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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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神薙観光(一)


翌朝、糸音は起きてすぐにリビングへ向かうとそこではミナモが椅子に座り静かに本を読んでいた。

 

「おはようございます糸音様」

 

「おはよう、ミナモさん」

 

「朝食はどうなされますか?」

 

「そうだな、何か軽いものを頼むよ」

 

「承知しました」

 

ミナモは本を閉じて、リビングと隣接しているキッチンへと移動した。しばらく椅子でゆっくりしていると紅羽眠そうな顔でリビングへとやってきた。

 

「おうす。おはよう糸音」

 

「おはよう」

 

「よく眠れたか?」

 

「あぁ、おかげさまでな」

 

「そりゃよかった」

 

紅羽はそのままキッチンへと向かう。入れ替わりで、ミナモが糸音のため軽い朝食を運んできた。紅羽は戻ってくると、キッチンから持って来たであろうパンを片手に椅子に座ると新聞を開き読み始める。

 

「ありがとうミナモさん。紅羽、おっさんみたいだな」

 

「ん?あー、これか、新聞は読んだ方がいいぜ糸音。まぁ子供にはわからんか」

 

「紅羽、歳いくつだっけ?」

 

「17だが」

 

「ませてるな」

 

「うっせぇ」

 

軽口をたたきながら糸音は軽い朝食を食べ終え、リビングを去ろうとした時、紅羽が声をかけてきた。

 

「あー、昼前には出るからな」

 

「はいよ」

 

糸音は階段を上り、自分の部屋の前へ着くと、隣の部屋から眠たそうに目をこすりながら椿が出てきた。

 

「あ、おはよう糸音」

 

「おはよう椿、眠そうだな」

 

「うん、昨日ちょっと眠れなくて」

 

「そうか、昼前には出るそうだ。今日はよろしく」

 

「うん!」

 

椿は昨日とは打って変わって元気に返事すると、そのまま階段を降りて行った。糸音も自室へと戻りベットに横になる。

 

「まぁ、特にやる事もないな」

 

糸音はふとミナモが本を読んでた事を思い出す。

 

「本か・・・今度、ミナモさんに本でも借りるかな」

 

その後、特に何もなく午前は過ぎて、紅羽が部屋へと呼びにやってきた。

 

「糸音、そろそろ行くぞー」

 

「了解」

 

部屋をあとにして一階へ降りて外へ出ると、ミナモと椿が待っていた。

 

「よし、行くか!」

 

四人は京の街、神薙へと向かって歩き出した。

数分、山道を下っていくと街への入り口の門が見えてきた。

 

「ついたー!」

 

「いつ見てもこの街は華やかだな。とりあえず俺はこのまま神薙の館へ向かう。二人を頼んだよミナモさん」

 

「承知しました」

 

「じゃあな、椿、糸音、また終わったら合流しよう」

 

紅羽は二人を撫でると糸音はその手を振り払った。

 

「子供扱いはやめろって」

 

「ふっ、ごめんごめん。まぁ仲良くな」

 

紅羽は人混みをかき分けて北へと向かって行った。

 

「どこ行こっか?」

 

「少し腹が減ったな」

 

「そうかー昼だもんねー・・・・あっ!それじゃあ。いいところ知ってるから案内するよ!」

 

「ありがとう」

 

椿は糸音の手を掴むと歩きだす。その後ろをゆっくりと歩くミナモ。

三人は街の喧噪の中へと入って行った。


 

「やっぱり、この街は変わらねぇな」

 

紅羽はゆっくりと辺りを見ながら歩いていた。

 

「お、紅羽じゃねぇか!」

 

「ん?」

 

紅羽の前から一人の若い男が、駆け寄ってきた。

 

「おう!ケールさん、久しぶりだな」

 

「おいおい、いつ戻ったんだ?」

 

「つい昨日だよ。いやー、なんかあんまり変わらねぇなこの街も」

 

「そうそうかわれねぇよ、この街はな。それに俺たちが守ってんだ。無茶苦茶にはならねぇよ。それになんたってシャオさんがいるからな」

 

「それもそうだな。今から皇王様に会って報告しに行くんだが、一緒に来るか?」

 

「いや、俺は今、仕事中だからよ。また今度飯でも行こうや」

 

「そうか、邪魔したな!シャオさんにもよろしく言っといてくれ」

 

「おうよ!んじゃな!」

 

紅羽はケールと別れると再び北にある神薙の館へと歩きだした。


 

「ここが、雷文亭!この街で五本の指に入る、最高のラーメン屋だよ!」

 

「おー、ラーメンはあんまり食べた事がないから楽しみだ」

 

「えー!糸音、損してるよ!さぁ入った入った!」

 

糸音は椿に背中を押され中へと入るとラーメンの香ばしい匂いが漂っていた。

 

「らっしゃい!おっと、椿ちゃんじゃねぇけ。今日はお友達とかい?」

 

「そうだよ!じっちゃん、いつものやつ三つね!」

 

「あいよー!」

 

空いているカウンターに三人は座る。

 

「友達か」

 

「どうしたの?」

 

「いや、友達って言われたことがなんだかむず痒いな」

 

「へぇー、てっきり嫌なのかなって思った。まぁ、そう言われると私もむず痒いかも。私も、友達なんて初めてだから」

 

そう言って少し嬉しそうに椿は笑った。しばらくしてラーメンが運ばれてくる。シンプルな醤油の匂いが漂う醤油ラーメン。

 

「ありがとうございまーす!じゃあ、いただきまーす!」

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

「うーん、やっぱり美味しい!ね、どう?」

 

椿は食い気味に満面の笑みで糸音へと尋ねる。

 

「うん、美味しいよ。最高だ。ありがとう椿」

 

「よかった!」

 

椿は嬉しそうに笑みを浮かべて、再び自分の器へと箸をのばしてラーメンをすする。

 

「ふぅ、満足満足」


三人は雑談を交わしながらラーメンを食べ終わると店主に礼を言って、店外へと出る。

 

「また来たいな」

 

「うん!気に入ってくれたなら良かった!また来よ!ぜひ次は違うラーメンを紹介するよ!」

 

「ありがとう。それでこの後は?」

 

「街へ出て色々なところで遊ぼうよ!案内するから!」

 

「あぁ、よろしく」

 

「じゃあそうだなー・・・そうだ!食後だし、次は劇場でゆっくり鑑賞しよう!」

 

「劇場?」

 

「そう!まぁ演劇だね。面白いよ!もしかしたらお気に入りの演者さんいるかも」

 

「じゃあ、そこへ行こう」

 

椿の案内のもと、三人は南京で一番有名な劇場シアターオブペインへと向かう。

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