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ただのパパ活だと思ってたら御曹司に激重感情抱かれてました  作者: ふじのなごや


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11/25

11:消沈


昨日に続いて、今日もイーサンが一番乗りで出社していた。


マネージャーは挨拶がてら声をかけようとしたところ、彼は見たこともない無表情でデスクに向かっていた。

近くによっても視線が動かない。

昨日に引き続き、別の意味で様子がおかしい。


昨日のランチミーティングで浮かれていたチームメンバーたちも続々と出社し始めたが、マネージャーのジェスチャーと必死の形相だけでイーサンの状況が伝えられた。

チームメンバーは顔を見合せ、静かに業務を開始した。



◇◇◇◇



はっ、とすると昼を回っていた。

業務に没頭しすぎて周りが見えていなかった。


フロアにほとんど人が残っておらず、残っているメンバーは電話をかけたり資料を読み漁っていたり忙しそうだった。

ランチを誘うのは辞めよう。


誰にも声をかけることなく、イーサンは昼を調達しにオフィスを出た。

近くの売店で適当な弁当を選び、オフィスフロアに戻る途中、

昨日ランチミーティングで会話したチームメンバーの男女2人に遭遇した。


「お疲れ様です、昨日はありがとうございました」


イーサンは軽く会釈し、昨日のお礼を伝えた。

チームメンバーの一人が、口を開いた。


「お疲れ。元気なさげだけど、大丈夫か?」


あー…と言葉を詰まらせるイーサンに、メンバーたちの視線が痛い。


「少しだけ、時間ありますか?」


イーサンは彼らをミーティングスペースへ誘った。



◇◇◇◇



あっという間に定時の17時。


まばらに退社する社員の中に、イーサンの姿があった。

マネージャーとの約束通り、定時で帰宅するようだ。


「お疲れ様です」


各デスクから、お疲れという声が聞こえる。

イーサンがフロアから退出するのを見届けて、マネージャーの背後にオフィスチェアごとゴロゴロとメンバーが集まる。


「マネージャー、報告です」


先ほど昼時にイーサンと接触したであろうメンバーの事を、皆で待ってましたと言わんばかりに振り替えり、耳を傾けた。

チームメンバーはミーティングルームでイーサンと会話した内容を細かく伝える。




――昼の弁当を持ったイーサンに呼び止められ、3人でミーティングスペースへ移動した。


イーサンと向かい合うように座り、テーブルに弁当を置いた彼は明らかに元気が無い。

食べながらで構わないと弁当をすすめると、イーサンは小さく頂きますと告げて、細々と話し始めた。


「昨日紹介してくださった国立公園、とても素敵でした」


ありがとうございました、とイーサンは続け、同席した女性がほっとした表情を見せた。


「彼女もとても喜んでました。でも、僕が調子に乗ってしまって、強引に彼女の手を引いてしまったんです。彼女、戸惑っていて」


案外赤裸々に話してくれるイーサンに驚きつつ、ただ頷くだけの相槌を送る。


「契約書に、サインをもらって、僕は浮かれてたんです」


はぁ、と深い溜息を吐きテーブルに頭をつけてがっくりと項垂れるイーサンに、同席していた男性が矢継ぎ早に言葉を発した。


「口を挟んで申し訳ない。…ところで、契約先は?契約内容は?彼女との関係は?」


ああ、と顔だけ傾けて目線だけ送ったイーサンはこう言った。


「彼女の、援助金の契約書で」

ひと呼吸おいてから「僕の、一目惚れなんです」と続けた。



◇◇◇◇



「……は?」



報告を受けたマネージャーは固まった。

そこに居た全員が混乱の表情を浮かべて黙ったまま動かなかった。

開いた口が塞がらないとはこの事だった。


スポンサー契約と言っていた彼の言葉を完全に履き違えていた。

てっきりメディア向けの企業担当者、イベントなどの契約かと思っていた。

ただの個人契約だったということか?

一目惚れでさっさとサインを迫ったと?

綺麗な花畑がある公園で?

あのイーサンが、援助契約?


「今で言う、パパ活ってやつですかね…」


報告していた彼から発せられた言葉を耳に入れたマネージャーは、眉間に皺を寄せた。

あんなに頭がキレる彼が、

あの容姿とステータスを持っている彼が、なんでそのカードを切ったのか。


援助金に契約書まで付けて一般人を囲ったのか。

彼女のために仕事を調整してまで会いに行き、全力で説得したのか、彼女は怖かっただろうな。

仕事人間が拗らせるとろくな事にならない。


イーサンのことを出来るやつだ、良い奴なんだと思っていた昨日までの自分に分からせてやりたい。


「まじでなにやってんだあいつ」


今日は金曜日、この肴を当てに酒を煽ろう。

フロアに残った残りのチームメンバーで団結して飲みに行くことにした。

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