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この眼の名前は!  作者: 夏派
三章
14/22

アイドル編開幕

 デブタウロス戦から、一月後くらいの朝だ。俺は起床し、体を伸ばす。ちなみに一月たっても服はパンイチのままだし、寝床も椅子だ。


 なぜ? と思うだろうが、この家、就寝スペースがないのだ。居候である俺と、今まで外で寝ていたという2号は、いつも拘束されている椅子に座って寝ている。寝心地は最悪だ。足を伸ばそうとすれば、目の前のパンイチのパンツに当たる。そんなのは最悪だ。


 俺は、いつも俺よりも長くヨダレを垂らして寝ているはずの、2号がいないことに気づく。


 珍しいな。ションベンにでも行ってそのまま起きたのか?


 などと考えつつ、俺は部屋の扉を空けて、テーブルがある下の階へと下る。

 

 下の階に着いた時、何やら騒がしい声が聞こえてくる。リビングの扉を開けると……。


「一生のお願いです!!! エナ様ぁぁ!!!!!」


 と叫びつつ、土下座をする同い年の2号を発見する。


「……あ、あの……? これは一体……」


 俺がそう言うと、エナはこちらを見てくる。彼女は腕を組み足を2号の上に乗せている。


 これどっちもひどいな。


「おはよう! パンイチ! 今日もいい天気ね!」


 コイツはこの状況で何を言ってるんだ? しかも外は雨降ってるぞ。


「え、エナさん? と、と、とりあえず足を下ろしたらどうでしょうか?」


 と俺が慌てつつエナに言うが、それを遮るアホがいた。


「足も舐めますから!!! お願いします!!!!!」


 訂正、アホで変態がいた。


「おい2号! お前何やってるんだよ! アホか? いやアホなんだけどさ」


「馬鹿か? お前!! この行為は、キカ様のライブのためにやってるんだよ!!! 分かったなら、お前も土下座してくれ!!!」


 ……………………………は?……。


 こいつは何を言ってるんだ? 


「……お前何言ってやがる。誰だよキカ様って。それに分かったとは一言も言ってn、痛い痛い痛い痛い痛い、分かったから髪を無言で引っ張るな変態!」


 2号は髪を無言で引っ張ってきたが、それだけでは終わらず。


「エナ様! 今すぐ誠意を見せますから!」


 と言い、ダン!と俺の足を払い、俺を地面にうつ伏せにさせ、俺の頭を抑える。


 そう半強制的に土下座風な形にさせたのだ。


「ブッ、いてぇなテメェ。何しやがr」

「うるせぇぞ!!! キカ様とエナ様のために(こうべ)を垂れろ!!!」


 もう。なんなんすかこれ。




B分後 テーブル


 あれからどれくらいたったかは分からないが、俺たちは無事に朝ごはんを食べ始めた。今日の朝ごはんもいつも通り、もやし風の野菜と水だけだ。


 なんでよ。この1ヶ月間色んなクエストをして、お金を稼いできたのに、ご飯はいつもこれ。朝も昼も夜も。せっかくの異世界なのに、なんで、もやししかないねん。


「んで、なんで2号はエナに土下座してたんだ? 武士道はどこいった」


 俺がそう2号に促すと彼は極めて冷静に、


「武士道? なんのことだ。エナ様に土下座していたのは、服を買うためのお金を貰うためだ」


「……お前、俺の夢に見た武士のイメージを壊すな。それになんでまた服が? 俺たち、もう街の中じゃ慣れてるじゃないか」


 この一月で、俺たちは町中をこのパンイチマントと、パンイチ下駄で回ったのだ。それは最初はゴミよりも扱いが酷かったが、街の人達も慣れてきてくれて、今じゃ俺たちの格好を笑うものはいなくなった。


