1178話 小さいは正義?
グローヴェインとの決闘に勝利した。
彼とタニアの婚約はなし。
当初の目的の半分を達成することできた。
残り半分は……
「ちょっと! 元に戻せるかどうかわからないって、どういうことよ!?」
小さいタニアが怒りに吠えた。
がるるる、と犬が威嚇しているかのよう。
決闘の後、当事者だけで集まり、話を進めていたところだ。
怒りの矛先であるグローヴェインは、特に悪びれた様子なく答える。
「タニア殿に使用した魔道具は特別製なのだ。体の時間を遡らせることで能力を減衰させる……このような力を持つ魔道具はなかなかない。一度きりの使用で、以来、反応を示していないのだ」
「そんなよくわからないものをあたしに使うんじゃないわよ!?」
「なぜだ? 勝利のためならば、ありとあらゆる手を使うのは常識だろう?」
「そんな卑怯な手を使うとか、竜族としての誇りはないわけ!?」
「プライドを守るために敗北しては意味がないだろう。勝利のためならば、私はつまらないことにこだわることはない」
一見すると、かっこいいことを言っているみたいだけど……
でも結局は、勝つために手段は選ばない、っていうかっこわるいことを言っている。
やっぱりというか、グローヴェインはどこか歪んでいる。
真面目に見えて。
正義感があるように見えて。
でも、実際は思考や価値観が俺達とは決定的なところでズレていた。
……まともな話し合いは無理っぽいな。
「魔道具を使わず、タニアを元に戻す方法は?」
「わからない」
たぶん、本当だろう。
価値観が決定的にズレているものの、でも、こういうつまらない嘘は吐かないタイプだと思う。
「私達もよく知らない魔道具を、偶然、人間の街で手に入れてな。それを解析してみたところ、あのような効果があると知り、使用しただけだ」
「よく知らない魔道具を解析できたのか?」
「手に入れる前は、というだけだ。いくら人間が相手でも、商売の品を勝手に調べるわけにはいかないだろう?」
もっともな話だ。
こういうところは常識があるんだよな。
「その魔道具は?」
「一応、手元にあるが、もう起動しないな」
「もらうことは?」
「ふむ……まあ、いいだろう。キミは勝者だ。事前に魔道具を勝者の権利と設定はしていないが、それくらいは許可するべきだな」
「礼は言っておくよ」
もっとごねられると思っていたのだけど、わりとすんなり話が進んだ。
俺達に魔道具を渡しても意味はないと思っているのか。
それとも、タニアとの婚約が解消された以上、タニアを小さくしておくことに意味はないと考えたのか。
「ただ、少し後でもいいだろうか? 皆、私が敗北するとは思っていなかっただろうからな。色々と説明などをしなければいけない」
「……具体的に言うと?」
「今日は難しい。明日か明後日には届けよう」
「わかった、それならいい」
話はまとまった。
あとは、素直に魔道具を届けてくれることを祈るだけ。
あと、妙な小細工をしないことも願っておこう。
「では、また会おう」
グローヴェインが立ち去る。
決闘に負けたのだけど、最後まで余裕のある態度だった。
まだ次を考えているのか。
それとも、実はタニアのことはそこまで大事に思っていなかったのか。
……気になるな。
ただの男女の問題だけじゃなくて。
それ以上の『なにか』が動いているような……そんな嫌な予感がした。
「コハネ。魔導具の解析はできるか?」
「解析なら問題ございませんが……」
「直せるかどうかは別問題、ってところか」
「はい、申しわけありません」
「コハネが謝ることじゃないよ」
『機械』という未知の道具を扱うコハネなら解析は簡単だろう。
ただ、修理となると素材も必要になるだろうから、どこまでできるかは未知数だ。
そこはもう仕方ない。
「ってことは……下手したらあたし、小さいまま、ってわけ?」
「そうだね。でも、いいんじゃないかな?」
「なんでよ!?」
「えー。だって、小さいタニア可愛いだもん♪」
「ふぎゅ!?」
タニアはカナデに抱きしめられた。
それをきっかけに、他のみんなもタニアを抱きしめて、いいこいいこして、抱っこして……
「あたしを子供扱いするなぁあああああーーーーー!!!」
タニアの怒りの声が里中に響き渡ったとかなんとか。




