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操り人形の王  作者: 真知コまち


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34/37

34話 沸点と接点


 グラスの破片が散乱した床に滴る血。


「今日は、弟(ヘル)の保護者《つきそい》で来ただけだ」

 落ち着いた様子のトールは、後ろに居るヘルを見るように、目配せを送る。


 「保護者?」

  顔を上げたローギルは、ぎこちない笑顔で佇むヘルと目が合った。


 ゆっくりとヘルに近づいて、地面に膝を付ける。

「悪いな…怖い思いをさせて・・・」

 ヘルと目線を合わせ、出血していない手で、頭を優しく撫でた。


   び、びっくりした~

   殺されるのかと思った~

   見た目は、怖いけど、根《こころ》は、優しい人なのかな?

  「…これ、あげる」

   グルダから貰った飴玉を、ローギルに手渡す。


  手の中の飴玉を見て、ローギルの瞳孔が開く。

 「・・・どういう意味だ、トール⁈」

  険しい顔に戻ったローギルが、握った飴玉を、トールに叩き投げる。


   え?なんで?怒らせてちゃった?

   あの飴玉…そんなに美味しくないのかな?

  「…トール兄様?」

  

 助けを求めるヘルの目を見て、何かを悟ったように頷く。

「ローギル、弟(ヘル)の話《ねがい》を聞き入れてもらえるか?」

  

  トールの強気な態度に、ローギルは、怒りを露にする。

 「変わらないんだな、王族ってのは・・・」

  トールを睨み、感情を押し殺した声で呟く。


 「…おい!」

  ローギルが手を叩くと、重装備を着た牙鮫団員が、店の奥から現れた。


   「よぉ!トール!久しぶりだな。元気にしてたか?」

   「一ヶ月…いや、二ヶ月ぶりか」

   「酒だ!酒!酒を持って来い!」

    トールを取り囲んで盛り上がる、団員たち。


  その様子《かんげい》を見て、ますます機嫌が悪くなる。

 「お前ら…いい加減にしろよ…」

  

   「・・・」

    ローギルに睨まれて沈黙する、団員たち。

   「まぁ…詳しい話(さけ)は後だな・・・」


 ヘルとトールは、牙鮫団に囲まれて、大きな円卓テーブルが置いてある、お店の二階の部屋に移動した。


────────────────────────────────────


  横柄な態度のローギルは、足をテーブルに乗せ、椅子にふんぞり返って座る。

 「で、願いは?」


 引いた椅子に、ヘルを椅子に座らせる、トール。

「ミノタウロス討伐を、手伝ってほしい」


 「何を頼まれるのかと思えば、普通の依頼…うん?手伝う?討伐の依頼ではなく?」


「”討伐”ではなく、”協力”の依頼だ。牙鮫団には、ヘルの護衛(サポート)にまわってほしい」


  「僕も行くの⁉」

 「子どもを連れて行くだと⁉」

  椅子を倒して、同時に立ち上がった、二人。


  立ち上がったヘルの姿を見て、険しい顔で長考する。

 「…だめだ。子どもを連れて行けるような、安全な場所《いらい》ではない」


 一つ、ため息をついたトールは、首を傾げて迷いながら、口を開いた。

「報酬は・・・”天啓の情報”でどうだ?」

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