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ただのパパ活だと思ってたら御曹司に激重感情抱かれてました  作者: ふじのなごや


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13/25

13:月曜日


月曜日、また早朝のカフェに出向く。

アンジュから言い逃げしてから3日ぶりだ。


作られた映画の中に自分を重ね、ずいぶん泥酔した。

無駄な休日を過ごして怠けた身体は、月曜日が来ることを今か今かと待っていた。

彼女は今日も出勤しているだろうか。

なんと声をかけようか。

いつも通りの自分を出せるだろうか。



6時。

アンジュが店先に出てオープンの準備をしていた。


「おはよう」


イーサンの声に気がついたアンジュが振り返る。


「イーサン、おはよう!」


アンジュのいつも通りの笑顔に安心する。

先週は何事も無かったかのように。

ひとつに結ばれたブロンドの髪がふわふわと揺れる。

今日はどこか少し雰囲気が違うように見える。可愛い。


「今日は、忙しい?この後予定ある?」

アンジュから予定を聞かれて、不意を付かれた。

特にないと答える。


「今日の仕込み、私がやったの。朝食がまだだったらどうかなって」


思わぬお誘いに早速浮かれ始める。

それは是非食べたいと答えると嬉しそうに店内を案内してくれた。

カウンターに案内されて席に着くとアンジュがキッチン側へ入っていく。


「苦手なものある?」

「いや、なんでも食べる」


即答するイーサンによかったと笑うアンジュ。

外から降り注ぐ日差しがカウンターテーブルに反射して、アンジュの白い肌が輝いて見える。天使か。

しばらくして、そっと置かれた2切れの小ぶりなサンドイッチとコーヒー。


「お口に合うといいのですが……」


パセリのサンドイッチだった。

外はカリッと焼けたパンに、刻まれたたっぷりのパセリとハムがオイルと絡んで纏まっていた。

両手を合わせていただきます、と伝えるとアンジュに期待の視線を送られる。

サンドイッチを手に取り、大きな口でかぶりつく。


「うま…」


パセリ、こんなに美味いのか。

マスタードが効いていて食欲を唆る。

ハムの塩味とオイルの風味、そしてパセリの爽やかさが絶妙だった。

普段絶対に選ばないメニューだっから新鮮だ。

パクパクと食べ進めるイーサンを見てよかった、とアンジュが一言つぶやく。


「私はまだ食べてなくて、テイクアウトでランチに持っていくの」


テイクアウト…、ランチもアンジュの手料理が食べられるのか。

自分もテイクアウトで欲しいと伝えると、朝食と同じものになっちゃうからダメだと言われた。


「明日は別のものをちゃんと用意するから、明日も来てね?」


にっこり微笑むアンジュにたじたじになる。

他のお客が来店し始め店は騒がしくなり、アンジュはカウンターから出て対応に追われた。

その姿を目で追いながら、明日も絶対に行くに決まってるだろう。と脳内が悪態をつき始めてうるさくなる中、あっという間にサンドイッチを平らげてしまった。


コーヒーを飲み干し、ごちそうさまでしたと小さくつぶやき席を立つ。

そのままアンジュが待機していたレジへ向かったときにふと思い出した。


「ああ、そうだ。必要経費があればすぐにでも精算するから」

領収書は無くてもいいと伝えると、笑いながらわかったと頷くアンジュ。


「とても美味しかった、ありがとう。また明日」

そう言って手を振り店をあとにした。



◇◇◇◇



8時30分。

オフィスフロアには続々と社員たちが出社し始めた。

週始まりの朝の出社はなんだか気が重いが、普段の月曜日とは心持ちが少々異なる。


先週金曜日の夜、皆で酒を飲みながらイーサンの行動について擦り合わせた。

彼の指導者はマネージャーである俺の仕事だ。

俺は彼の指導者である以上、いくら仕事が出来ようが無理はさせては行けないし、程よくアシストして導かなければならない立場にある。


プライベートがなんだ、セクハラだと言われたらそれまでだが、最初の出だしは彼からの相談だったんだ。

ちょっとくらい突っ込んだ話をしても良いと思う。

