宴2
間が空いてしまいました…。
こんな鈍足更新ですが、お気に入り登録してくださった方、評価をしてくださった方、ありがとうございます。
会場に戻って、その後は挨拶のオンパレード。
どの国の使者の人も皆、したたかだから言質を取られないように、とにかく必死。
にこやかに笑いながらも腹の探り合い。
貴族って大変なんだなぁって改めて実感。
私はクウちゃんを使って何かしようという目的は無いということを、とりあえずアピール。
「ルイシーク王は姫様をご寵愛されている様子…」
とか言って、私とルイの関係を訝しがる人には
「とんでもありません」
って、うふふと笑っておく。
わざと曖昧にして、私とルイの関係を邪推させておくつもり。
肯定はしないけど否定もしない。
私は無理矢理ここに留まってる訳ではないし、私とルイがそういう関係だって思わせておけば、セリンガムに何かしようとかいう気は起きない筈。
そして、いざとなったら言い逃れができるように。
「ユキ。疲れただろう?飲み物でも持ってこよう」
使者の人や周りにいる貴族のお嬢様方にも聞こえるように、レイがうっとりとした表情で言う。
あ、これ演技ね。
そういう打ち合わせ。
レイはディールの姫に心酔してるっていう設定(笑)
「嬉しい。ちょうど喉が渇いていたところです」
にっこり、私もレイ程ではない演技力で返す。
「あなたのことなら、何でも分かる。…いつも見ているのだから」
レイの長い指が私の頬に触れる。
きゃーって遠巻きに見ているお嬢様から悲鳴が上がるような、熱い瞳でこのセリフ。
レイってば演技派!
だけど、ちょっと鳥肌ものだゾ!!
こっちの人はこういうセリフに喜ぶのかな?
「ご冗談ばっかり…」
うふふって笑って、レイの手に自分の手を重ねる。
あ、ちなみにセリンガムの有名な王と王弟はディールの姫に夢中という設定です。
これにも訳があってね。
「レイ。ユキに触り過ぎだ」
そこへ、今日の主役ルイが登場。
ん?
なんか出番早くない?
もう少しお嬢様方や使者の相手をしてる予定じゃなかった?
「…兄上」
むっとしたような顔をするレイ。
「さぁ、ユキ。見て欲しいものがある」
レイを華麗に無視して私の腰に手を回して、先導するルイ。
もちろん、二人とも演技です。
ルイが連れて行ってくれたのは、広間の後方。
そこには、多くの商人達が立派な布を敷いて、品物を並べていた。
ん?これは聞いてないぞ。
「ルイ。これは?」
「私の祝いに各国の使者が持ってきてくれた物だ。…好きな物を選ぶといい」
にっこり笑って、ルイが言う。
「ルイへの贈り物でしょう?」
「私には、愛しいお前の笑顔が何よりの贈り物だ。好きな物を選んでくれ。そして、その笑顔を私に」
私達を遠巻きにしているお嬢様方から、またキャーっという声が上がる。
ルイもレイも悪ノリするする。
ルイの目はいたずらっ子のように笑っているし、少し後ろにいたレイは笑いを堪えるのが大変そう。
肩が震えてる。
私を連れていかれて、怒り心頭の演技中だからちょうどいいのかな…。
肩を震わせて怒る王弟!みたいな。
「さぁ」
ルイに促されて、商人達の近くへ行く。
「これはサハル湖で獲れました珊瑚を加工したものでございます。お美しい姫様にお似合いです」
最初の人は、宝石商みたい。
色とりどりの綺麗な宝石がたくさん並んでる。
他にも、ネックレスにブローチ。イヤリングにブレスレット、髪留め…。
女性は絶対好きな装飾品がたくさん。
「これは遠い、エンナから取り寄せました布でございます」
次の人は生地を売っている。
ドレスに加工するのね。
そんな風に、たくさんの商人達の品物を見て行く私。
なんだか、皆に注目されていて落ち着かない。
だけど、ルイがわざわざ注目させるように私をここへ仕向けたってことは、何か意図があるはず。
でも、私は私らしくいればいいって言ってたし。
あんまり考えても分からないものは分からないし。
皆に注目されているのも、嫌だし。
とりあえず、欲しい物選びますか。
ざっと見て回って、端の方に皮製品を売っている商人の所が気になった。
「これはこれは…恐れ入ります」
私が近づくと、かなり老齢の商人さんが頭を下げる。
きらきらした宝石や布とか、化粧品とかではなく堅い感じの品揃えの所に来られたのが、意外だったようだ。
「これは、なんの皮ですか」
「ウルガの皮で作りましたものです。硬くて丈夫で長持ち致します」
私が手に取ったのは、灰色の帯剣用のベルト。
ウルガっていうのは、こちらの動物で象に似たもの。
確かに丈夫そう…。
「そちらのマントにもウルガの皮を使用しております」
もう一つ、気になっていた品物の説明をしてもらう。
うん。これ、いいんじゃない?
ルイにはマント。レイにはベルト。
実用的で使いやすそう。
そこで、気づく。
こうやって実用的なものを選べば、今日の私の行動を見ていた使者の人から、私には宝飾品よりも実用的なものの方が効果的だって伝わる。
そうすれば、少なくとも使わない宝飾品は送られてこない。
私はこれ以上の贅沢なんて望まない。
だから、ドレスやアクセサリーや化粧品なんていらない。今あるもので十分。
でも、どうせ送られてくるなら使えるものがいい。
そうして、私はマントとベルトとついでに自分用にヒールの無いブーツを選んだ。
安くは無いけど、アクセサリーなんかを買うよりかはずっといい。
ほくほくした顔で戻ると、ルイとレイが笑って出迎えてくれた。
「ユキ。選べたか?」
ルイが私の手を取りながら、尋ねる。
「はい。とっても素敵なものを」
「それは良かった」
答える私に、ルイはにこりと素敵な笑顔を見せた。
「疲れた~」
パーティが終わり、自室に戻って侍女さんにドレスを脱がせてもらうと私はそのままベットにダイブ。
あぁ…このまま眠りたい…。
「ユキ様。王がこの後お話があると仰っておりますので、髪を結い直しましょう」
侍女さんが、苦笑しながら言う。
えぇ?これから?
今日はもう化粧を落として、寝たいのに…。
「話ですか?」
「はい。どうしても今日のうちに話しておきたいことなのだそうです」
侍女さんがニコニコと笑いながら言う。
大事な話かぁ。
それじゃあ、仕方ないよね。化粧を落とすのはまだ我慢しよ。
いくらルイとは言え、王に会うのにすっぴんはマズイもんね…。
そうして、私はパーティドレスではなく、普段着用のドレスに着替えて髪も下ろして、ルイに指定された場所へ行く。
そこは私の知らない、小さな庭園。
もう日も落ちて、辺りは真っ暗だけれど魔道石のおかげで優しい光に包まれたそこは、小さいけれどよく手入れがされていて、私の知らない花がたくさん。
何だろう。
すごく、落ち着く…。
小さなベンチに腰掛けて、ぼぉっと花を見つめながら癒されていると
「ユキ」
ゆっくりとした歩調でルイがやって来た。




