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この眼の名前は!  作者: 夏派
三章
15/22

パンイチ2人、金を稼ぐ

 雨ッッ!!! 大雨が降る中、俺とヒロトはギルドの外に放り出されていた。


 何が雨ッッだよ、効果音もっと他にもあるだろ。


 俺はそんなことを考えつつ、隣のヒロトを見る。


「おいフウタ。ライブは明日だ。同士のお前は、俺のチケットで一緒に入れるから安心しろ。それより、エナは俺たちをギルドから追い出すほどには怒っているからな。午後の時間全部使って、金を稼ぐぞ」


 そうなのだ。俺たちキカ様同盟は、ギルドで盛大に騒いぎ、エナの共感性羞恥を刺激してしまった結果、彼女に怒られ外に摘み出されたのだ。だが今はそんなことはどうでも良い。


「ああ稼ぐぞ。キカ様のためになぁ! そういえばお前、ライブのチケットはどこにあるんだ?」


 俺の素朴な疑問に対して、ヒロトはくくくと笑い、おもむろにパンツの中に手を入れる。


「お、お前……まさか……」

「ふ、そうだ。何があっても平気な場所である、この中に俺は保管していたのだ!!」


 そんな変態宣言をして、パンツの中から透明な袋にパックされたチケットを取り出した。


「どこに入れてるんだよ!!」

「ふふふ、お前はここから出したことにビックリしているだろうが、こんなのは良くある事だ」


 良くあってたまるか。と突っ込もうとしたらヒロトは会話を続ける。


「よくドレスの谷間から物を取り出す女性がいるだろ? それと同じだ」

「同じなわけあるか!!」


 コイツはとんだ変態のようだ。


 そんなことを考えていると、ヒロトが傘を開いた。それはエナの家にあるボロい傘で、一本しかないため俺たちはいわゆる相合い傘をしてきたのだ。


 そう。パンイチ2人で相合い傘だ。


 おっと待ってくれ。変な妄想はするな。これはギャグであり、そっち系ではない。


「おいささっと入れフウタ。金を稼ぎに行くぞ」


「お前と同じ傘にはもう入りたくはないが、キカ様のためだ。背に腹は変えられん」


 そう言って、パンイチ変態と再び相合い傘をして、大雨の中金を稼ぎにいく。


 どうか、コイツとの変な妄想をされませんように。





 A時間後 ギルド


 ギィーと、俺たちは力なくギルドの扉を開ける。


 ギルドにいる人たちが俺たちの格好を見る。


「「「キャャャャャャャャャャャャャ!!」」」


 そんな叫び声が聞こえたが、何も感じなかった。


 フルとシリが俺たちに近づいてきて、小声でこう言う。その手にはお金が握られていた。


「(その姿を見れば、お金を稼げずに酷い目にあったことくらいわかる。奢ってやるから、風呂にでも入ってこい)」

「(気にするな。それよりも今はお前たちの精神が心配だ)」


 俺たちは無言でその金を受け取った。


 フウタことパンイチ2号と、ヒロトことパンイチ1号は、温泉施設へとトボトボと歩んだ。


 自分らの紹介文すら、ごちゃごちゃになるくらいには、頭は停止していた。


 無心で体中を洗い、湯船に浸かって、俺はさっきあったことを思い出す。


 最初にヒロトと向かった場所は、魚屋だ。ここでお金を稼ごうとしたのだが、店主に「新鮮味が売りなのに、汚い格好でここに近づくな!」と一蹴された。


 次に向かったのは、レストランだ。しかしここでもオーナーに、「パンイチにエプロンなんて、違う店と間違えられるだろ!!」と一蹴された。


 それから何店舗にも行って見たが、全部俺たちを一蹴する。特に服屋では、「この街の恥」ともまで言われた。


 最後の希望で、倉庫での作業に向かった。服装なんて関係ないからだ。しかしその前に色んな店で言われたことが、心に来ていたのか作業にも集中できず。箱に入っている海藻をこぼしたり、卵を割ったり、飼育用モンスターを逃してしまったりと、大失敗をした。挙げ句の果てには、この損失を払ってもらうぞと、給与ではなく請求書を貰ったのだ。


 そこからはどう、この湯船に行ったことすら覚えてない。


 俺たちはお互いに無言で、湯船に暖まっていた。


 ライブの服装どころかじゃないな。この借金どう返そうか。


 などと物思いにふけていると、隣の女湯から悲鳴が聞こえた。


 俺たちは横の女湯と男湯を分ける壁を見る。


「何があったんだろうな」

「分からん。ただ俺たちの現状よりマシだろ」


 そんな覇気のない会話をしていると、聴き馴染みた声が聞こえた。


「な、なんのよこれ!! 誰か……助けてぇ」


 エナの声であった。強い彼女が助けを求めるとは何事か。


 そんな時、俺とヒロトの脳裏にあるアイデアが降り落ちる。


 !!!! そうかこうすれば。


「おい! 行くぞ」

「ああ! その顔、お前も同じことを思いついたんだな」


 俺たちは同時に言う。


「「エナを助けて、その謝礼で服を買うぞ!!!」」


 俺たちの目に覇気が戻る。


 そうと決まれば、俺たちの行動は早かった。他の男性客が、その場にとどまっている中、俺たちは壁の下まで行く。その壁の高さはざっと7メートル。越えるのは難しいが、その上は空洞になっていて、登れればあちらへと行ける仕組みだ。


「頼むぞ」


 俺はそう言って、ヒロトの両肩に手を置く。ヒロトは、フーと息を強く吐いて、刀を抜刀するような仕草を取る。もちろん刀はここにはない。


「無刀流 師走 登竜(とうりゅう)!!!」


 そう言いつつ、刀を抜く仕草をして、壁へ足を乗せる。そのまま垂直にその壁を彼は登る。俺は振り落とされないように、しっかりヒロトの肩を掴む。


 強く目標を一致しているものは、いちいち作戦を立てなくても、実行できるものだ。(フウタ調べ)


 そしてヒロトは、日常回限定のこの技で7メートルの壁を登り、そのまま下の女湯へ落ちていく。


 ダンっ! そんな強い音ともに女湯へ到着した俺たちは同時に叫ぶ。


「「エナ?! 平気か??!!」」


 すると目の前には、タオルでほとんど無い胸を隠して、こちらになんで? と言う顔をしたエナがいた。彼女は腰を抜かして座り込んでいた。


 女湯に沈黙が(ほとばし)る。


 恩を売ることに必死な俺たちは、そんなことなど気にせずに、エナに近づく。


「大丈夫か? エナ。俺らが来たから大丈夫だ!」


 と言って、エナの横の鏡に目を向ける。


 そこにはカエルがいた。


 …………え? も、もしかして悲鳴の原因って……か、カエル…………?


 そう思いヒロトに声をかけようとすると、彼は小声で何かを言った。


「(無刀流 師走 登竜)」


 そして。彼は俺を女湯に置いて、その場から男湯へと脱出した。


 その場に残された俺は、エナを見る。彼女は目から涙を流していた。


 それもそうだ。全裸の人間が壁の向こうから急に女湯に来たのだから。


「………………え、ホントッッ、ごめんなさい!」


 俺は女湯で全裸で土下座した。

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