パンイチ2人、金を稼ぐ
雨ッッ!!! 大雨が降る中、俺とヒロトはギルドの外に放り出されていた。
何が雨ッッだよ、効果音もっと他にもあるだろ。
俺はそんなことを考えつつ、隣のヒロトを見る。
「おいフウタ。ライブは明日だ。同士のお前は、俺のチケットで一緒に入れるから安心しろ。それより、エナは俺たちをギルドから追い出すほどには怒っているからな。午後の時間全部使って、金を稼ぐぞ」
そうなのだ。俺たちキカ様同盟は、ギルドで盛大に騒いぎ、エナの共感性羞恥を刺激してしまった結果、彼女に怒られ外に摘み出されたのだ。だが今はそんなことはどうでも良い。
「ああ稼ぐぞ。キカ様のためになぁ! そういえばお前、ライブのチケットはどこにあるんだ?」
俺の素朴な疑問に対して、ヒロトはくくくと笑い、おもむろにパンツの中に手を入れる。
「お、お前……まさか……」
「ふ、そうだ。何があっても平気な場所である、この中に俺は保管していたのだ!!」
そんな変態宣言をして、パンツの中から透明な袋にパックされたチケットを取り出した。
「どこに入れてるんだよ!!」
「ふふふ、お前はここから出したことにビックリしているだろうが、こんなのは良くある事だ」
良くあってたまるか。と突っ込もうとしたらヒロトは会話を続ける。
「よくドレスの谷間から物を取り出す女性がいるだろ? それと同じだ」
「同じなわけあるか!!」
コイツはとんだ変態のようだ。
そんなことを考えていると、ヒロトが傘を開いた。それはエナの家にあるボロい傘で、一本しかないため俺たちはいわゆる相合い傘をしてきたのだ。
そう。パンイチ2人で相合い傘だ。
おっと待ってくれ。変な妄想はするな。これはギャグであり、そっち系ではない。
「おいささっと入れフウタ。金を稼ぎに行くぞ」
「お前と同じ傘にはもう入りたくはないが、キカ様のためだ。背に腹は変えられん」
そう言って、パンイチ変態と再び相合い傘をして、大雨の中金を稼ぎにいく。
どうか、コイツとの変な妄想をされませんように。
A時間後 ギルド
ギィーと、俺たちは力なくギルドの扉を開ける。
ギルドにいる人たちが俺たちの格好を見る。
「「「キャャャャャャャャャャャャャ!!」」」
そんな叫び声が聞こえたが、何も感じなかった。
フルとシリが俺たちに近づいてきて、小声でこう言う。その手にはお金が握られていた。
「(その姿を見れば、お金を稼げずに酷い目にあったことくらいわかる。奢ってやるから、風呂にでも入ってこい)」
「(気にするな。それよりも今はお前たちの精神が心配だ)」
俺たちは無言でその金を受け取った。
フウタことパンイチ2号と、ヒロトことパンイチ1号は、温泉施設へとトボトボと歩んだ。
自分らの紹介文すら、ごちゃごちゃになるくらいには、頭は停止していた。
無心で体中を洗い、湯船に浸かって、俺はさっきあったことを思い出す。
最初にヒロトと向かった場所は、魚屋だ。ここでお金を稼ごうとしたのだが、店主に「新鮮味が売りなのに、汚い格好でここに近づくな!」と一蹴された。
次に向かったのは、レストランだ。しかしここでもオーナーに、「パンイチにエプロンなんて、違う店と間違えられるだろ!!」と一蹴された。
それから何店舗にも行って見たが、全部俺たちを一蹴する。特に服屋では、「この街の恥」ともまで言われた。
最後の希望で、倉庫での作業に向かった。服装なんて関係ないからだ。しかしその前に色んな店で言われたことが、心に来ていたのか作業にも集中できず。箱に入っている海藻をこぼしたり、卵を割ったり、飼育用モンスターを逃してしまったりと、大失敗をした。挙げ句の果てには、この損失を払ってもらうぞと、給与ではなく請求書を貰ったのだ。
そこからはどう、この湯船に行ったことすら覚えてない。
俺たちはお互いに無言で、湯船に暖まっていた。
ライブの服装どころかじゃないな。この借金どう返そうか。
などと物思いにふけていると、隣の女湯から悲鳴が聞こえた。
俺たちは横の女湯と男湯を分ける壁を見る。
「何があったんだろうな」
「分からん。ただ俺たちの現状よりマシだろ」
そんな覇気のない会話をしていると、聴き馴染みた声が聞こえた。
「な、なんのよこれ!! 誰か……助けてぇ」
エナの声であった。強い彼女が助けを求めるとは何事か。
そんな時、俺とヒロトの脳裏にあるアイデアが降り落ちる。
!!!! そうかこうすれば。
「おい! 行くぞ」
「ああ! その顔、お前も同じことを思いついたんだな」
俺たちは同時に言う。
「「エナを助けて、その謝礼で服を買うぞ!!!」」
俺たちの目に覇気が戻る。
そうと決まれば、俺たちの行動は早かった。他の男性客が、その場にとどまっている中、俺たちは壁の下まで行く。その壁の高さはざっと7メートル。越えるのは難しいが、その上は空洞になっていて、登れればあちらへと行ける仕組みだ。
「頼むぞ」
俺はそう言って、ヒロトの両肩に手を置く。ヒロトは、フーと息を強く吐いて、刀を抜刀するような仕草を取る。もちろん刀はここにはない。
「無刀流 師走 登竜!!!」
そう言いつつ、刀を抜く仕草をして、壁へ足を乗せる。そのまま垂直にその壁を彼は登る。俺は振り落とされないように、しっかりヒロトの肩を掴む。
強く目標を一致しているものは、いちいち作戦を立てなくても、実行できるものだ。(フウタ調べ)
そしてヒロトは、日常回限定のこの技で7メートルの壁を登り、そのまま下の女湯へ落ちていく。
ダンっ! そんな強い音ともに女湯へ到着した俺たちは同時に叫ぶ。
「「エナ?! 平気か??!!」」
すると目の前には、タオルでほとんど無い胸を隠して、こちらになんで? と言う顔をしたエナがいた。彼女は腰を抜かして座り込んでいた。
女湯に沈黙が迸る。
恩を売ることに必死な俺たちは、そんなことなど気にせずに、エナに近づく。
「大丈夫か? エナ。俺らが来たから大丈夫だ!」
と言って、エナの横の鏡に目を向ける。
そこにはカエルがいた。
…………え? も、もしかして悲鳴の原因って……か、カエル…………?
そう思いヒロトに声をかけようとすると、彼は小声で何かを言った。
「(無刀流 師走 登竜)」
そして。彼は俺を女湯に置いて、その場から男湯へと脱出した。
その場に残された俺は、エナを見る。彼女は目から涙を流していた。
それもそうだ。全裸の人間が壁の向こうから急に女湯に来たのだから。
「………………え、ホントッッ、ごめんなさい!」
俺は女湯で全裸で土下座した。




