36話 三度目は無い
牙鮫団が管理する倉庫に連れてこられた、ヘル。
「・・・なんで?」
~回想~
話し合いが終わると、トールは、団員たちに担がれ、下階の酒場に連れ去られてしまった。
「お前は、こっちだ」
不機嫌なローギルは、汚れた捨て犬を持つように、トールを運ぶ。
~現在~
合言葉を囁いて倉庫の鍵を開け、大きな扉を押し開く。
「トールから、話は聞いている…」
「鋭い観察眼と、豊富な知識で、起こり得る”未来を予知”する事が出来るとか」
「…うん⁉」
未来予知が出来るなんて間違った情報、誰が伝えたの?
まぁ、色々な事件を未然に防いだのは、事実だけど(照れ)
おそらく、フール・アルバートの一件を、トール兄様が色々つけ加えて、話したのだろう…
倉庫に入り、棚と棚の間を、奥に進む。
掃除が行き届いた棚には、番号が付けられた装備品と戦利品が綺麗に並んでいた。
「細かい・・・いた!」
横を向いて歩いていたヘルは、足を止めたローギルの太股に、顔面を強打した。
「…気をつけろ」
厳重に封を施された木箱から、無色透明の液体が入った小瓶を取り出す。
「これが、ミノタウロスに使う毒だ」
木箱を倉庫番に預けたローギルは、背を屈ませて、小瓶をヘルに手渡した。
「へぇ~これでミノタウロスが倒せるの?」
倉庫番とローギルは顔を合わせて、表情を曇らせる。
「やはり…この量では足りないのか…」
「え、いや・・・」
単純に、毒の使用方法を知りたかっただけなんだけど…
「追加の在庫は、いつ届く?」
頭を抱え、返答に困る、倉庫番。
「それが…特殊な材料を使う毒ですから…」
「花?」
「この毒は、過酷な環境でしか開花しない白い花から、特別な方法で抽出した毒の成分を、アルコールと混ぜ合わせて作られている」
「白い花…白い花…花?」
「花に、心当たりがあるのか?」
「う、ううん!無いよ…」
ま、まさか…ね?
ヘルの手から離れかけた小瓶を、ローギルが掴み支え、ヘルの手に戻す。
「・・・気をつけろ。抽出された毒は、気体に変わる」
「アルコールと混合わせることで、液体の状態を保ってはいるが…」
「小瓶を割り、気化した毒を一息でも吸えば、一発で”あの世逝き”だ」
「あの世⁉」
恐怖に震えるヘルの手から、再び、小瓶が滑り落ちる。
落下する小瓶を、地面すれすれで掴み取った、ローギル。
眉間に皺を寄せ、ヘルを睨む。
「だから!何度、言えば、わかるんだ⁇」
「・・・はい」
怒ったローギルは、隙間から入り込んだ猫を摘み出すように、ヘルを倉庫から叩き出した。




