1182話 どのような称号を得たとしても
「……あのさ」
ふと、タニアが口を開く。
どこか怯えている感じで。
どこか迷っている感じで。
いつもまっすぐで、どこまでも突き進んでいくようなタニアにしては珍しい。
「どうしたんだ?」
「えっと……ちょっと聞きたいというか、確認しておきたいというか。その……」
「うん」
焦らせてはいけない。
静かに待つ。
タニアは頬が赤い。
完全な暗闇ではないけど、月明かりしかないので暗いは暗い。
それでもはっきりと頬の紅潮がわかるくらい、熱がこもっていた。
「あのね」
「うん」
「……レインは小さい女の子は好き?」
「……え?」
ちょっと思考が停止した。
「今、なんて……?」
「だから、小さい女の子は好き?」
「えっと……」
質問の意図がまったくわからなくて答えることができない。
たぶん……
タニアの言う好きって、恋愛的な意味で、ってことだよな?
恋愛的な意味で小さい女の子が好き……
どう考えてもアウトじゃないか?
さすがにそれは……って、ちょっと待てよ?
世間一般では完全にアウト。
ただ、そんな常識、今更タニアが測るわけがない。
そもそも、タニアは今小さいわけで……
うん。
なんとなく話が見えてきた。
「それって、タニアが元に戻れなかった時は……っていう話?」
「……ええ」
やっぱりか。
コハネならなんとかしてくれると思うけど……
ただ、絶対に大丈夫、と言うことは難しい。
世界の管理者であるコハネでもできないことはあるだろう。
だからタニアは最悪の想像をした。
ずっと小さいまま、という未来を予想した。
そうなった時、俺がどんな反応を見せるか?
考えても仕方ないことだけど、考えずにはいられなくて……
それで怖くなったんだろうな。
「大丈夫」
「……ぁ……」
タニアの肩を抱いた。
絵面で見たらアウトかもしれないけど、今は気にしない。
というか、これからも気にしない。
「小さい女の子が好きってわけじゃなくて、タニアが好きだから」
「……レイン……」
「もしも、このまま小さいままだとしても、俺はタニアが好きだよ。ずっと」
「で、でも、それだとレインが……」
「変な目で見られてもいいよ。不名誉な称号というか、変に呼ばれても気にしない」
だって。
「それ以上に、タニアのことが大事だから」
「……っ……」
ありったけの想いを込めて。
この気持ちが届いてほしいと、まっすぐに言う。
タニアは小さく息を呑んで。
さらに頬を赤くして。
そして……
「……はふぅん」
「タニア!?」
ぐるぐると目を回して気絶してしまう。
どうしてこうなった……?




