第13話:構造欠陥の炙り出し
「シルフィ、その『変な隙間』まで案内しろ。足音は殺せ」
「……ん。こっち」
月明かりすら届かない王都の地下排水路。湿った苔とカビの匂いが漂う暗がりを、シルフィを先頭に俺たちは静かに進んでいた。
シルフィはフードの影から覗く尖った耳を澄ませ、手斧の柄で壁の石組みをトントンと軽く叩いていく。音の反響と手応えだけで、石の裏側に隠された「空洞」と「歪み」を正確に読み取っていた。
「ここ……。表の石はちゃんと積んであるように見えるけど、裏の接合部がごっそり削られてる。外から強い圧力がかかったら、内側に一気に崩れ落ちる仕組み」
「手抜きの欠陥工事どころか……意図的に仕組まれた『爆薬代わりの崩壊ポイント』か」
俺は懐中電灯代わりの小さな火の魔法をセシリアに灯させ、削り取られた石組みの断面を覗き込んだ。
工具で削られた明らかな痕跡。表の防衛線をどれだけ頑丈に補強しても、この地下から一箇所でも崩されれば、王都の中枢は一たまりもない。
「こんなひどいこと……! この国を守るために戦ってる兵士さんや、町の人たちを裏切るなんて……!」
セシリアが悔しそうに拳を握りしめる。
「義一さん、奥から誰か来ます……!」
レオンが目ざとく気配を察知し、低く呟いた。
地下通路の奥から、松明の揺らめく光と共に、高級そうなローブを纏った肥満体の男と、黒い革鎧に身を包んだ怪しい男たちが姿を現した。
「ふはは、手際よく削れよ。表の防衛線が奴ら『雑用大工』のおかげで頑丈になろうと関係ない。ここから魔王軍を引き入れれば、王都は陥落……我が一族が新たな王として返り咲くのだからな」
「ご安心を、子爵閣下。構造の弱い部分はあらかじめ削り出してあります。合図と共にここを爆砕すれば——」
「そこまでだ、シロアリども」
暗がりから俺がひょいと姿を現すと、男たちは悲鳴のような声を上げて跳ね上がった。
「な、なんだ貴様らは!? なぜこの地下通路を……!?」
「家を建てる時も、壊す時もな……一番最初に腐るのは目に見えねぇ『基礎』なんだよ」
俺は肩に手斧を担ぎ、冷ややかな視線で男たちを見下ろした。
「レオン、ガルド! 逃げ道を塞げ! シルフィ、セシリア! こいつらが仕掛けた崩壊ポイントの『歪み』を一気にロックするぞ!」
「「「「はいっ!!」」」」
自分の利益のために国の土台を腐らせていた内通者ども。
手斧を通した構造解析で鍛え上げられた子供たちが、逃げ場のない地下通路でシロアリ退治のために一斉に動き出した。




