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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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早い再開(一)

合流した四人は北栄の漁港近くの釣り場で釣りをして、夜になって紅羽行きつけの店で食事を取り、洋館へと戻った。

ミナモは帰るとすぐに風呂の準備を始め、三人は風呂の準備を終えるまでの間リビングで談笑していた。

 

「ふー、今日は楽しかったー」

 

「そうだな。こんな日は久しぶりだ。どうだ糸音、京の街は」

 

「想像以上に賑やかなところだな。楽しめたよ」

 

「よかったー!ねぇ、また一緒にお風呂入ろうよ」

 

「いいよ」


「お前らいつの間にそんなに仲良くなったんだ?」


「内緒だよー」


「ふーん。まっ、仲が良いのは良いことだな」

 

「おまたせしました。お風呂の準備ができましたよ」

 

「じゃあ、レッツゴー!」

 

糸音と椿は風呂場へと向かった。ミナモはいつのまにか用意していたお茶を紅羽の前に置き、自分も向かいの椅子へと座る。

 

「ありがとう。ミナモさん、今日、二人を見ていてどうだった?」

 

「とても仲の良い感じでしたよ。まるで姉妹の様に。お嬢様もいつも以上にご機嫌でした」

 

「そうか、それは良かった。なら安心だな。俺は少しやることがあるから、先にミナモさん入りなよ」

 

「承知しました」

 

「ふー、いいお湯だったー」


しばらくしてミナモと入れ違いに、椿が駆け足でリビングへと戻ってくるとソファへとダイブした。

そのあとに、ゆっくりと糸音が歩いてきてリビングへと戻ってくる。

 

「おてんばな奴だな。ほら、ミナモさんが用意してくれたホットミルクだ」


「わーい」

 

糸音は椿の座っていたソファが空いたのでそこへ深々と座る。

 

「明日は何するー?」

 

椿はホットミルクを片手に、陽気に糸音の隣へと座る。

 

「そうだな。特にやりたいことも無いからな」

 

「じゃあ、森で探索でもする?」

 

「探索か。いいよ」

 

二人はホットミルクを飲みながらひとしきり話したあと、二階の自室へとそれぞれ戻る。糸音は横になるとそのまま静かに眠りについた。

深夜、糸音は廊下でする物音に起きると、扉へと静かに近づいていく。そして扉をゆっくりと開けるとそこには紅羽が灯りを持って立っていた。

 

「なんだ、紅羽か。こんな時間になんだ?」

 

「すまねぇな、起こしちまったか。ちょっといいか?」

 

「あぁ」

 

二人は外へ出ると森の中へと入っていく。しばらく歩いていくと小さい川が見えてきた。

糸音はその川のほとりへと座わると紅羽もその横へと座る。

 

「こんなところまで連れて来てなんだ?」

 

「何ってほどのことでもねぇけど、ちょっとな・・」

 

「まぁ、いいけど」

 

「こうしているとヘイオーでの事を思い出すな。まだ数日しか経ってないけど」

 

「ルクスリアと詩織、元気にしてるかな」

 

「そういや明日、ルクスリアに手紙を出すんだけど、なんか書くか?」

 

「いや、いいよ。また会った時に色々話すよ」

 

「そうか。そういや今日はどうだった?」

 

「ん?あー、なんだろう。こんな風に遊んだのは久しぶりだったよ。ありがとう」

 

「こっちこそありがとな。それで、糸音が良かったらなんだが、これからも椿と一緒に居てくれないか?俺は情報屋の仕事もあるからこれからもきっと忙しくなる。家を空けることもあるだろう。無理を承知で頼めるか?」

 

「いいよ、ここは居心地が良いから。それに、これからも椿とたくさん色んな事をしてみたいし。それに、私は普通の生活っていうのを知りたいんだ。今まで殺しが私の生きる全てだったから」

 

「そうか。なら、これからも椿をよろしく頼む」

 

「あぁ。ちょっと、歩き周って疲れたからなのか、眠くなってきたな」

 

「そうか。すまねぇな、こんな時間に。帰るか」

 

二人は来た道を戻り、洋館へと戻る。

糸音は自室に戻りベッドに横になると、今日の出来事を振り返り呟く。

 

「はぁ、普通の生活か・・」

 

そして糸音は目を閉じて静かに眠る。

早朝、糸音は部屋の外から物音が聞こえて目を覚ます。ふと窓の外を見ると椿が何かを持って森の中へと入っていくのが見えた。

 