 と良い感じの話なんて存在せず、実際は、俺たちが笑われることに慣れてきたのだ。  


「ああ確かに笑われるのは慣れてきたが、今回は違う」


「あ? どう言うことだ?」


 2号は一呼吸置いてから言う。


「俺の愛するアイドル、キカ様のライブに行くために、正装が欲しいのだ!!」


「…………は?」


 何を言っているか分からなかった。


 エナはエナで話をほとんど聞いてない雰囲気を出している。


 俺がほとんど喋らないでいると、


「おお! お前も同士か1号よ!!」


 と言って俺の手を奴の手が包んでくる。


「やめろやめろやめろやめろ!! これはそっち系の物語じゃねーんだ! 勘違いされるぞ!」


 俺は声を荒げて言うが、2号には届かない。


「離せ変態! というかエナも一回くらいならコイツに金貸してもいいんじゃねーのか?」


 俺は奴の手を解こうと頑張りつつ、エナに聞く。


「い・や・よ! 今月『も』お金厳しいの! それに、アイドル? アンタら、こんな可愛い女の子と同棲してるのにアイドルのライブに行く気なの?!」


 エナが興奮しつつ立ち上がり俺たちにいう。


「『も』を強調するな、『も』を。それにアンタらと、俺を含めるな。俺はアイドルに興味はない。さらに! お前はお前で何自分を可愛い子認定してるんだよ! 顔はよくても性格と胸が終わっt」


 殴ッッッ!!!! エナの拳が俺の鼻先で止まる。その風圧で俺の顔は(本来イケメンなのに)ブサイクになる。


 そんなことをしていると、エナの話を聞いていた2号が叫ぶ。


「その事情は分かってますが! エナ様!! 私にお金を!!!!」


「い・や・だ!!!!」


 エナに一蹴され、2号は、


「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 と泣き叫んだ。





 F時間後 ギルド


「はぁーーーーー。俺はどうすれば良い?」


 大きなため息をつき、悩んでいる2号に俺は言う。


「諦めて、この格好で行ったらどうだ? エナはお金貸してくれねーよ」


「だが、あの女は今も女子会と言って、美味しそうなものを食べているじゃないか」


 と言われ、俺は他のテーブルに座って微笑ましく、ケーキみたいなのを食べているエナを見る。


「……あのやろう。自分だけ美味しいの食べやがって」


 俺がそう言うと、俺たちと同じテーブルに座っている、最近仲良くなったフルが言ってくる。


「ん? お前ら知らないのか? エナはあの女子会のお金払ってないんだぞ」


「「え??」」


「エナはお前らが仲間になる前から、1人で街に入ってきそうなモンスターとかを討伐していたんだ。そのおかげでみんなの信頼度が高いんだ。だから彼女は良くみんなにご飯を奢って貰えてるわけ」


「「……あのぺたんこ(貧乳)に、信頼度だと……??!」」


 俺たちがそう漏らすと、エナがこちらを睨んでくる。


 あいつ耳良すぎやろ。


「ああエナはすごいんだぜ」


 と今度も最近仲良くなった、シリが言ってくる。


「それにキカのライブになんでお前は、正装なんて着ていくんだ? 暑くなるだろ」


 シリのその質問は最もだ。そもそもなんでこいつは正装なんて……。


「バカアホクソ!! 人生初のキカ様のライブだぞ!!! ちゃんとした服で行かないと失礼だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 2号の叫びはギルド中にこだまする。


 エナが恥ずかしそうに顔を赤くして抑えている。そりゃそうだ。俺だって恥ずかしい。


「お、おい、流石に叫ぶのは周りの人に迷惑が……」


 とフルが2号のことを落ち着かせようとするが、


「キカ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「うるせぇぞこらぁ!」


 俺はエナの代わりに、2号を殴り黙らせる。


 多少落ち着いた2号を一瞥し、俺らは会話を再開する。


「なぁ、キカっていうのはどういう顔なんだ?」


 俺はそう質問すると、フルが壁の方を指差して答える。


「あそこに写真が貼ってあるぞ。見てこいよ」


 この世界はカメラなようなものがあり、魔力で写真が撮れるのだ。印刷も魔力でできる。


 俺はそう言われ、壁に歩いてその写真を見る。


「なっ…………」


 そこには、鮮やかな青髪ロング、でかい胸、細すぎないスラッとしたスタイル、綺麗な瞳、でかい胸の綺麗で美しくて可愛くて、ビューティフルでキュートで、でかい胸の美女がいた。


 俺がその写真に目を奪われていると、2号がキカ様と言いつつ、俺に近づいてくる。


 その2号に俺は言う。


「恋に落ちた」


 それを聞いて2号は、涙を流し片方の手を俺の肩に置いて言う。


「同士よ!」


 と言って、もう片方の手を俺に差し出してくる。


 ガシッと俺はその手を取り、


「ヒロト」

「フウタ」


 と初めてお互いの名前を呼び合う。


 そして。


「「我らキカ様同盟!!!」」


 と叫んだ。


 エナが耳まで真っ赤にして、その場にうずくまっているのが見えた。

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