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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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神薙観光(ニ)

 一


「相変わらずでかいし、広い場所だな」

 

紅羽は糸音たちと分かれて、神薙の館へとやってきていた。門番に軽く会釈して中へと入る。

 

「たしか、このまま真っ直ぐだったかな」

 

紅羽はそのまま広い庭を抜けると館の中へと入る。館の中では、皇室で働く女官がそそくさと働いていた。その者たちを横切ると軽く会釈をされ、紅羽はそれに軽く答え、しばらく奥へと進むと大きな扉の前までやってきた。そして、一呼吸おいてノックをする。

 

「誰だ?」

 

「俺ですよ。俺」

 

「俺?・・まさか、その失礼な言動と声・・・紅羽だな、入れ」

 

扉が開き中へと入る紅羽。中では、広い部屋にお付きの者が一人と椅子に座って書類に判子を押している若い皇王のみという広い空間に対してなんとも寂しい感じだった。しかし書類があちこちに山積みとなっているおかげか、その寂しさも少しはマシになっている。

 

「相変わらずの書類の山だな」

 

「そうだろう。意外と多忙なんだよ街の長という者はな。それで、いつ帰ったんだ?」

 

「昨日だ。早速報告させてもらうぜヘイオーでの出来事をよう」

 

「待て待て。一旦、私も休憩するから茶でも飲みながら聞く」

 

「了解。じゃあ庭で待ってるわ」

 

紅羽は手を振りながらそのまま部屋を去っていこうとすると皇王が呼び止めた。

 

「待て紅羽。はぁ、全く相変わらず礼儀のなってない奴だ。待っている間、ちょうどそろそろくる頃合い。お前に面会したい者が来るそうだ」


「は?面会?この俺に?てか、その言い方、まるで、俺がここに来ることをそいつは知っているみたいな言い方だな」


「あぁ。お前も知っているやつさ。お前は忙しないからすぐどっか行ってしまうから呼び止めておけと言われてな。まぁもうじき来る」


そう言っていると、ノックもなしに扉が開かれる。誰が尋ねて来たのかと思い、やってくる人物を確認する。そこにいたのは、真っ赤なコートを羽織る、目の鋭い高身長の女がいた。


「紅羽。相変わらず忙しなさそうだな」


「あんたは、咲夜遊。何故ここに?」


「まぁそう言うな。久しぶりに会ったんだ。とりあえずお茶でもと言いたいところだが、生憎、俺は多忙でな。この場でお前に伝えることだけ伝える」


「俺に何を?」


「そうだな。端的に言うと、予言と依頼だ」


二

 

紅羽は庭をうろうろしていた。庭には池と花が所々に咲いており、美しい風景を彩っている。その池の真ん中に屋根付きの休憩所があったのでそこに座り、しばらく庭園を観察する。そうしていると心が落ち着くからだ。先ほど邂逅し、その話の内容に納得がいかず苛立ちを募らせていたからだった。

 

「落ち着く庭だ」

 

「そうだろ」

 

前方から皇王がゆっくりと茶菓子を持った側近と共に歩いてくると紅羽の向かいに座る。

 

「さて、聞かせてくれ、お前の旅の話を」

 

「その前に、さ(・)っ(・)き(・)のはどういうことだ?あんたも知っていたのか?」


「あぁ。その上で、私はお前の説得も任された。この場で納得してもらうぞ」


「ふん。それは、どうだろうな。理解はできる。だが、そうすることに何の意味があるのか」


「まぁ、お前の気持ちも分からなくはない。だがしかし、彼女の予言は絶対。それにこれは私もよく知る男(・)の依頼だからな。彼は信頼に足る男だ」


「その人を俺は知らない。だから、今からその人の話を聞かせろ。その上で決める」


「いいだろう。まぁ、私もそのつもりだ。では、話そう。この私、鹿野枩橋萬歳(かのまつはしばんざい)とあ(・)る(・)男(・)との話を」


その後、萬歳から語られる、ある男との話を静かに聞いていた紅羽はそれを聞き終えると目を瞑り、思考する。


(なるほど。それなら俺は・・・)


「わかった。依頼を受けよう」


「あぁ。すまないな。後のことは任せるといい」


「ふん。依頼を受ける代わりと言っては何だが、俺からも頼みがある。それも踏まえて俺の、俺たちの旅の話をしよう」


紅羽は自分がヘイオーで見てきた、全ての事を萬歳に話し、語り継ぐ。吸血鬼の事、ルクスリアとの事、結末と今後についてを話した。萬歳は何も問わず、ただ黙々と聞いていた。

 

「なるほどな。たいへんだったな。そうか、交流というのならこちらとしても是非ともお願いしたい。一度、ルクスリア殿ともお話しがしたいし、落ち着いたらまずはこちらから使いを出そう。お前の鳩で手紙を届けれるか?」

 

「そりゃ良かった。伝書は任せろ」

 

「ならそれでよろしく頼む。一報は後日、書いて使いの者に届けさせるから家で待て」

 

「了解」

 

「それにしても、たったの四人でその現状を変えるとはな。街を納める者としては恐ろしい話だ。まぁ何はともあれ、無事に帰ってこれて良かったな」

 

「あぁ」

 

その後しばらく他愛もない談笑していると、館から使いの者が走ってきて側近に耳打ちをして、萬歳へと耳打ちする。

 

「すまないが紅羽。そろそろ仕事に戻らせてもらうよ」

 

「そうか。たいへんだな。まぁ交流の件よろしく頼む」

 

「あぁ」

 

皇王萬歳は側近と共に館へと消えて行った。

 

「さて、俺も行くか」

 

三


「いやー、面白かったー!今回も良かった!」

 

「初めて観たけど、なかなか面白い」

 

「おっ!いいね、また行こうね糸音!」

 

「うん」

 

三人は演劇を観終えると外にあった小さな団子屋さんの前にある椅子に座って買った団子を頬張る。

 

「演劇後は絶対この団子屋さんなんだー」

 

「美味しいな」

 

「でしょ!」

 

「おっ!ここに居たか三人共」

 

「あっ、兄さん!」

 

椿は団子を口に一気に放り込むと、今し方歩いてきた紅羽へと抱きつく。

 

「椿が演劇観てる頃かなと思ってな」

 

「あったりー!お仕事は終わり?」

 

「あぁ、ここからは俺も一緒だ」

 

「やったー!じゃあ次は魚釣りに北栄へ行こー」

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