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姫と呼ばれて  作者: イルハ
第1部
11/47

感情

「王子、下ろしてください」


お願いすれば、ディル王子はにこりと笑って私の腰を支えて馬から下ろしてくれる。

一人でも下りられるんだけどね。

ドレスって動きにくくて、苦手なのです。


地面に足を付けて。

顔を上げれば、近い位置に王子の顔がある。


「ディルバート王子」


「何でしょう?」


期待に瞳を輝かせて、王子が応える。


「お断りします」


にっこり笑って伝えた私の言葉に王子の笑顔が固まる。


「…なぜですか?」


「王宮の問題に巻き込まれたくありません」


王子がキレた場合に備えて、クウちゃんを胸元に抱きしめて、言う。


「私は私の存在価値について、多少は分かっているつもりです。利用されたくはありません」


「利用するなどとっ…!私は純粋にあなたを愛しています!」


縋るような瞳で言う王子に、少し驚く。


ん?

これは、本当に多少は私自身のことが好きだということ?


…なんで?

私と王子がたくさん話をしたのなんて、引っぱたいた時くらいだよね。

もしかして、王子様……Mなの??


「そうであっても、巻き込まれることに変わりありません。」


まぁ。王子が私を本当に好きかどうかなんて、今はあまり大きな問題じゃない。


「…ルイシークの方がいいと?」


呆然としたような王子の言葉に、私は首を傾げる。


この流れでこの質問ということは、そういうことを聞いているのだろうか。


ルイもこの前似たようなことを聞いてきたし。

この世界は、婚期がいくら日本に比べて早いとは言っても、二人して気が早すぎると思う。


「ルイは子どもですから、そんな風に考えたことはありません」


私にとってルイは可愛い弟。そんな感情は抱けない。


「王子も同じです」


私の年齢はご存じでしょう?


と続ければ、王子はこくりと頷く。


もともと、年下はあんまりタイプではないしね。

ルイのお兄ちゃんなら、私にとっては弟と同じなの。

特にディル王子はヘタレだし…。


「王子のこともそんな風には考えられないのです」


セリンガムの王宮にお世話になっている身だから、こんな私でも何か役に立てることがあれば役に立ちたいとは思っているけれど、こういった事に関しては拒否させてもらうつもりだ。

ルドルフさんを通して、王様から許可も取っている。








「ユキッ!!」


その時、遠くから馬で駆けてくるルイやそのお付きの人達の姿が見えた。


「ルイ~」


笑顔で、ルイに手を振って私は走りだす。

本音は分からないけれど、王子のプロポーズ(?)を断ったばかりだしね。

一緒にいない方がいいでしょ。


「ユキッ!大丈夫!?何もされてないっ!?」


ルイは馬から下りると、駆け寄って来て泣きそうな顔で聞く。


「大丈夫。ちょっとお話してただけだから」


心配かけてごめんね、と謝ればルイは真剣な瞳で私をじっと見つめる。

青い瞳が不安げに揺れていて、私は何だか切なくなる。


ルイにはこんな顔をして欲しくない。


「…もう、兄上には近づけさせない…」


ルイの眉がきゅっと寄せられて、低く発せられた言葉にぞくりとする。


何だろう。

少しだけ、ルイが大人っぽく見える。


「兄上~!ユキ~!!」


その時、遅ればせながらレイが駆けてやって来た。

ルイもレイもまだ子どもなのに、立派に馬を御している姿に驚く。

やっぱり、王族は幼い頃からの教育が自分達とは全く違うのだろう。


そうして私達は、当初の予定通りその後三人で遠乗りを楽しんだのだった。








「懐かしいなぁ」


あの湖から離れた場所で、私は木陰で休憩中。

私の前方には、刃をつぶした剣を構えたルイとレイがそれぞれ、剣術指南役の先生と稽古をしている。

遠乗りとは行っても、ルイやレイにとっては日々の武術稽古の場所が変わっただけ。

私の気分転換になるかもと、ルイが誘ってくれたのだから放置されていても、気にならない。


ここに来る途中で見つけたシロツメクサに似た草をたくさん摘んで、今私は二人を見ながら編んでいる。

シロツメクサを編むのって小学生の頃にはやったっけ。

くるくると巻いて、小さなシロツメクサの花輪を作ると、それを側にいたクウちゃんの首にかける。


「きゅい?」


クウちゃんは首を傾げるけれど


「うん!かわいい!!」


って、私が褒めればきゅいきゅいと嬉しそうに鼻を鳴らす。


あぁ…癒される…。


「お上手ですね」


その時、後ろから声をかけられた。


「…フェイさん」


私の声に、フェイさんはにっこりと微笑む。

彼の名前はフェイ・ユート。

セリンガム一の魔道士。

王宮に初めて来た日に、謁見の間で会った紫のローブを纏った人だ。

でも、今日はローブは纏わず、さらりとしたシャツ一枚にズボンというさわやかスタイルだ。

聞けば、あの格好は公の場でのみ使用するものらしい。

確かに、普段からあの格好じゃ不便だし、怪しいよね。


「フェイさんも来ていたんですね」


「ユキ殿がこちらだと、伺ったので」


「私に何か用事ですか?」


フェイさんの言葉に首を傾げる。

フェイさんとは、魔道について教えてもらうために少し話したことがある程度。

優しげでどこか、おっとりとした印象を受けるフェイさんだけど、セリンガム一と言われるだけあって、多忙な人だ。

そんな彼が、わざわざこんな所にまで私を追ってくるなんて。

0時頃、間違えて文章が途中なのにアップしてしまいました;

もし、読まれた方がいたらすみませんでした。

その後すぐに直しました。内容は変わっていません。


今回は短めです。

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