嘘つきの結果
目が覚めると……はいはい、いつも通りロープで拘束されてるんでしょ? 分かってますよ。他の書き出しないんですか? と思いつつも、体を伸ばそうとしてしまう。
もちろん拘束された状態で体を伸ばそうとすれば、椅子ごと倒れてしまうわけだが。
「……あれ? 体が伸ばせr」
俺は衝撃的なことに気がついた。それは拘束されていないということも含まれるが、一番は天井を見るように俺が寝そべって寝ているという事実だ。
「……何が起こっている?」
俺は起き上がり周囲を見渡す。右を向いたとき、俺の隣にはエナがスヤスヤと寝ていた。
「ブッハ!!」
俺はその事実で血反吐を吐いた。
C分後 テーブル
今日の朝食の雰囲気は最悪だ。いつもの食事は、俺と2号の口喧嘩で盛り上がるはずなのに、今回は全員沈黙である。
2号は昨日のライブを見ることができず、そのせいで息をしていない。エナは俺の方をチラチラ見て、少し頬を赤くしている。俺はというと、ライブを見れなかったショックとエナに告白まがいなことをした後悔、そして今日なぜかエナと一緒に寝ていたという謎に包まれていた。
一体昨日、ライブ会場で意識がなくなった後何があったんだよ。何がどうなれば、怒りっぽいエナの隣で寝てるんだ。
俺はそんな疑問を抱えつつ、エナの方をチラリと見る。その一瞬でお互いの目が合う。
「「…………」」
気まずい……。エナが顔を赤くするからより一層気まずいわ! なんとなく原因は分かってるけど……。
俺は隣で息をしていない2号に小声で声をかける。
「(おい起きろ2号。エナの様子がおかしいんだよ)」
俺が声をかけるも彼は無反応だ。
チッ……急を要するのに。この手でいくか。
俺は再び小声で2号に囁く。
「(おい外見てみろ。あれキカ様じゃないk)」
「どこだ!!! どこにキカ様がいる!!」
バンッ!! とテーブルに手を叩きつけ、すごい勢いで2号が起き上がる。
こ、こいつ。嘘なのにこんな単純に騙されていやがる?!
「おい! 早く教えろ! フウタ!!!」
「……いや、その、あの、そ、外の雲が……キカ様に見えたなぁー。な、なんて……?」
俺が目を泳がせつつ2号に言う。彼は、そうか分かった。と言って、トイレに行くと俺に言ってきた。
ふー、アイツには悪いが、無理矢理起こさせてもらった。しかしエナのこの調子はどうも狂う。2人で作戦でも立てるか。
俺がぼんやりと考えていると、リビングのドアが開いて、トイレから2号が帰ってきた。
「お、おう。随分早かったn……へ?」
そこには刀を構え、血の涙を流しながら俺を見る2号がいた。
「…………あ、あ、に、にご……ヒロト……さん?」
俺は彼に何が起きているのか、頭をめぐらす。その間に彼は口を開く。
「貴様は重罪を犯した。キカ様を蜘蛛と言うのかァ?!! その罪、死で償えェ!!!」
「あ、アホ! そりゃ……」
「問答無用!!!!」
雄叫びを上げ2号が俺に突っ込んでくる。俺はその恐怖から目を逸らすために、窓の方を見る。
……なんでこいつは、雲と喩えたことでここまで切れてるんだ??
俺は窓を見る。その窓の外には、奇跡的に綺麗な雲が空を舞っていた。そう窓の外はだ。しかし、窓に黒い虫がくっついているのが見えた。それは、蜘蛛であった。
同音異議かよ!!!!
同音異議を間違えた男、2号が鞘から刀を抜こうとした刹那、エナが大きな声で言う。
「やめなさい2号!!!! わ、わ、私の1号を傷つけるようなことは許さないわ!!!」
「「……………………わ、私の??」」
その言葉を聞いて、2号は動きを止める。俺も彼も頭が真っ白だ。
エナはそんなことなど気にもせず。
「ええそうよ。だ、だっ……て、わ、私……フウタに……こ、こ、こくhk ……(ゴニョゴニョ)」
ダァーーーと、その言葉を聞いて俺は汗という汗が流れ出た。
なんだそう言うことか。と2号は呟き、俺を見てニヤニヤし始める。
俺は何も考えラレナクナッタ。
そこから先の食事の雰囲気はもっと最悪だ。
先程より俺をチラチラと見る回数が多くなったエナ。そのチラ見をされ、心臓がバクバクする俺。その様子を見てニヤニヤ笑う2号。
なんて居心地が悪いんだ。やはり……昨日恋愛好きなエナに、告白まがいなことをしてしまったことが原因か……。どうすれば良いんだ?
