1179話 わりと普通でした
翌日。
約束した通りに、グローヴェインは魔導具を持ってきてくれた。
しかも本人が。
決闘の敗者。
なればこそ、約束の品は当人が持って来るべき……と。
本当、妙なところで律儀なんだよな。
これで、どうして価値観があんなに歪んでいるのかが謎だ。
まあ、それでグローヴェインを信じるか信じないかは別の話。
魔導具に妙な細工がされていないか、まずはコハネにしっかりと調べてもらった。
結果、そのような細工はされていないとのこと。
壊れているだけ。
その損傷も自然なもとで、意図的に破壊されたわけではないとのこと。
そのままコハネに魔導具の解析を頼んだ。
珍しい品というだけあって、しばらく時間がかかるらしい。
待つ間、竜族の里を散策することに。
――――――――――
「って……なんか観光気分だけど、大丈夫なのか、これ?」
先頭を歩いて里を案内してくれているタニアに問いかける。
「別に問題ないわ。たまに外から旅人がやってくることもあるし、その時は普通に歓待しているし」
「けっこうオープンなんだな」
「あたし達竜族はプライドは高いけど、でも、プライド高い=他者を見下す、ってわけじゃないもの。むしろ、あたし達は強い! だからこそ弱者を保護すべきだ、っていう考えなのよ」
それはそれで……なんか危険な気もしたが。
まあ、タニアはそういう感じはしないし。
あえて野暮なことは言わないことにした。
「それに、みんなはあたしの仲間なんだもの。ってか、家族? だから、反対するヤツなんていないわ。仮にいたとしたら……」
「私が、ぐーぱんちをしてあげるよ!」
ミルアさんが、えへん、という感じで言う。
……たぶん、本当に殴るんだろうな。
そのあたり、タニアの母親なんだなあ、って思う。
その後も、思っていたよりものんびりと里を見て回ることができて……
「おー!? 食べ物のお店もあるんだね! にゃー……じゅるり」
「ふむ? なかなか興味深い魔法書があるではないか。どれ、我が手に取ってやるのだ」
「自分、他種族の里とか初めてなんで、かなり興味深いっす! じっくりこっきり探索したいっす!」
「なにやら視線を感じるな……ふむ。私のことを知る者がいるようだな? まあ、有名税と考えるか」
「……竜がいっぱい」
みんな、それぞれ異なる反応を見せている。
なんだかんだ楽しんでいるみたいだ。
ほんと、普通なんだよな。
人間の街並みとはぜんぜん違うけど。
たくさんの竜族がいるけど。
でも、表面上の違いだけ。
そこに街があり、仲間達で一緒に暮らしている。
穏やかな日々を過ごしている。
それは人間とまったく変わらないで……
根本的なところでは、人間も竜族も同じ『生き物』なんだ、って感じた。
「……うーん」
ふと、先頭を歩くタニアが足を止めた。
「どうしたんだ?」
「……里の案内はだいたい終わったから、そろそろ戻らない?」
「え。でも……」
確かに大体は案内してもらったけど……
里の奥の方はまだだ。
立入禁止の区画がある、っていうのなら、もちろん、無理に入るつもりはない。
ただ、タニアの様子を見る限りそんな感じはしない。
「……ここから先って、グローヴェインの派閥の連中がいる区画なのよ」




