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操り人形の王  作者: 真知コまち


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35/37

35話 度胸がある若者は、時に寡黙な大人を巻き込む


 「よし。引き受けよう」

  何の迷いも無く、即決で返答した、ローギル。


「待て!今のは冗談だ…忘れてくれ…」

 生じた迷いに、目を閉じて首を横に振る、トール。


 「駄目だ!引き受けた依頼を、反故にしたとなれば、牙鮫団の名に関わる」

 「王族ならば、自身の発言に責任を持て!」


「…たかが、口約束だ」


 「た(・)か(・)が(・)口約束にするつもりは無い…聞いているんだろ?入れ!」

 

 扉の向こう側で慌てふためく、無数の足音。


  「し、失礼します」

   扉に耳を当てて、盗み聞きをしていた団員たちが、列を成して入室する。


「”証人が居る”と言いたいわけか・・・」


 「…部屋の会話、聞いていたな?」

  怒られるのか、褒められるのか、分からない状況に、団員たちは、身の危険を感じて、ローギルから目線を逸らす。


 「…誰か!応えられる者は居ないのか?」

  団員を睨む、目の圧を強める。


   団員たちが発言に脅える中、一人の若手団員が手を挙げた。

  「はい!聞いていました」

  

 立ち上がったトールは、剣柄に手を掛け、若手団員に詰め寄り、殺気を放つ。

「噓は…吐くなよ…」


 「そうだよ。王族への無礼は、死罪だからね?」

 

   自分の置かれた状況に気づき、身を震わせて硬直する、若手団員。

  「・・・ろ、廊下で、お二人の過去《わるぐち》を、皆さんが笑《はなし》ていました!」


 沈黙を貫いていた老団員たちは、一斉に跳びかかり、若手団員の口を塞ぐ。 


「…どうやら牙鮫《うち》の団員は、躾が成っていないようだ」

 口角を少し上げた不気味な笑みを、縺れ倒れる団員たちに向ける。


 「団員の無礼も含め、今日の話は、無かった事にしてほしい…」

  腰を上げたローギルは、自ら、部屋の扉を開けて、二人に退出を促す。

 「話は以上…どうぞお帰り下さい」


 しばらく、下を向いて沈黙していたトールは、ヘルの顔を見て、口を開いた。

「明日だ…」


 「はあ?」


「明日、ミノタウロスの討伐に出る。その条件が飲めるのなら、天啓《じょうほう》の開示を約束する」


 「無茶を言うな。こちらにも、色々と準備《じじょう》が・・・」


「…出来ないと?」

 言い訳を陳べるローギルに、侮蔑《ぶべつ》した目を向けて、せせら笑う。


 「な・・・うん?」

  分かりやすい挑発に、一瞬、動揺《いかり》を見せたローギルだったが、一度、心を落ち着かせて、トールに睨み目を返した。 


「…出来ないのか?」

 一瞬の動揺を見逃さなかったトールは、畳み掛けるように煽る。


  冷静な心を取り戻したローギルは、表情を一切かえない。

 「・・・おい。毒《よび》の在庫は、どれぐらいある?」


   思いもよらない質問《でばん》に、反応《へんとう》が遅れる、倉庫管理係の団員。

  「・・・え!いや~巣の規模が分からないと、なんとも…」


 「見張り番のミノタウロスに使う分があればいい…」


  「それぐらいでしたら…多分…」

   曖昧な記憶を頼りに、在庫数を導き出して、頷いて見せる。


 「トール…交渉成立だ!」


 互いに、不安を募らせた表情のまま、二人は、力強い握手を交わした。

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