第11章Bound by Blood【血痕】
「あんたってだいぶ偉そうな口叩くやんけ。さっきまであんな楽しく飯食うてたのに〜さみしいわ〜」
マルさんはクネクネ動きながらも身体から煙を出し続けた。
まるで俺と露木を威嚇するように。
いや、威嚇しているのだ。
「菫様!何度も言いますが、最高位の青龍に向かって力を振るうなど言語道断です!!そして何よりあなたはもう…!!」
「あぁ?力を出せないはずだって?」
菫の腕はメリメリと音を立てて人間の皮膚から硬く白い肌へ変わっていく。
艶やかで水気を帯びているがどことなく不気味で。
自分が持つ、鱗とはどこか違う。見下すわけではないが……どこか下品な光沢を放つ白い肌だ。
「17年前、天が俺に何したかわかってるんか?あぁ?」
興奮した息遣いが身体から出る煙をさらに大きくさせ、マルの見える範囲の肌はどんどん白く変化していった。
見たことがある。この質感は。
「蛇なのか……マルさん……」
「えぇ……マルとは彼のことでしょうか?彼は神庁が司る神、玄武の1人。菫様です」
「菫……」
「うっわ〜そのぽやーっとした顔!天にそっくりやな〜。嫌やわ〜痛いことされたん思い出すわ〜」
「菫様!何が目的でしょうか?すぐにその煙を出すのをおやめください!」
「はははっ!こんなんただの煙や〜大丈夫や、白蛇の毒は出てへんってちょっと登場にカッコつけただけや」
マルさん……いや、菫はヘラヘラ見せているが殺気を感じる。
露木と会話しているように聞こえるが、全て俺に向けての言葉だ。
とても……恐怖を感じる。
「あんな〜俺は亜について悪さは働いとらんよ。よー知ってるだけや。みんな澄を信用しとるけど、あいつおばはんから金まきあげとるの知っとるやろ?」
グッと露木は唇を噛んで、菫を睨みつけた。
なんの因縁があるか知らないが、とにかく相性が悪いことだけはわかる。
「そ〜んな亜のお薬でこ〜んな気持ち良くなったんやから、代償はつきもんやろ〜な〜おっさん?」
涎を垂らし、苦しみもがいていた男性の顎をグッと掴むと、キスしてしまうのではないかと思うくらい顔を近づけ、またニヤリと微笑む。
「あ〜これはだいぶきとるな。もう生きとんのが辛いやろ。追加してももう身体が持たん。何よりこいつ金もないで」
笑顔のまま、菫は男性の首を白く硬い皮膚で覆われた腕でグッと掴んだ。
男性はカハっと口から涎を出したが、抵抗する気力もないのか、そのまま高く持ち上げられてしまった。
「やめろおおおおおおおお」
俺は自分でもびっくりするような大声をあげて菫に近づけば、無我夢中で菫が高く上げた手を右腕でグッと掴んだ。
「っってえええええ!!」
菫は勢いよく、男性から手を離しその場にうずくまった。
隠しているが、菫の腕からは赤い血がだらだらと流れ落ちている。
そしてその血は、俺の手にもべっとりと付着していた。
「星様!!??」
露木が目を見開いて俺を見つめているが、男性を抱き抱えて介護している。
よかった。受け止めてもらえたようだ。
「お前……半分は人間のくせに……こんな爪先まで。最低や、天と同じ暴力型やな。よう似ている。最低やお前!!!!!!」
キャンキャン泣き喚く子犬のように、菫は唾を吐きながら俺に向かって怒り狂っている。白い肌に覆われているが、顔は焼いた石の様に真っ赤に染め上がっていた。
指摘されたので、ゆっくりと自分の手に視線を移すと、そこには見たことがない大きな爪が生えそろっていた。
そして爪先からは、おそらく菫の腕の皮膚を貫いた証である赤い液体がまとわりついていた。