「椿?」

 

糸音は気になり、静かに外へと出ると椿の後を追う。

 

「たしか、こっちだったか」

 

糸音は椿が向かったであろう森の中へと入っていく。しばらく歩いて行くと、何やら石を叩く様な音が聞こえてくる。そして、昨晩、紅羽と来た川の辺りまでやってくると、そこには刀を持った椿が大きな岩へ向かって太刀で斬撃を入れていた。

 

「はっ!」

 

木陰で見ていた糸音は椿の太刀筋は雑だが、鍛えればそこそこいい線行くと思った。

 

「朝からどこへ行くのかと思ったら。剣の稽古か」

 

「!?」

 

椿は剣を構えるが、糸音の姿を確認するとすぐに構えを解いた。

 

「なんだ糸音か。ごめん起こしちゃった?」

 

「いや、いいよ。それよりこんなとこで何してるんだ?」

 

「日課で、剣の稽古してるんだ。いつか兄さんの役に立ちたくて。まぁ、独学なんだけどね」

 

よく見ると椿の持っている剣は刃のない模擬刀だった。

 

「私で良ければ、稽古に付き合ってやろうか?」

 

「えっ!いいの!じゃあお願いしようかな」

 

「いいよ」

 

糸音はその辺に落ちている木の棒を拾うと構える。

 

「えっ?そんな木の棒でいいの?危ないよー」

 

「今はこれで十分だよ」

 

「ぐぬぅ。なめよって。怪我しても知らないよー。とおー!!」

 

椿は剣を構えると真っすぐに突っ込んできた。

 

「直情的で真っ直ぐな太刀筋だな。だが、悪くはない」

 

糸音は軽く避けて、隙のできた椿の頭を木の棒で軽く叩く。

 

「あいたッ!ふぅー、やっぱり動くもの相手だと難しいな」

 

「今まではその岩で?」

 

「そう!ミナモさんは私に稽古つけてくれないし。だから糸音、頼むよ。これからも稽古つけてくれ!」

 

椿は今までにないほど真剣な面持ちで糸音にお願いする。

 

「わかったよ。まぁ私もいざという時のために鈍ってたら困るからな」

 

「やった!」

 

その日以来、椿の剣の稽古に付き合ったり、二人で一緒にいることが多くなっていく糸音。

そしてその日、紅羽は皇王から手紙を貰うとルクスリアのもとへ飛ばした。

それから数日が経って、ルクスリアが神薙へと来ることとなり、さらに数日が経った。

そして今日はルクスリアのお迎えのため北栄の港で四人は待っていた。

 

「兄さん、ルクスリアって人、吸血鬼なんでしょ?」

 

椿は少し怯えながら紅羽にきいた。どうやら人見知りと吸血鬼という人外のものに対してえらく怯えているみたいだ。

 

「安心しろ。奴は吸血鬼になってしまったがいい奴だ。なぁ糸音」

 

「そうだな、っと言ってる間に、来たぞ」

 

そうこう話しているうちにいつのまにか大型船が近くまで来ていた。船が港へ着くと女が二人、ゆっくりと船から降りてきた。

 

「ようよう、吸血鬼さんや」

 

「ふん。相変わらずだな紅羽」

 

椿は紅羽の後ろに隠れる。それに気づいたルクスリアは椿に目線を合わせて話かける。

 

「君が紅羽の妹だな。名前はたしか、椿だったか。よろしく」

 

「よろしく、です」

 

椿は少しだけ会釈すると再び紅羽の服にしがみついていた。


「嫌われたなルクスリア」

 

「その声、糸音か!しばらくぶりだな。元気だったか」


「あぁ、悪くない日常を送っているよ」

 

「そうか。そちらは紅羽の家のメイドさんだね」

 

「ルクスリア様、お初にお目にかかります。ミナモと申します。滞在中、何かご不便がございましたら何なりとお申し付けください」

 

「ありがとう、数日間よろしく頼むよ。そうだ!紹介しよう。こちら、私の護衛や給仕などを任せている、補佐官件、メイドの雛菊だ」


「どうも、初めまして。雛菊と申します。以後お見知りおきを」


「雛菊。やっぱり雛菊だったか」


「ん?ミナモさん知り合い?」


「ええ、まぁ」


「へぇ、まぁ積もる話もあるが、まずは館へ案内しよう」

 

再開も早々に一行は洋館へと向かった。

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