37話 不穏な雲行
ローギルと別れ、酒場で呑むトールを迎えに来た、ヘル。
「トール兄様・・・」
物があちらこちらに散乱して荒れ果てた店内…
客は誰も居なくなり、真ん中のテーブルで大の字になって眠るトールと、壁に頭が突き刺さった牙鮫団の団員(あと、床で眠る牙鮫団員)だけが残されていた。
・・・逃げよう!
この惨劇を、ローギルに見られたら…絶対、怒られる
トール兄様が、酒場を出禁になるのは構わないけど、
明日の討伐が、白紙になることは避けたい
「トール兄様!起きてください!」
突然、トールは目を開き、上体を起こす。
「・・・ヘル・・・逃げるぞ!」
「え、ちょっと・・・」
何か忘れている気がするけど…今は、この場を去ることが最優先!
トールに手を引かれ、ヘルは酒場を後にした。(出入口のホールスタッフは気絶させました)
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~翌朝~
鎧で身を固めたヘルとトールは、重い足取りで、集合場所(酒場近くの城門)へと向かっていた。
「遅かったじゃないか~ヘル」
出迎えたローギルの顔は、明らかに笑っていない。
「ご、ごめんなさ・・・あれ?」
いつの間にか、並んで歩いていたはずトール兄様は、姿を消していた。
トールが逃げたことは気にも留めずに、話を続ける。
「急で悪いんだが、討伐隊の追加メンバーを紹介したい」
「追加?」
『俺達!百鯨団‼』
ボロスが中心となり、扇形に広がった百鯨団が、ポーズを決めて登場する。
「聞いたことの無い団名だと思うけど、一応、Aランクパーティーだ。道中の護衛に参加してもらおうと思う。問題無いかな?」
「う、うん…」
知ってる人達です…
『だ、だ、団長!あれって・・・』
『うん?あ、あ、悪魔⁉聞いていないぞ、ローギル⁉」
「知り合いなら、話が早い。護衛の追加料金は、後で請求するからね?」
威圧感のあるローギルの顔には、お店の修繕費だと書いてある。
「…はい」
とばっちりを受けたヘルは、ゆっくりとボロスの顔を睨みつける。
『ひぃ…そ、そういえば俺たち、積み荷の確認をするんだったよな?』
『は、はい!確認だった…ですね』
怒りの矛先が向けられた事を察知した百鯨団は、慌ててその場を離れた…
「あ、逃げられた…」
「ヘル様…ヘル様…」
耳元に囁く声…を、無視する、ヘル。
「ヘル様!クラストです」
積荷を乗せた馬車の影から、クラストが顔を出す。
完全に忘れてた・・・
そういえば、冒険者ギルドを出て以来、声を聞いていなかった…
「どうしたの?」
「ヘル様…お耳に入れて頂きたい情報が…」




