1180話 そして、わりと俗っぽい
竜族の里は、一定の時期毎に場所を移す。
新しい場所、新しい気候。
そういったところに身を置いて、環境に適応……
そして、さらなる力を手に入れる、とか。
その際、ミルアさんは、だいたい里の中心に家を構えるらしい。
中心ならみんなのことがよく見えるよね、という、実にらしい理由。
一方で、グローヴェインは里の奥の奥。
隠れるように家を構えるらしい。
王者は気軽に姿を見せるものではない。
そんな考えから、人目につくところを避けているという。
そんなグローヴェインを慕う者達も奥に移動して……
自然と派閥の者同士で固まるという。
習性みたいだな、と思いつつ。
一方で、竜族にも派閥なんて存在したんだな、という驚きもあった。
竜族……というか、最強種はそういう俗っぽいものと関係は薄いと思っていた。
決闘前にグローヴェインの情報を集めて、彼が慕われていることを知ったけれど……
『派閥』なんてものができているとは、さすがに予想していなかった。
最強種。
でも、人間っぽい。
なんだかんだ、根源的なところは同じなのだろう。
それもそうだ。
俺達人間も最強種も、同じ人に……神さまに作られたのだから。
似るところは似るのだろう。
……ちょっと意外ではあったけど。
それはともかく。
グローヴェインの派閥が固まっている場所というのなら、わざわざ足を踏み入れる必要はない。
決闘に勝利して確執は終わり……なんてことにはならなそうだからな。
火に油を注ぐ真似になるかもしれないし、奥地は避けて、里の見回りを終えた。
それからミルアさんの家に戻り。
……家というか巣穴?
決闘の勝利を祝い、身内だけの宴が開かれて。
いつも通り、みんなは酔いつぶれるほどに飲んで。
訂正。
エーデルワイスとコハネはぜんぜん酔わないんだよな。
さすがというべきか。
で……
賑やかな時間が過ぎて、今度は静かな夜が訪れた。
「……」
外に出て、一人、夜空を見上げる。
山の中腹。
空気が澄んでいるからなのか、星空がとても綺麗だった。
宝石のよう……というか、宝石以上にキラキラと輝いている。
ずっと眺めていたいくらいだ。
「レイン」
聞き慣れた声。
そうすることが当たり前のように、隣にタニアが立つ。
ただ、彼女の姿を視界に収めるには視線を下げなくてはならなくて……
その違和感がちょっともどかしくも感じた。
「散歩?」
「そんなところかな。タニアも?」
「あたしはレインを追いかけて来たの。はい、これ」
タニアはマントを渡してくれた。
特製のものらしく、とても温かそうだ。
「夜は冷えるわよ」
「ありがとう」
受け取り……
ふと思い直して、タニアを引き寄せる。
「え、え」
「タニアも冷えたらいけないから」
互いの肩にかけて、一緒にマントをかぶる。
「こうしたらいいんじゃないかな?」
「ま、まあ……その……レインの好きにしたらいいんじゃないかしら?」
暗い夜だけど、タニアが赤くなっていることはちゃんとわかった。
照れているところが素直に可愛いと思う。




