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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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兄妹対決


この三年で街は大きく変わり、かつて要塞都市と呼ばれたミンダルは活気あふれる明るい街へと変貌していた。そして、紅羽がやってきたこの場所、治安維持局の建物は二年ほど前に完成した。見た目は小さな城の様だが、中には司令室や訓練所などが完備されている。扉の前、一息ついた紅羽は司令室の扉をノックした。

 

「入るぜ」

 

「紅羽、ようやく来たか。こっちだ」

 

司令室の机に山積みになっている書類の奥からルクスリアがひょっこり顔を出して紅羽を呼ぶ。

 

「相変わらず大変そうだな」

 

「そりゃあそうだ。事務作業する人間がここには居ないからな」

 

「誰か雇えよ」

 

「適任がいない」

 

「まぁ、それもそうか。はい、これ」

 

ルクスリアは紅羽に一通の封筒を渡されて中身を確認する。

 

「うむ。少し待っていろ、すぐに返事を書く」

 

「あいよ」

 

紅羽はソファに深く腰を据えた。しばらくして、ルクスリアが返事を書き終えて、それを封筒に入れると紅羽へと渡す。

 

「すまんが、また頼む」

 

「なぁ、何が書いていたんだ?」

 

「また京で会談をしたいから、ぜひ来て欲しいとの事だ」

 

「なるほどな、俺もか?」

 

「あぁ」

 

「了解、じゃあな」

 

「待て」

 

颯爽と部屋から去ろうとするとルクスリアに呼び止められ振り返る。

 

「なんだ?」

 

「もう一つ話がある。椿の件だ」

 

「またそれか。何度も言ったが俺は反対だ。椿に維持局の仕事をやらせるのはな。しかも実践部隊になんて・・」

 

「もう椿も大人だ、いい加減過保護もいいだろう。お前も知ってるだろ?椿は強い。それにいずれは若い子の教育係として先陣をきって欲しいんだ。それにこれは椿も同意の上だ」

 

「いいや危険だ。今は大丈夫かもしれないが、今後強敵が現れたらどうする?俺は断固として反対だぜ」

 

「頑固な奴め。ならこうしようじゃないか。お前と椿で戦って椿が勝てば納得しろ。負けたらもう私はこの話をしない。どうだ?」

 

「まぁ、そこまで言うならやってやるよ」

 

「よし!二言は無いな。明日、うちの訓練所に来い!椿にも言っておいてくれ」

 

「だめだ」

 

「は?」

 

「今からだ」

 

「なんだと!」

 

「任務っていうのは何が起こるかわからない、急に戦闘にだってなるんだ。普通の決闘では意味がない。それに、今日いるみたいだしな」

 

そう言って紅羽は早々に部屋を出て行った。

 

「おい!待て!」

 

ルクスリアは椅子に深く座りため息をもらす。

 

「はぁ、こうなったら見届けるしかないか」


 

椿とジータは訓練所に着くや否や、互いに模擬刀を構え、幾度となく刀を交えていた。

 

「ジータ、さすがだね。これで何回目?」

 

「はぁ、はぁ、まだ十回目です」

 

「まさか、また勝つまでやる気?」

 

「当たり前です!あっ!終わりたいからって、わざと負けるのはダメですよ」

 

「マジー?」

 

次の打ち合いを始めようとしたその時、椿は後ろからくる殺気を感じて振り返り、刀をギリギリで避ける。椿はその相手を視認すると驚いた。

 

「えっ!兄さん、なんで!?」

 

「ちょっと、何してるんですか!?紅羽さん!」

 

「黙って戦えよ、椿。お前は治安維持局の仕事がしたいんだろ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、椿の顔つきが変わった。

 

「初めて見るかもな、お前のそんな顔は」

 

「兄さん、何かはわからないけど。多分兄さんに勝てば何かあるんでしょ?」

 

「さすがは俺の妹、感がいいね」

 

二人は黙ったまま模擬刀を構えると互いを見つめ、間合いを少しずつ詰めていく。

先に動き出したのは紅羽の方だった。椿は今まで見たことがない兄の姿に少し驚きはしたが、自分に向かう攻撃を紙一重で交わしていく。

 

「なんだ、逃げてばかりでは意味がないぞ」

 

「そんなのわかってるよ!」

 

椿は紅羽の猛攻にひたすら防御に徹していたが紅羽の一瞬の隙をつき斬り込む。しかしそれは紅羽が誘っていた罠だった。紅羽は当たる寸前で体を回転させて裏剣で椿の後頭部に一撃を放つ。

 

「なっ!?」

 

紅羽は驚いた。なんと椿は攻撃を読んでいたのか、肘だけで紅羽の攻撃を防いだ。そして椿は後ろへと後退して、一旦息を整える。

 

(なんて力だ、いやそれ以前にあれを読んでいた?いや、瞬発力が優れているのか?)

 

「へぇ。やるじゃないか、椿」

 

「最初は戸惑ったけど、兄さんと戦うのも楽しいね」

 

そんな二人をよそにジータは戦いを食い入る様に見ていた。

 

「すごい、こんな戦いは初めて見たかも。というか、椿姉さん!絶対、今まで私との戦い、手抜いてたでしょ!」

 

「あっ、ばれたか」

 

「むー」

 

「いやぁ、素直に感心したよ椿。ここまでとは」

 

「えっ!じゃあもう認めてくれるの?」

 

「そんなわけないだろ。まだダメだ。俺は負けてないからな」

 

「けち。ならあれを使うよ」

 

「ん?あれ?」

 

椿は模擬刀を槍でも持つかの様な手に持ち直した。

 

(何をするつもりだ?)

 

椿のその行動に警戒しつつ紅羽は構える。

 

「いくよ」

 

椿はあろうことか、力一杯に模擬刀を紅羽の方へと真っ直ぐ一直線に投擲した。

 

「なんだ投げるだけよ!」

 

紅羽は向かってくる刀を払うつもりでいた。だがしかしそれはできなかった。

 

「なっ!?」

 

模擬刀を飛ばして数秒、投擲された模擬刀より速い速度で椿は向かってくる。そして飛行している模擬刀の柄を掴むと、凄まじい突きを紅羽へとお見舞いする。


キューーーーーーゥ!!!!!!!!!!


神鳴(かんなり)


突きが当たった瞬間、凄まじい斬撃音が訓練所に鳴り響く。刀の速度と自身の速度を上乗せした神速の突き。紅羽は刀で受け止めはしたがその威力に刀が持たず弾けて、そのまま後方の壁へと飛ばされる。

 

「あっ!少しやりすぎちゃった?」

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