俺はニヤニヤ笑う2号に、耳打ちをする。
「(なぁ、頼むよ。この状況から俺を救ってくれ)」
すると2号は、ニターとゲス笑いな顔を浮かべ。
「(自業自得だ。馬鹿野郎。せいぜい1人で苦しめよ。ハハハ、ギルドの奴らに報告するのが楽しみだ)」
「(な、何てことを!!! 頼む! それだけはやめて下さい)」
「(どうしよっかなぁー)」
このくそゲス変態野郎!!
俺が焦っていると、エナがいい? と言って話を始める。
「大事なお話があります」
ドワァーと俺は再び汗を流し始める。
ま、まさか、俺が告白したことについて ……か?
「(ヒュー、ついにきたな1号)」
口笛をして俺を煽る2号。そんなのを気にせずにエナは口を開く。
「とても言いにくいんだけど……」
ゴクゥ。俺はツバの飲み込む。これが本物の緊張なのか。先程から貧乏ゆすりが止められない。
「……今月お金が厳しいです」
「「……………………は??」」
俺の汗と貧乏ゆすり、2号の口笛、そして思考が止まった。
「……アンタたちのおかげでクエストでお金は稼げるようになったんだけどね。アンタら分の食費が増えたことで、意外とお金……マイナスなのよ」
その言葉で思考が停止していた2号が口を開く。
「ンなわけあるか!! 毎日毎食モヤッシーで我慢してんじゃねーか!!」
あの野菜の名前モヤッシーっていうのか。
「何よアンタらが食べ過ぎなのよ!! なのになんでそんな太らないのかしら!!」
「あんなのいくら食っても太らねーよ!!」
「あー! 今私に喧嘩売ったわね?!」
「ふ、てかモヤッシーばっか食べてるから、大事なところに栄養行かないんじゃないですか?」
「アぁ? テメー今言っちゃいけない事言ったなぁ?! この青髪変態がよ!」
そんな2号とエナの口論を聞きつつ、俺は安堵する。体の力は完全に抜けて、脱力している。
あーーーー。良かった。告白云々のこと言われると思ってたけど……何もなかった。マジで良かった。
そんな安心しきっていると、
「この貧乳がぁ!!! 頭にきた! 1号がテメーに告ったことで、1号のこと意識しちゃってること、ギルド中に言いふらすからな!!」
「…………………………………………え?」
俺は椅子から転がり落ちた。
D時間後 ギルド
俺はこの施設の端っこで、1人さめざめと泣いていた。その隣には、この騒動の大元凶2号が立っていた。
ギルド中は、受付のお姉さんも含めて俺とエナの話題で盛り上がっていた。
「…………すまなかったとは思っている。……まさかここまで話題の拡散が早いとは」
2号は俺にそう謝ってくるが、俺の心には届かない。
冒険者たちが俺を見て、
「おい、あの変態らしいぞ。エナに告白したのは」
「あのパンイチがぁ?! 月とスッポンだろ」
「いや、俺はアイツの友達だから言えるが、アイツはいつか告白すると思っていたね」
そんな会話が聞こえてくる。しかしこれはあくまでレベルの低い会話だ。ギルドの違う方向からは、
「フルさん! 私ライト新聞社のタミネです。今回の1号さんが、エナさんに告白した件についてどう思われますか?」
「アイツらはうまく行くと思いますよ。それに彼ら、同棲してるだけじゃなく、お風呂で会うレベルですからね」
「ほ、本当ですか??」
「ええ。結構有名ですけどね。へへ」
「ご、号外だぁ! 号外を出せ!!」
そう。新聞にこの件で書かれることになるようだ。人生の初の新聞デビューです僕。
流石にこれに関しては、2号もバツが悪そうだ。
「……いや、ほんとに申し訳ないと思っている」
もう1人の当事者であるエナはというと、主に女性冒険者たちに囲まれて、付き合うの? あの変態のどこがいい? などと質問されている。
「あ、あの、そ、その、わ、私は……」
彼女も彼女で困っているようだ。そんな俺の泣いている様子や、エナの困っている様子を見て2号が頭をポリポリかく。そしてひっそりとクエスト掲示板の方へ歩いていく。
その前で少し悩み、一枚の紙をちぎって受付のお姉さんへと渡す。
その紙を受け取ると受付のお姉さんは、見る見るうちに青ざめて、
「え?? 本当に受けるんですか?」
と大きな声を上げた。
その声で今まで俺とエナの話題に夢中になっていた人も、そちらへと意識を向ける。
なんだ?なんだ? と新聞社の人までも受付の方へと歩き出す。
俺も流している涙を吹き、そちらの方へと意識をむける。
「ああそうだ。俺たちはこれを受ける」
2号が受付のお姉さんにそう言うと、
「ヒュ、ヒュドラのクエストが受注されました!!!」
大声でお姉さんは叫ぶ。
「「「な、なにー?????」」」
ギルド中が瞬く間に騒ぎ出す。
騒ぎ出す群衆を気にせずに、2号は俺たちの方を向く。
「ってことだ! エナ! 1号! ヒュドラを狩りに行くぞ!!」




