初任務
一
翌朝、紅羽は救護室のベッドの上で目が覚めた。
「ん・・ここは・・」
「あっ、やっと起きた!ごめんね兄さん、ちょっとやりすぎちゃった」
紅羽のベッドの側では申し訳なさそうに椅子に座った椿と、その横にはルクスリアが立っていた。
「はぁ・・びっくりだぜ。まさか椿に負けるとはな」
「紅羽、どうだった?」
「どうって・・まぁ。あー、仕方ねぇ。約束だからな。認めるよ」
椿はルクスリアと顔を見合わせて喜んだ。
「やったぁ!じゃあじゃあいいってことだね!」
「ただし条件がある!ルクスリア、椿を一人では行かせるな。それを守ってくれるならよし」
「わかった」
「頼んだぞ」
かくして、椿の治安維持局への入隊は許可された。その後、外で待機していたジータは椿と再び模擬戦をしていたが、二十五回目でようやくジータが一本取ることで模擬戦は終わりを迎えた。そしてルクスリアは椿の入隊の手続きと今度について決めるため治安維持局へと戻った。
「ただいまー」
紅羽は椿に肩を借りながら帰宅する。
「おかえり、ってどうしたんだ?」
「ちょっと、やりすぎちゃって」
「おかえりなさいませ、椿お嬢様、紅羽様、ずいぶんと遅かったですね。夕食の準備はできていますよ」
「ただいま。ちょっと遊んでて遅くなっちまった」
椿と紅羽はその後、何も話さなかった。夕食を食べ終え、紅羽は早々に自室へと戻った。ミナモは片付けと風呂の用意を、椿と糸音は食後のクッキーを食べてお茶をしていた。そこで糸音は訓練所であった出来事を椿から聞いていた。
「なるほどね。でも良かったじゃん」
「うん!糸音は入らないの?」
「あー、私は椿以上に止められてるからね」
「へぇ、なんでだろうね」
「さぁな」
しばらく雑談していたら風呂の準備ができたとミナモが報告しにきたので、椿は先に風呂へと入った。
「はぁ。ミナモさん、風呂は深夜にでも適当に入るから、私は部屋へ戻るよ」
「承知しました」
夜も更けた深夜、ヘイオーの南の海岸にて一隻の小舟が岸に乗り上げていた。その船から二人の男が降り立った。
「ここがヘイオーか」
「ええ、ここに間違いなくいます。奴からの情報です」
「数年、どこへ行ったかと探したが、まさかこんな辺境の地ににいるとはな。だがようやく見つけた。面白いものが見れると尚良いのだが」
「では、向かいましょうか宗谷さん」
「あぁ」
二
次の日、ルクスリアが朝一に紅呂家を訪ねてきて早速今日、椿の治安維持局での軽い任務でテストをすると言った。
「えー、朝から眠いな」
「おいおい、それがお前の選んだ道だろ」
「はーい、ちょっと待ってね」
椿は十分くらいで準備をして玄関へとやってきた。外へ出ると振り返り、まだ誰も起きていない家を見上げる。
「行ってきます」
まだ静かに眠る街の中、二人は治安維持局へと向かった。
「いいんですか?紅羽様」
自室の窓から椿を見送る紅羽の部屋に居たミナモが問いかける。
「いいんだ、約束だし。それにもう大人だ。いつの間にかな」
「そうですね」
「俺はもう少し寝るよ。昼頃に起こしてくれ」
「承知しました」
紅羽はベッドへと向かい、再び目を閉じて眠った。
三
椿達は治安維持局へ到着し、司令室へと続く長い廊下を歩いていた。
そしてその道中、いきなりルクスリアが攻撃を仕掛けてきた。鋭く尖った爪が椿の喉に刺さる手前で椿は瞬時に避けて後退する。
「いきなり、何するんだ!」
「頭はまわっている様だな」
「はぁー。そういうこと・・おかげで目が覚めよ」
「そうして冗談が言えるのならひとまず仮合格だな。今のはお前を試したんだ。朝早くからの訪問もそうだが、すでにテストは始まっている。まぁ頑張れ」
「そういうことね」
司令室到着後、そこにはジータが居た。
「おはようございます!椿姉さん、今日からよろしくお願いします」
「気が早いぞジータ、まだテスト中だ。椿、今日はジータと一緒に西のブライト地区に行ってもらう。最近そこを根城にしている盗賊が数人いるらしい。そいつらを捕えるのが今回のテストだ、達成されれば晴れて合格だ」
「了解!」
「頼んだぞ」
二人は治安維持局本部を出ると早速に西へと向かった。




