書が好きで、毎日のように図書室にいる。そのため、知識が豊富で勉強ができる。テストは常に九割以上をキープし続けている。

勉強ができるから実技は点でダメ、というわけではなく。実は中々強い。実力を隠しているためアラン君の次に弱いと周囲からは思われているが、本当の実力はダン以上リヴァ未満。

勉強はできるが魔法はあまり得意ではない。それでも一番魔法が得意なアリスの次にできたりする。

名前は「本」から取ったわけではない。

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