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捨てられた異世界人を保護する村長は、伝説の大賢者でした  作者: ニック
第1章:大工親方と、背伸びした勇者たち

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第14話:シロアリの駆除と施主の判断

「ひいぃっ! な、なんだお前たちは! 護衛ども、奴らを斬り捨てろ!」


 肥満体の子爵が悲鳴を上げ、黒い革鎧の男たちが一斉に長剣を引き抜いた。

 だが、手斧と『構造解析』の訓練を重ねてきた子供たちにとって、力任せに振るわれる剣筋など、目地の通っていない欠陥建築も同然だった。


「ガルド、右の奴の『軸』が完全に浮いてる! 足元を叩け!」


「任せとけ、親方ぁっ!」


 ガルドが低い姿勢から地面を踏み締め、手斧の平で男の膝裏を打ち据える。

 重心を失った男が前傾姿勢に崩れた瞬間、レオンが滑り込むように死角へ回り込み、手斧の柄で頸椎の支点を正確に突いて昏倒させた。


「シルフィ、奥の詠唱者を止めろ! セシリアは崩壊ポイントの固定!」


「……ん」


 影から影へ滑るように移動したシルフィが、奥で魔法を練っていた男の肘関節——魔力の通り道に手斧の峰を軽く添えた。

 無駄な力を一切使わない一撃で魔力の節が断ち切れ、男は高負荷のバックファイアを起こしてそのまま崩れ落ちる。

 同時に、セシリアが手斧の刃先から放った剛炎の楔(フレイム・アンカー)が削られた石組みの隙間に滑り込み、崩落の危険があった壁面を熱でガッチリと焼き固めた。


 ほんの数十秒。

 大剣を振るうでも、ド派手な攻撃魔法を撒き散らすでもなく、ただ「構造の弱点」を的確に解剖・補強する手さばきで、現場の敵は一瞬にして制圧されたのだった。


「ひ、ヒィッ……! た、助けてくれ! 望むだけの金も爵位もやる! だから——」


「金も爵位も要らねぇよ。俺たちが欲しいのは安全な現場だけだ」


 俺は腰を抜かして震える子爵の襟首をガルドに引っ掴ませ、そのまま地下通路を引き返した。

 自分の利益のために国の土台を内側から腐らせ、領民や兵士の命を売ろうとしていたシロアリ。生け捕りにして王様に引き渡すのが、現場を任された大工の筋ってものだ。


 翌朝、王都の謁見の間。

 俺たちが突きつけた子爵と、削り取られた城壁の裏構造、そして子爵の私邸から押収した魔王軍との内通を示す暗号文を前に、国王の顔は怒りで破裂せんばかりに赤黒く染まっていた。


「国の防衛線を……我が王都の足元を内側から崩そうとしていたと……!? この裏切り者が!!」


「ご、誤解でございます陛下! 私は……私はただ——」


「黙れ!! 即刻、広場にて打ち首とせよ! 一族の財産は全て没収、領地も召し上げる!」


 弁明の余地すら与えられず、兵士たちに引きずられていく子爵。

 間もなく王都の広場に鐘の音が重々しく響き渡り、国の土台を侵食していたシロアリは、王自身の手によって完全に駆除・処刑されたのだった。


「現場監督殿……。そなたたちのおかげで、我が国は外の敵だけでなく、内の毒からも救われた。心より感謝する」


 玉座から降りて深々と頭を下げる国王に、俺は肩をすくめてノミの柄をコンコンと叩いた。


「礼には及ばねぇよ。表の防衛線を塞ぎ、裏の腐った柱を叩き潰した。これでこの王都の『基礎』は、ようやく安全になったってわけだ」


 だが、このシロアリ退治の成功と表の防衛線の完成は、さらなる大きな状況の変化を俺たちにもたらすことになる。

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