34話 沸点と接点
グラスの破片が散乱した床に滴る血。
「今日は、弟の保護者で来ただけだ」
落ち着いた様子のトールは、後ろに居るヘルを見るように、目配せを送る。
「保護者?」
顔を上げたローギルは、ぎこちない笑顔で佇むヘルと目が合った。
ゆっくりとヘルに近づいて、地面に膝を付ける。
「悪いな…怖い思いをさせて・・・」
ヘルと目線を合わせ、出血していない手で、頭を優しく撫でた。
び、びっくりした~
殺されるのかと思った~
見た目は、怖いけど、根は、優しい人なのかな?
「…これ、あげる」
グルダから貰った飴玉を、ローギルに手渡す。
手の中の飴玉を見て、ローギルの瞳孔が開く。
「・・・どういう意味だ、トール⁈」
険しい顔に戻ったローギルが、握った飴玉を、トールに叩き投げる。
え?なんで?怒らせてちゃった?
あの飴玉…そんなに美味しくないのかな?
「…トール兄様?」
助けを求めるヘルの目を見て、何かを悟ったように頷く。
「ローギル、弟の話を聞き入れてもらえるか?」
トールの強気な態度に、ローギルは、怒りを露にする。
「変わらないんだな、王族ってのは・・・」
トールを睨み、感情を押し殺した声で呟く。
「…おい!」
ローギルが手を叩くと、重装備を着た牙鮫団員が、店の奥から現れた。
「よぉ!トール!久しぶりだな。元気にしてたか?」
「一ヶ月…いや、二ヶ月ぶりか」
「酒だ!酒!酒を持って来い!」
トールを取り囲んで盛り上がる、団員たち。
その様子を見て、ますます機嫌が悪くなる。
「お前ら…いい加減にしろよ…」
「・・・」
ローギルに睨まれて沈黙する、団員たち。
「まぁ…詳しい話は後だな・・・」
ヘルとトールは、牙鮫団に囲まれて、大きな円卓テーブルが置いてある、お店の二階の部屋に移動した。
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横柄な態度のローギルは、足をテーブルに乗せ、椅子にふんぞり返って座る。
「で、願いは?」
引いた椅子に、ヘルを椅子に座らせる、トール。
「ミノタウロス討伐を、手伝ってほしい」
「何を頼まれるのかと思えば、普通の依頼…うん?手伝う?討伐の依頼ではなく?」
「”討伐”ではなく、”協力”の依頼だ。牙鮫団には、ヘルの護衛にまわってほしい」
「僕も行くの⁉」
「子どもを連れて行くだと⁉」
椅子を倒して、同時に立ち上がった、二人。
立ち上がったヘルの姿を見て、険しい顔で長考する。
「…だめだ。子どもを連れて行けるような、安全な場所ではない」
一つ、ため息をついたトールは、首を傾げて迷いながら、口を開いた。
「報酬は・・・”天啓の情報”でどうだ?」




