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捨てられた異世界人を保護する村長は、伝説の大賢者でした  作者: ニック
第1章:大工親方と、背伸びした勇者たち

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第11話:現場監督たちの出張工事

「よし、工程表通りだな。第一工区の西側城壁から取りかかるぞ!」


『王国加速改修計画』の発足から数日。俺たちは王都を飛び出し、補強工事の第一現場となる西側外郭城壁へと足を運んでいた。


 現地に到着すると、そこには呆然と佇む王国の石工や兵士たちが溢れ返っていた。

 彼らの目の前に広がっているのは、何年もの雨風で土台の石積みが歪み、いつ崩れてもおかしくない「危険建築」そのものの巨壁だ。


「な、なんだこのガキどもは……? 現場監督だと……!?」


「おいおい、俺たちベテランの石工でも手がつけられない崩落寸前の要塞だぞ! ガキのままごとで直せるわけが——」


「うるせぇ! 現場の邪魔になる私語は厳禁だ!」


 職人たちの無駄口を、俺の一喝で一瞬にして叩き潰す。


「レオン! 現場の安全第一だ。まずは倒壊の危険がある危険箇所の『構造解析』からだ。手斧で土台の過荷重点を探せ!」


「はいっ、義一さん!」


 レオンは迷いなく腰の手斧を引き抜くと、歪んだ石積みの前にしゃがみ込んだ。

 先日の訓練で叩き込まれた「構造解析」の要領で、刃先を石の継ぎ目にそっと宛がう。


「見つけた……! 土台の三番目の石、ここに壁全体の重みが集中してます! ここが破砕したら一気に全崩壊する……!」


「よく見抜いた。シルフィ! その目地の歪みをロックする『支点』の位置はどこだ?」


「……あそこ。右奥の岩盤と石組みの隙間、四センチ。そこに圧力を逃がせば、土台の歪みが止まる」


 フードの影から冷徹な眼光を放ち、シルフィが正確な「穴」を指差し指し示す。


「よし、セシリア! シルフィが示した隙間に【剛炎の楔(フレイム・アンカー)】を打ち込め! ガルド、お前はトラス補強用の太角を用意しろ!」


「「はいっ!!」」


 四人の動きには、一切の無駄がなかった。


 セシリアが手斧の刃先から放った四角い高密度の炎が、石組みの奥深くへ正確に滑り込み、高熱で岩肌と石を焼き固めて固定する。

 すかさずガルドが、自らの腰と足に「軸」を通した姿勢で、人間業とは思えぬ重量の木製筋かいを担ぎ上げ、土台の傾斜へガツンッと噛み合わせる。


 ズズズ……ッ、ピタリ。


 今にも崩れ落ちそうに悲鳴を上げていた巨壁の振動が、まるで最初からそうであったかのように完全に停止した。


「な……なんだと……!?」


「魔法で力任せに直したんじゃない……!? たった数本の木組みと小さな火の楔で、あの危険な石壁の過荷重が完全に逃げて止まった……!?」


 口をぐうの音も出ないほど半開けにして呆然とするベテラン石工たち。


「見たか、おっさんども。これが『正しく力を逃がす構造』だ」


 俺は鼻で笑うと、呆然とする石工たちの前に工程表を突きつけた。


「ボーッと突っ立ってねぇで手ぇ動かせ! 基礎の補強はガキどもが納めた。お前らは俺たちの指示通りに目地を詰めて表面を仕上げろ! 本日の施工目標まであと三時間だぞ!」


「は、はいっ! 現場監督殿!!」


 侮っていた職人たちが、今や俺たちの指示に敬礼して現場へ飛び出していく。


「義一さん! 次の工区の構造解析、準備できました!」


「おう! 怪我だけは絶対すんじゃねぇぞ。安全第一で次の現場を納めるぞ!」


 血と木屑の匂いが漂う現場で、俺たちの「王国突貫改修」は凄まじいスピードで進んでいくのだった。

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