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第14話 騎士の舞

「あちらの方は先ほどの」

「騎士だったのか」

「噂では、騎士見習いみたいです」

「まあ、それは。あの容姿で選ばれたのでしょうか?」

「ヨハン殿は所有する騎士見習いを自慢したいのだろうが、良い結果になるのかね」

「騎士見習いに騎士の戦いを求めるのは彼女に酷ではなかろうか」


 壇上と観客の間は複数の騎士が、近づかないように、そして何かあった時のために立っている。

 ヨハンさんたちは壇上近くの特等席でこちらを見ている。

 壇上だから様々な会話が聞こえる。

 俺に聞こえるのだから、ヨハンさんにも聞こえているぞ。そのヨハンさんは気にした様子ではないけども。

 アレットさんは見世物とか言っていたが、その気持ちがよく分かるほど皆が見て来る。

 恥ずかしい。

 ふとアリスたちと視線が合う。

 さらに恥ずかしくなる。


 響き渡る笛の音が鳴る。

 それは騎士の舞の開始を意味し、クロエさんが剣を構えた。模擬剣ではない。本物の刃がついた剣だ。鎧を着ているとはいえ、危険なことには変わらない。

 クロエさんなら、多分大丈夫だろうが、なるべく避けるようにしなくてはいけない。

 そして騎士として騎士らしい戦いを見せなくてはいけない。

 俺は深呼吸をした。

 剣を構える。

 するとクロエさんがこちらへ向かって来た。それを剣で受け止める。数度剣を交えると、クロエさんは後ろへ飛んだ。

 剣が左右に揺れる。

 今度は俺が向かった。

 クロエさんが剣で防ぐ。そして先ほどのお返しのように数度剣を交える。

 ふいにクロエさんが俺の顔めがけて蹴りを放った。それを後ろへ引いて避ける。そして振り下ろされる足は俺の剣を思いっきり踏んだ。予想外のことに剣は地面に着く。

 一回転するように、俺の上空を体を反らせながら飛んだ。

 地面に着いた瞬間回転しながら俺へ目掛けて剣は振るった。

 それを寸前で防ぐ。

「すごい」

 俺は思わず感嘆の声をあげた。

 そういえば、俺はクロエさんの本気を知らない。クロエさんだけではない。知る騎士、その誰もどれ程の強さなのかを知らない。

 騎士達は俺の予想以上の強さを持つのかもしれない。

 クロエさんの相手として不足がないように戦わなくてはいけない。

 覚悟を決めるために俺は後ろへ飛んだ。


 ふと老婆の言葉を思い出す。

 魔法の使用は許されていますのでご自由に、と。

 魔法が許されているならば、錬金術も許されることになる。だったら俺が俺らしく戦うならば剣ではなく。

 俺は剣で壇上の地面に軽く錬金術の魔方陣を描いた。

 光り輝く魔方陣。現れた槍を手に取り、剣を鞘にしまう。


「錬金術?」

「あれほど優れた槍を彼女は作れるのか?」

「なぜ槍を」


 観客の驚きの声。


「魔法の使用は許されていますが錬金術で槍の生成、および使用はよろしいのですか?」

「構いません。彼女はおそらくあれが最も良いのでしょう」


 そんなヨハンさんの声が聞こえる。もしかしたら使ったらダメだったのかもしれない。

 まあ良いか。

 俺は槍を構えた。

 そういえば、槍は久々だ。

 どうして槍が俺らしいと思ったのか。槍よりも剣の方が使っているはずなのに。でも、初めて使った武器だから思入れはある。

「クロエさん。行きます!」

 俺がそう言うと、クロエさんがどうぞと言わんばかりに剣を構えた。


 槍と剣。

 どちらが有利かは見てわかる。リーチの利点は大きく、だからこそ人間は刃物の次に火薬を使い始めたのだから。

 でも、それはこの世界では通じないのかもしれない。

 槍を振り回すがそれを剣で受け止められ、クロエさんの反撃を槍の持ち手で防ぐ。

 ささやかな攻防。

 それはクロエさんが向けた手で激しいものへと変わる。

 魔法の詠唱。

 変身魔法の時もそうだが、基本的に魔法は詠唱が必要である。ただそれはする必要も無い。

 魔力を余分に使う事になり、何より力が変わるが、詠唱破棄は可能である。

 このような時に本気を出す必要はない。だから詠唱は必要ないというよりも、してはいけないはずだ。しかしクロエさんはそれをしたのだ。

 それは綺麗な火の魔法だった。


 俺の体を巻き付けようとするかのように、火の龍が現れる。それに気づいた瞬間、俺は槍を振り回し、距離を取った。

 火の竜は消えない。

 クロエさんの周りを飛ぶ。

「あなたなら、大丈夫なはずです」

 クロエさんがそんなことを呟いた。

「これから私は本気になります。だからあなたも本気を出しなさい」

「はい!」

 クロエさんの本気、それがどれほどのものなのか。

 ものすごく楽しみだ。

「行きます!」

 クロエさんが向かってくる。

 先ほどよりもはるかに早い速度で、剣が振られる。それを槍で受け止めるつかの間。火の龍が火の渦を生む。

 それをクロエさんの上空を飛び回避するが、その俺を目で追っていたクロエさんが剣で追撃を行う。

 それを槍で防ぎ、俺は反撃に転じる。

 クロエさんと火の龍。

 この一人と一匹に対して、俺は槍を振るった。突きあるいは振り回しによる、俺とクロエさんの攻防。

 鉄が擦れる音が響き渡る。

 ただ楽しかった。

 初めてこれ程の力を出したかもしれない。

 俺もクロエさんも正直な話、本気ではない。人を殺さないように手を抜いている時点で本気などありえないのだ。

 そう、俺とクロエさんはあくまで騎士の舞という舞台において本気を見せているのだ。

 でもそれで十分。

 不思議な気分の高揚。

 戦いをどうして楽しいと思ったのか。

 それを考えるのも楽しくなり、俺は笑みしか浮かべなかった。


 しかし、神様は非情にも、そんな俺たちの邪魔をする。

 轟音と悲鳴が辺りに響いた。

キャラ紹介18

モブ コスタヤ

15歳少年。まだ一度しか発言していない騎士見習いの一人。

一章二話で「し! 怒られるぞ。黙っておけ」と発言した子。

一言で言えばコミュ障。気弱でリスみたいな男。ただリスみたいに可愛くはない。仲良くなると微妙に調子になる。

怒られることが嫌なため、怒られないように、周りの視線に敏感になっている模様。

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