女性に契約書まで書かせて援助交際するとは、何事か。

皆の気持ちを代弁すべく、マネージャーはイーサンの元まで颯爽と歩いた。

すでに仕事を進めていたイーサンの視線がパッと切り替わり、こちらに歩み寄ってくる。


「マネージャー、おはようございます」


先週とは打って変わって爽やかな彼に戻っているように感じる。

ついでに笑顔に磨きがかかっていて、顔には「ゴキゲン」と書いてある。


「おう、おはよう」


色々と意気込んできたものの、すっかり思考が飛び散る。

俺は彼の笑顔に弱い。

そんな俺をチームメンバーたちが目ざとく察知して視線を突き刺してくる。


「先週、すみませんでした。もう色々反省して吹っ切れたので、仕事頑張ります」

「おう、そうか」


イーサンに先手を打たれる。

何も言っていないのに、言って欲しいことを吐き出されたのでこれ以上がない。

反省してるなら、いっか!とチームメンバーに視線を送る。

が、ちょっと待て。

吹っ切れたってなんだ?


またアドバイスくださいね、と笑いながらイーサンは自席に戻って行った。

チームメンバーたちの視線がうるさい。


あの落ち込みっぷりから、吹っ切れた、とは。

色々と聞きたいことがあるがプライベートな内容だ。

言いたい事、聞きたいことがあるなら彼からアクションがあるだろう。

晴れ晴れとした彼の顔を見れば、過去の話を掘り返すのは良くないと感じさせられた。

マネージャーは手をヒラヒラと払うように動かして、チームメンバーの視線を散らし、その場をあとにした。



しばらくして、フロアに1本の電話がなる。対応者が慌てた様子で相談に来た。


「客先からフィードバックがありました。これ、どうしましょう…」


客の予算に合わせたサービス内容がキャパを超えてるらしい。

来月稼働に向けて続行するにはまず間に合わない。

先方の予算都合、稟議、各社のスケジュール調整、ちょっとやそっとじゃ埋まらない。

コンサルが甘かったか。


「僕が行きましょうか」


イーサンが名乗り出た。

大体こういう場面で攫っていくのはいつも彼だ。

正直助かる。大船に乗りたいところだが、しかし。


「仕事引き渡したばかりだろう、無理はするな」

「大丈夫です。昼には終わらせますので」


なんで昼なんだ、と疑問に思うも大体こういう時のイーサンはもうすでに始まっている。

彼はピンチの時でも怖いくらい楽しそうだ。


マネージャーからGOが出る。

何かあれば連絡を入れます、と一言イーサンが伝えたあと担当メンバーと二人でオフィスを立ち去る。


「とりあえず先方に担当が向かったと伝えてくれ」


マネージャーからの指示で残されたメンバーは電話を掛け、皆がそれぞれの仕事に戻った。



◇◇◇◇



あっという間に昼時が過ぎた。

今日は午後からのアポが控えてるがイーサンからの連絡はまだ無い。

出発の準備をし始めたころ、フロアの扉が開く。


「戻りました」

口々にお疲れと声をかけられる中をまっすぐマネージャーの所へ向かう二人の足音。


「おう、おかえり。どうだった」


イーサン達が戻ってきた。

ほっとするのもつかの間、報告を聞かねばならない。


「先方に不安材料をいくつか聞きまして」

「うん」

「うちの契約に関する予算はやっぱり稟議が必要なので間に合いそうになく」

「うん」

「先方の下請け企業を確認したら発注には若干余白がありそうだったんで」

「う、ん」

「下請け企業に出向いてランチ誘って」

「うん??」

「贔屓にしてる会社をいくつか紹介したら」

「うん…」

「やってくれそうな会社が出てきて」

「うん……」

「こちらの痛手もなく、解決できそうでした」

「う、うん……」

「ついでに1本契約とってきました。まだ口頭ですけど」

「……。」


ペラペラ話す彼が頼もしいを通り越して最早怖かった。

横に居る担当メンバーも訳が分からぬまま立ち合っているだけだった。

いきなり昼誘って食ってたらなんでそうなるんだ。

イーサン達に労いの言葉をかけ、フロアを後にする。


恋愛にその能力を使ってくれと切に願った。


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