思惑
間違えて、文章の途中でアップしてしまいました。
少し加筆してあります。
ご迷惑をおかけします;
翌朝、朝食を食べ終わった後ギルさんに声を掛けられて、レイと一緒にギルさんのお家へ行った。
さすがに長の家は広くて、いくつかある部屋に会議用のものがあるそうで、そこへ通される。
入ると、やっぱり部隊長の人達がいた。
「おはようございます」
三人に声を掛けられて、私達も返事をする。
クウちゃんは昨日のことがあるからか、グルグルと喉を鳴らしながら、私の横で部隊長達を威嚇している。
「おはようございます。ミスーリさん、昨日の子どもは大丈夫ですか?」
とりあえず、一番気になっていたことをミスーリさんに尋ねる。
「はい。特に後遺症もなく、もう今日は朝から元気にしていますよ」
温和な笑顔を向けて、ミスーリさんが言う。
その言葉にホッとする。
それが分かれば、私が確認したいのは一つだけ。
「ミスーリさん、一つ聞きたいことがあります」
「何でしょう」
「昨日の火事はミスーリさん達、部隊長が仕掛けたものですか?」
私の問いに、ミスーリさんは頷く。
「そうです。貴女の…ディールの姫のことを知りたかったんです。ただ、計画をして実行したのは私のみ。他の二人は与り知らぬことです」
穏やかな口調で、ミスーリさんは言う。
花の祭りでも見たから知っているけど、焚火は大掛かりな囲いがあって、そうそう倒れるものじゃない。
それに、この辺りは乾燥していてあまり雨が降らない土地なのに、広場の近くにあった湿った土の小山。絶対に鎮火用に用意してあったんだろう。
水竜を使役するというミスーリさんが広場にやって来たのも、遅かった。
翼竜が本気を出せばあんなに時間がかかる訳がない。
きっと、近くで私の動向を探っていたはず。
「あなた達が私を信用できないというのは、よく分かっているつもりです。…けれど、他人を犠牲にしてまでやることですか?私はそれが納得できません」
もしかしたら、あの男の子はかなり危険な状態になったかもしれない。
私の動向を調べるために、子どもを危険に晒すのは許せることじゃない。
部隊長達に話したいことがあると、レイには予め伝えてあるので私の隣にいるレイは特に口を挟むようなことはしない。
「あの子のことは予想外でした。ですからユキ様、貴女には感謝しております」
穏やかにミスーリさんは続ける。
その言葉に、私はさらにイラッとする。
「もし、私が何の行動も起こさなかったら、どうするつもりでした?」
「私が動きましたよ。…それでも間に合ったかどうか怪しいですが」
「…そうですか。よく分かりました」
怒鳴りたいのを我慢して、拳を握って耐える。
ここで怒っても意味がない。この人達には伝わらない。
ここにはここの、ルールがある。それを私は分かっていないんだから、口を出す権利はない。
でも、そういうつもりならこっちにだって考えがある。
私の気持ちと同調するのか、クウちゃんが隣で更に威嚇している。
そんなクウちゃんを抱きしめる。
「外に出ています」
ギルさんに頭を下げると私はそこを後にした。
「ユキ。大丈夫か?」
外に出て、深呼吸を繰り返している私の所へやって来て、レイが尋ねる。
「…うん。後ちょっと」
イライラしていると、頭が回らなくなるからね。
深呼吸して落ち着かないと。
「もっと怒るかと思っていたのに…大人だな、ユキは」
苦笑するレイに、私は首を振る。
「前にね、同じように頭にきて、その勢いのままディル王子を引っ叩いたことがあって。あれから反省して、もっと冷静になろうと思って」
私の言葉にレイが目を丸くする。
「引っ叩いた?いつ?」
「うーん。ここに来たばっかりの頃かな。まだレイが10歳だった時。ちょっと話してて頭にきて」
ここの世界にいると、何だか気性が激しくなる気がする…。
そう言うと、レイは何か思い当たることがあるのか、あぁと頷いた。
「ルイシーク兄上のことで?」
「そう。ルイの話を聞いて。色々と事情をまだ理解していなかったから、つい」
まだ子どもだったルイの命を狙ったのは自分の母親だと、淡々と告げるディル王子が許せなかった。
今だったら、手を出すようなことはしなかったかもしれないけど…。
後悔はしていない。
だけど、そういう怒りの表し方は違うだろうってその後反省した。
「…そうか」
なぜだか、少し寂しそうにレイは笑った。
最近、レイはこんな表情をよくする。
レイは明るくて、時々いたずらっ子で、でも真っすぐな子どもだった。
もうすっかり大人の男性になっているけれど、時々見せる彼の素の部分には、そういった所が見え隠れしている。
でも、そんなレイが最近、切ないような、寂しいようなそんな瞳で私を見る。
何か悩み事でもあるのかな?
私で解決できるとは思わないけど、いつか、話をしてみようか。
「ユキ様」
その時後ろから声を掛けられた。
振り向くと、そこにいたのはヒキさん。
昨日と同じように銀色の髪を頭の高い位置で纏めている。
「ヒキさん」
私の言葉に、にこりと笑う。
少し眦の上がった涼し気な美人のヒキさんは、笑うと印象が変わってとても綺麗。
「どうぞ、ヒキとお呼びください」
そう言って、近づくと
「少し時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
ヒキさんはそう言った。




