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ただのパパ活だと思ってたら御曹司に激重感情抱かれてました  作者: ふじのなごや


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17/26

17:戦略

楽しい時間はあっという間に過ぎていき、食事を終えて後片付けをし、アンジュの家の玄関先まで見送ってもらう。


「ごちそうさま。じゃあまた明日カフェで」

「また来てくれるんだ?」

「もちろん行くに決まってる」


この状況で行かない理由がないだろうと、言うとまたにこにこと笑ってくれるアンジュに、おやすみと手を振って扉を閉めた。

集合住宅の廊下を進み、エレベーターを通り越して階段に足を下ろすがフラフラとしゃがみ込んでしまう。


「あぁぁ〜……」


どこからとも無く出てくる悲鳴を、両手で顔を覆い受け止める。

言ってしまった。

人生で初めて告白をしてしまった。

アンジュは、嫌ではないらしい。

嫌ではないってなんだ。


「……。」


しかし浮かれてばかりもいられない。

一年以上、彼をこの家で待っているアンジュ。

ずっとひとりで大事に抱えていたのだろう。

夏の連休までに、どうにか振り向かせてやらないといけない。

だが2人が再会した途端、アンジュが攫われて、自分から去っていく可能性も大いにある。


時間が経つのを待つことしかできない訳ではない。

こちらはすでに開始している戦略を粛々と進めるだけだった。



◇◇◇◇



イーサンとの食事が終わった。

すっかり後片付けが終わって、またいつものひとりの部屋に戻っている。


イーサンはあの領収書を見て、その小売店に来てくれるのではと勝手に期待していたが、やっぱり来てくれた。

自分が少しずつまいた種に、ちゃんと応えてくれる。

臆病で不甲斐ない自分を否定したりしない。

駆け引きをしているようで、イーサンの好意をありがたく頂いていた。

心から優しい人なんだと思う。


ふと、今日使った買い物袋と折りたたまれた紙袋がキッチンカウンターに置いてあることに気がついた。

折りたたまれた緑色の紙袋。今朝イーサンに渡したランチの袋だ。

袋の中を覗いてみると、領収書を入れていた水色の封筒が入っていた。

封筒になにか書いてある。


「ごちそうさま。とても美味しかった」


くっきりとした筆圧で書かれていた。

封筒の中を見ると、領収書と紙幣が5枚。

大袈裟すぎる金額だった。

隣にあった買い物袋もしまう為に持ち上げると、カシャンと何かがシンクに落ちる音がした。


「…?」


カフスだった。

彼は手を洗った時に外れてしまったのだろうか?

少し考えたが、明日渡せば良いと思い、そっとカバンにしまった。



◇◇◇◇



翌朝、またいつも通りの朝が来る。

イーサンが入店し、アンジュが出迎える。

カウンターに案内され、コーヒーとサンドイッチを注文する。


「昨日の領収書の精算、ちょっと多すぎない?」

アンジュがコーヒーを注ぎながら尋ねる。


「いや、少ないくらいだ。取っておいて欲しい」

アンジュからコーヒーを受け取りながら、イーサンが言う。


お金のことはありがたい、ありがたいが、話は置いておいて。

「あと、カフスが落ちてたの。イーサンのだよね?」

エプロンから取り出したひとつのカフスをイーサンに見せる。


「ああ、アンジュの家に落としてたのか。また落とすといけないから、持っていてくれないか?」

そう言ってすました顔でコーヒーを啜る。


「そう?テイクアウト用意してるから袋の中に入れておこうか?」

昨日と同じ緑色の紙袋が出てくる。


「今日もランチを用意してくれてたのか?嬉しい。嬉しすぎてスキップしたらまたどこかにやってしまうかもしれない。やっぱり持っていて欲しい」

頼むよ、といつしか見た笑顔でお願いされる。


「なんか企んでる…?」

「いやいや」

「そう?」

「そう」


じゃあ、とまたエプロンのポケットにカフスをしまった。


しばらくして、オーナーが皿に乗ったサンドイッチを両手にいくつも持って出てきた。

今日のサンドイッチはホットサンドだった。


「おまたせー。ごゆっくりー」


そう言ってイーサンの前にホットサンドをサッと置き、別の卓へ足早に立ち去るオーナーを尻目にアンジュがヒソヒソと伝える。

「カラさんのチーズサンドすっごく美味しいよ」

確かシフトを変更してくれたオーナー、だっただろうか。

時同じくしてアンジュは来店客の対応で忙しくしはじめた。


イーサンはひとり小さな声でいただきます、と呟き、出来たてのサンドイッチを大きな口で頬張る。


「うま…」


アンジュの言う通り、とてもおいしいサンドイッチだった。

温かな口当たりの良いチーズとハムと食感の良いピクルス、塩気の中に甘みが感じられるハニーソース。

あっという間に食べきってしまい、会計に進むとアンジュがテイクアウトの紙袋を持ってきてくれた。


「今日も頑張ってね、いってらっしゃい」


ひらひらと手を振って送り出してくれる。

君が作ってくれた弁当を持って、見送られながら会社に向かうなんて。

大きな声で愛を叫んでしまいそうだった。



◇◇◇◇



今日もいつも通りまっすぐ出社し、自席でテイクアウトの紙袋を確認する。

今日も水色の封筒が入っていた。


「お疲れ様です。午後も頑張ってね」


昨日と同じく、メッセージカードが入っていたことが嬉しくて口元を緩ませた。今日は領収書が入っていない。

アンジュの手書きのカードをケースにしまい、空の封筒にいちばん大きい金額の紙幣を5枚入れる。

今日のランチはなんだろうか。

そういえば今夜の予定を聞きそびれてしまった。

また会いに行っても良いだろうか……。


出社して早々に帰宅のことばかりを考えながら、

テイクアウトボックスが入った紙袋をデスク脇にあるフックに掛け業務を開始した。


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