↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/105

夜は獣の時間(一)

翌朝、糸音は目を覚まし廊下に出ると、足に包帯を巻いて杖をついている椿とバッタリ会った。

 

「おはよう椿」

 

「おはよう。昨日は、なんかごめん」

 

「いや、いいよ。それより大丈夫か?」

 

「うん!まぁ二ヶ月くらいで治りそうなんだって」

 

「そうか。今日は森の様子を見てくる。椿は家でゆっくりしていろ」

 

「はっは。そりゃそうか。一緒に行きたいけど、当分は我慢だね」

 

糸音は椿を気遣い、体を支えながらリビングへゆっくり向かった。リビングでは未だに、ぐっすりとソファで横になり眠っている紅羽がいた。ミナモと雛菊は早々に起きてリビングの掃除に励んでいた。

 

「おはよう、ミナモさん、雛菊さん。朝食をお願いしても」

 

「おはようございます。では、朝食を持って来ますのでしばしお待ちを」

 

そう言ってミナモと雛菊はキッチンへと向かった。糸音は椿に寄り添い、椅子へと座らせると自分もその向かいに座る。

 

「はぁ、ありがとう。ごめんね」

 

「いいよ」

 

ミナモと雛菊がそれぞれキッチンから朝食を運んできて、それを並べていると紅羽が朝食の匂いに釣られてかソファから起き上がる。

 

「おはよう」

 

「おはよう。兄さん、昨日はごめんなさい」

 

「おはよう。まったく、昨日は本当に心配したんだぞ。当分は、一人で森へ行くことは禁止だ」

 

「うん」

 

そうこうしているとリビングに最後の一人、ルクスリアが起きてきて空いている椿の隣へと座る。

 

「おはよう」

 

「おはよう」

 

「おはよう、ルクスリアさん」

 

椿は椅子をルクスリアの方へ向けると頭を下げた。

 

「昨日は本当にありがとうございました。それと失礼な事をしてごめんなさい」

 

ルクスリアはキョトンとした目で椿を見ると微笑みながら椿の頭を撫でる。

 

「いや、こちらこそ驚かせてすまなかったな。怪我は痛むか?」


「いえ。大丈夫です!」


「そうか。強い子だな」

 

その様子を見ていた紅羽は立ち上がり唐突に宣言する。

 

「よし!今日こそ、ルクスリアの歓迎会を開こう!」


その後、ルクスリアと紅羽は神薙の館へと向かい、糸音は森の中の探索へと向かった。


(しかしこの森、前から思っていたが動物がやけに少ないな。動物避けの結界でも張っているのか?そうだったとしても、それなら何故熊が現れた?)

 

糸音はルクスリアから聞いていた、熊が殺されたところまでやってきた。その熊の死体は腐敗が始まり、残りカスをカラスが突いていた。

 

「他の肉食動物は近くには居ないみたいだな」

 

糸音はしばらく辺りを散策するが特に変わった事もなく、時間が過ぎていった。

 

(やはり、たまたまだったのか?もう少し奥の方へ行って調べてみるか)

 

糸音は森の奥深くへと進んで行った。

一方そのころ、紅羽とルクスリアは南京の通りを歩いて神薙の館へと向かっていた。その道中、見知った人物が前を歩いていたので紅羽は手を振り声をかけた。


「シャオさんじゃないですか!」

 

そのシャオという人物は振り返るとゆっくりと紅羽に近づいてきた。人混みで見えなかったが椿と同じくらいの子供も一緒にいた。

 

「誰かと思えば紅羽やんか!全然会えへんから、またどっか行ったと思ったわ」

 

「いやぁ、色々ありまして。それでシャオさん、その子は?」

 

「おう。挨拶しいや」

 

「こんにちは!うちの名前は雷々メイです!よろしくです!」

 

メイは軽くお辞儀をする。溌溂とした元気な子だった。

 

「シャオさん。まさか、シャオさんの子供ですか?」

 

「まぁ、そうなるなぁ」

 

「まじですか!シャオさんが子育て・・」

 

「なんやぁ、文句あるんかぁ?」

 

「はっは。いやいや、何でもないっすよ。するとこれからお出かけですか?」

 

「お出かけ言うか、今からこの子連れてちょっと旅に出ようと思ってな」

 

「旅ですか、またどうして」

 

「そうやな、特に理由はないけど。この子、あまりにも外の世界知らなさすぎやから一緒に各地でも周ろう思ってな」

 

「そりゃあ楽しそうですね。俺は当分ここにいますから、また帰ってきたら飲みにでも行きましょうや」

 

「せやな!ところでそちらは?」


そう言われて紅羽の後ろに居たルクスリアは前へ出てくる。

 

「名乗り遅れて申し訳ない。私はヘイオーからやってきました、紅羽の友人のルクスリアという者です」

 

「これはこれは礼儀正しゅうどうも。うちはシャオ・リンっていいます。気軽にシャオって呼んでやー。そういやあんた、仲間引き連れて革命起こしたって聞いたで。すごいやん」


