☆番外編☆COMPLEX
澄ちゃん目線の焔との日常?です
焔さん…HENTAIだぜぇ
俺のコンプレックスは手足だ。
詳細を伝えるとなると難しいが……全体的に肉付きが良い手、短い指、丸っこい爪。茶道をやっていると、どうしても手先が見られがちだ。
だから、この手はあまり好きではない。茶を点てる時、手先を見られると、茶器や菓子に似つかわしくない幼子のような手は不利だと思う。
研ぎ澄まされた空間には、ただ茶を点て、飲むためだけに集まった人間が、その馬鹿げた行為に全集中する。
息を吸う。
吐く。
また吸う。
皆が俺の手を見ている。着物に包まれた身体は、じんわりと熱を帯び、視線から身体を冷やそうと無駄に稼働した。
見られている……。そんなものはどうでもいい。どうせ意味のない行為だ。
「澄先生はよぅ……ちょっと集中力が足らねーんじゃねーの?」
パンッ、と乾いた音を立てて襖が開くと、大柄の男がドカドカと大股で茶室に入ってきた。
「きゃっ! 焔様!」
女どもは驚きつつも、歓喜の黄色い声を上げている。初心な振りをしながら身体をくねらせ、焔を見上げている。
「仕事中なんだけど。オッサン」
焔はガシガシと頭を掻いて「うるせーな」と減らず口を叩きつつ、どっかりと俺の前に座った。
繊細さとは無縁の顔立ちだ。太い眉、皺が刻まれた眉間、彫りの深い目。その瞳には赤々と炎が映し出されている。
瞳の中に映る俺は、炎の中で燃えていた。火が身体に飛び火したかのように熱い。火照っている。
見られている。ただ、それだけのこと。ただ、それだけのことが……。
――嬉しい。
焔の大きくて、お世辞にも美しいとは言えない雄の香り漂う手が、俺に伸びた。正確には、俺の手へ。
「ちっせーな。相変わらず」
大きな口を開けてガハハと豪快に笑ったかと思ったら、次の瞬間、俺の指先は粘膜に包まれていた。
ちゅぷ。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
「わっ! なんだ、いきなり!」
「いきなりはお前だ!! この変態火事鶏野郎!!」
「!? お前、指先ささくれてんじゃねーか」
俺は手を抱きしめるようにして、一気に焔から後ずさり、距離を取った。
バクバクバクバクバクバクバクバク。
心臓がうるさい。
女たちはポカーンとしていたが、起きた事態を理解したのか「キャーーー!」と鼓膜を突き破りそうな声を上げた。
「後で、足の指もしゃぶってやりゃあ」
焔は満足したのか、立ち上がり、鼻歌を歌いながら茶室を出ていった。




