1177話 改革者
「……グローヴェインが負けた?」
竜族の里。
とある巣穴。
そこで交わされている密談は決して表に出ることはない。
「はい……とても信じられない話ですが、しかし、事実です」
「ふむ……相手はかの英雄と聞いていたが、そこまでの強者なのか?」
「私が見た限り、まだ余力を残していたように感じました」
「グローヴェインを相手に手を抜いていた……か」
「それと、トラップを無力化したようです」
「それも英雄の力か?」
「いえ……断定はできませんが、おそらく、仲間の方ではないかと」
「複数の最強種……しかも、我も知らないような最強種を仲間にしている、か」
「さらに付け足すのならば、未知の能力を使っていました。我々が用意したトラップに似ていますが、その性能は段違いかと」
「それは魔道具ではないのか?」
「ありえないかと」
「……そうだな。我ら竜族の目をごまかすことはできないだろう。そうなると、能力以外にないか」
「以上が結果報告となります。いかがいたしましょう?」
「……」
沈黙。
「……」
さらに沈黙。
「……邪魔だな」
長い沈黙の後、そんなつぶやきがこぼれた。
「と、いいますと?」
「ただ強いだけならいい。正義感が強いだけならいい。ミルア殿の娘の問題だけならいい」
「ならば……」
「しかし、そうはならないだろう」
膨れ上がる圧。
大気が震えて、世界が悲鳴をあげる。
ただ、それは一瞬。
すぐに圧は収まり、静けさが戻った。
「すまないな。つまらない未来を思い描いて、苛立ってしまった」
「いえ、謝罪などは……」
「とはいえ……このままでは、本当にその未来が実現してしまいそうだな」
「その未来というのは……?」
「……我ら竜族は覇者でなくてはならない。それが最強種というものであり、誇りであり、在り方なのだ」
「……」
「そして上に立つ者は、その責を負う。最強種とて、全ての者が強いわけではない。弱者もいるだろう。それを切り捨てるのは愚か者がすること。真の覇者は、弱き者を守る……それこそが務めである」
「まさにその通りかと」
「故に、改革をしなければいけない。現状の……このぬるま湯のようなつまらない世界はいらぬ。全ては、正しき姿にならなければいけない」
声に圧がこめられた。
それは実際に空気を震わせるほどに強く。
そして、その場にいる者を問答無用で従わせてしまうほど。
ただ、それに異を唱える者はいない。
不快に思う者もいない。
彼の発する言葉は正しい。
そう信じている故、異なる姿勢を見せることはない。
「今後、どうしましょう?」
「……ミルア殿の娘が手に入らないのは痛いな。適当な理由をつけて連中を引き止めろ」
「はっ」
「それと、グローヴェインをここへ。今後について話し合う」
闇の中。
小さく笑う。
「我ら竜族こそが覇者となるにふさわしい……そのことを知らしめなければならぬ」
◇ お知らせ ◇
新作はじめました。
『最強だけどバズりたくない陰キャダンジョン配信者と、放っておけないアイドル配信者』
二人の女の子のダンジョン配信ものです。
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