「いえ、私は先導しただけで、すごいのは紅羽や同士たちですよ」


「いやいや。それでもすごいわ。指揮するものはたいへんやしな。一番重要やし。ところでルクスリアさんや、あんた人(・)間(・)や(・)な(・)い(・)な(・)」 

 

「!?」

 

「まぁ、そう構えなや。何もしやんって。うちの古い友人にも同じのがおるからな。そういうのには寛容なんよ」

 

「そう、ですか。その友人にも話を聞きたいものですね」

 

「いや、ずっと会ってへんし。どこにおるのかもわからんのやけどな。ずっと探しとるんやがなー」

 

シャオはどこか寂しそうな顔をする。

 

「会えるといいですね」

 

「せやなー。まぁ、また今度ゆっくり話しましょうや、ルクスリアさん」

 

「ぜひ」

 

「ほな!この子も暇そうにしとるから、もう行くわ!」

 

半分立ったまま寝かかっていたメイは、最後に一回お辞儀をしてシャオと共に去って行った。

 

「紅羽、あの人強いだろ?しかも相当」

 

「なんだそんなこともわかる様になったのか?まぁ、あの人は怪物だよ。こんな事言ったら怒られるがな」

 

「そうか。次に会う時が楽しみだな」

 

二人は再び館へと向かい歩きだした。

日も少し傾きだした頃、館の前にようやく辿り着いた、ルクスリアと紅羽。門前にいた兵士が大きな門を開けると中には皇王の側近が立っていた。少しお辞儀をするとゆっくりと紅羽達の元へと寄ってくる。

 

「お待ちしておりました、ルクスリア殿、紅羽殿。私は皇王様の側近、アンメイと申します。本日、皇王様の所までご案内させていただきます」

 

「初めまして、本日はよろしく頼みます」

 

「はい、ではこちらへ」

 

紅羽達はアンメンに促されて中庭を抜けて客間へと移動する。客間は皇室の扉の突き当たり向かって右側の通路奥にある。扉を開けると客間と呼ぶには少し広すぎる空間がそこにはあって真ん中に大きな円卓が置かれていた。そして、そこでしばらく待つように言われた二人は壁に施された装飾などを見て時間を過ごした。しばらくすると皇王が側近と共に客間に現れた。

 

「お待たせして申し訳ございません。これはこれは、長旅ご苦労様でした。私はこの街を治める皇王の鹿野枩橋萬歳と言います。気軽に萬歳とお呼びください」

 

萬歳は手を指し述べ、握手を求めるとルクスリアはそれに応える。

 

「こちらこそ、お招きいただいてありがとうございます。ヘイオーで治安維持局統括をしております、ルクスリア・ベルフェナーレと申します」

 

「紅羽から話は伺っております。早速ですが腰を下ろして、ゆっくりとお話ししましょうか」

 

「そうですね。では、失礼します」

 

二人は大きな円卓の席へと座る。

 

「紅羽もアンメンも座れ。あまりかしこまった感じも好かんからな。ルクスリア殿も構わないですかな?」

 

「私もそちらの方が助かります」

 

「では、二人共椅子へ」

 

「はい」

 

「んじゃ、遠慮なく」

 

二人も椅子に座ると、大広間の扉が開かれ、給仕が茶菓子をテーブルの上へと並べる。

 

「ありがとう。今日は無礼講といきましょう。世間話でも混ぜながら色々とお話しをしましょうか」

 

「気さくで面白いお方だ、気に入りました。では遠慮なく」

 

主にルクスリアと萬歳との会話がほとんどだったが、所々で紅羽が茶々を入れたりして会合という名の茶会は滞りなく進み、日が傾き始めた頃に話を切り上げて帰る事になった。

 

「今日は良き日でした。ルクスリア殿のことも知れたし、今後ともこの神薙との交流もよろしく頼みます」

 

「こちらこそありがとうございました。萬歳殿がこんなにも話しやすい相手だとはつゆ知らず、今日はお互いに良き日でしたね」

 

「なんか、かしこまった話し方だと変な感じだなルクスリア」

 

「うるさい、お前はもう少しわきまえるんだな」

 

「あいよー」

 

「ではルクスリア殿、次回はヘイオーへ伺わせてもらいますよ」

 

「えぇ、その時は良きおもてなしでも考えておきます。では」

 

紅羽とルクスリアは館を後にした。

一方夕闇が差しかかる頃、糸音は森の奥へと進んでいたが特に何も無かったので頃合いを見て帰路についていた。

 

「特に何もなかったな・・・!?」

 

洋館の近くの森まで帰ってきた糸音は突然、背中に何かを感じた。それは先ほど居た森の奥の方からだった。

 

(なんだ?この感じ・・ここまで届くほどの獣の殺気。まさか・・・)

 

夜(・)は(・)獣(・)の(・)時(・)間(・)

 

糸音は誰かに聞いた言葉を思い出した。糸音は再び、殺気を感じた森の奥へと引き返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。