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姫と呼ばれて  作者: イルハ
第2部
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気づき

あれから、3カ月。

私に異常は無い。


朝起きて、仕事に行って帰ってきて寝る。

そんな毎日。


時々、学生の頃からの友達と女子会やったり会社の先輩のお願いで、合コンに数合わせで参加したり。

祐樹もたまに遊びに来る。


そうそう。

久しぶりに実家へ帰ったりもした。








父親と義母の百合さんと一緒に過ごしてて。


「雪ちゃんは今彼氏いないの?」


百合さんにそんなことを聞かれた。


「いないですよ~」


うん。元カレとは半年くらい前に別れちゃったし。


私はどこかめんどくさがりで、付き合っても連絡はマメにしないし、休日は何が何でも恋人と一緒にいたいわけじゃない。

だから、いっつも振られて終わり。


でも、いつかは目の前の父親と百合さんのように、穏やかでお互いがお互いを認めて。

ずっと一緒にいたいと思える相手と出会えたらな、とは思う。








そうやって。

日々は平凡に、だけど確実に過ぎて行った。


ただ、気になるのは、目が覚めた時着ていたドレスと首にあったネックレス。

ネックレスは桜のような形をした花を模った、華奢なもの。

見覚えは全く無いんだけど、でもどうしてか身に付けてるとホッとするので、あの日からずっと付けてる。

高価なものには見えないんだけど。

水に濡れても、メッキが剥げたり変色したりすることはない。

不思議なネックレス。








「疲れた~」

明日からは連休。

だから、残業も頑張って。

へとへとになって帰宅。


化粧を落として部屋着に着替えて、ベッドにダイブ。

うーん。

よく眠れそう。


そうして、うとうとして。

その時。


--ユキ…。


誰かに名前を呼ばれた。

目を開けるとそこは明るくて、でも眩しい程ではない、ふわふわした感覚の場所。

前にもこんな夢をみた気がする。


ーーユキ。


名前を呼ばれる。

でも、いくら辺りを見回しても姿は見えない。


「誰?」


声に聞き覚えは無い。


ーーこちらへ来て欲しい。


声にはどこか必死な響きがある。


ーー勝手なことを言っているのは分かっている。だが、限界は近い。


「限界って…何が…?」


ーー全て。貴女に関わったもの全て。


「私に関わったもの…?」


何の事を言われているのか、さっぱり分からない。


ーー私は守りたい。


声は続く。


ーーそれには、貴女の協力が必要だ。


「協力…?ごめんなさい。全然…話が見えないの」


ーーもう、誰にも貴女を傷付けさせない。…だから…。


その瞬間、左の脇腹に激痛が走る。


「…くっ…」


脇腹を押える。

すると、手にねっとりとした感触。


血…?

私、血を流してる…?








目の前に現れる残像。

金色の髪の少年。

綺麗な少女。

ローブを纏った人。

初老の男性。


青い瞳が印象的な小さな翼竜。


そうだ。

その瞳がまるで、空みたいだから。

私は『クウ』と名付けたんだっけ…。













その瞬間、私の中で何かが弾けた。













思い出した。

そう。

私は、異世界にいた。








ルイ。

そう、あの子。

あの子の所に行かないと。

私がいなくなって、泣いていたルイ。

心配してる。

私の夢に出てくるくらいに。


「クウちゃん」


声の主に呼び掛ける。

いつの間にか、激痛は治まって血も止まってる。


ーーユキ。


クウちゃんが応えてくれる。


「私、戻るよ」


ーーそうか…。


「私の記憶を失くしたのもクウちゃん?」


ーー無用の混乱を避けるために。


「傷も治してくれたんだね。ありがとう」


ーー礼を言われるようなことではない。


クウちゃんの声。

聞きたいことがたくさんあるけど、そんなに時間も無いんだなってことが何となく分かる。


「どうして私だったの?」


ーーユキがユキだから。


そんな、禅問答みたいな答えって…。


「私は何をしたらいい?」


ーー貴女がその心の通りに行動を起こすなら、それが正しい道へ繋がる。


うーん。何て曖昧な。

もう少し、マニュアルがあると嬉しいんだけどな。

それに、私はそんな立派な人間じゃないんだけどな…。


「クウちゃん、戻っても会える?」


ーーもちろん。我は貴女の竜。


「…あなたはディール?」


ーーそう呼ばれたこともあった。


「あなたは私の味方ね?」


ーー必ず。


うん。

それだけ、聞ければもういいよ。

後一つだけ。


「ルイは元気?」


ーーセリンガムの王子のことは分からない。だが、生きている。


あら?

なんか、突然冷たい感じ。

クウちゃんってルイと仲が悪い印象は無いんだけどなぁ。


ま、いっか。


にこりと笑う。


「私は私のやりたい様にやるよ」


以前、ルドルフさんにも伝えた言葉。

クウちゃんが小さく笑ったような気がした。


ーー待っている。貴女が来るのを。


そうして、私は意識を手放した。

次回、異世界へ戻ります。


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