要塞都市戦(五)
北の大都市に私は生まれました。北の北、寒い寒いこの大都市では悪党が跋扈する治安が悪い場所でした。父はそんな大都市を治める統括者でした。私の父は市民のために悪党達を次々と捕らえて、牢獄へと送りました。しばらく経って悪党は減り、平穏な暮らしが続きました。
しかし何故か、父はある日を境に権力を行使して、市民に苦しい生活を虐げていきました。
私は父を咎めましたが、父は聞く耳を持たず、そのまま独裁者と成り果ててしまいました。ある日、私が遠征に出かけて帰ると国は滅び、父は死んでいました。街では父が捕まえたはずの悪党達が暴れ回っていました。私は逃げようと街を出ました。しかし運悪く、私は悪党達に捕まり、父の造った北の要塞に幽閉されてしまいました。
そして何年か過ぎた頃、一人の少女が同じ牢屋に入ってきました。少女は、ある依頼でこの島に来たと言っていましたが、ドジって捕まってしまったと言っていました。その少女とは気が合い、たくさん話をしました。ある日、少女がここには飽きたと言って、脱獄計画を考えて、逃げると言いました。私もそれにあやかり共に脱獄をすることにしました。
そして決行日になりましたが、不思議なことに、朝起きると牢屋が開いていました。恐る恐る外へ出てみると、そこには誰もいませんでした。大人も、子供も、動物も、怖い悪党達もいませんでした。
一緒に脱獄した少女が、所有している家が南にあると言うので一緒について行くことにしました。そして艱難辛苦を乗り越えてようやく目的の地に着きました。
そこで私は何日も考えました。これから自分はどうしたらいいのか、何をすべきなのか。
ある日、少女からこの国の今の現状を聞きました。少女は地方を転々としていてあらゆる情報網を持っていました。少女が言うには、今この地方は悪党達が権力を握り、各地で市民を虐げているそうです。私はそれを聞き、再び過ちが起こらぬ様に阻止しなくてはならないと思いました。王族とか、権力とか、軍隊とか、戦争とか、悪党とか、そんなのはいらないと、私は思いました。この土地には確かな正義が必要だと。奮起した私は立ち上がり、ある日私は二つの正義に出会った。
一人は、ただ一つの者を守る為に行動する純粋な正義。
もう一人は悪を決して許さない、危うさこそはあるが闇の中にたしかにある正義。
この二人とならこの土地を変えれる。そう確信した。
それから・・・・・
私、ルクスリア・ベルフェナーレの話に賛同してくれた少女、波風詩織となら・・・
「わ、わたしは・・・」
ルクスリアは鎖を力ずくで引きちぎり立ち上がる。その目には怒りでもない、悲しみでもない確かな覚悟と正義を宿していた。
「わたしは、ルクスリア・ベルフェナーレ!悪を切り、正義を成し平和を成し遂げる者ッ!」
瞬間、ルクスリアは飛んだ。瞬き一瞬で真っすぐジャックへと飛び掛かる。
「ん?なんですかな・・・!?」
ルクスリアは鋭く鋭利な爪でジャックの両腕を吹き飛ばした。鮮血が飛び散り、返り血を浴びたルクスリアがジャックの前にいた。
「おや、おや・・・あなたまさか・・まさか、吸血鬼の血を抑え込むとは。なるほど。素質はあった、ということですね。これは楽しめそうだ!」
ジャックは一瞬でルクスリアとの間合いを詰め、鋭い爪をルクスリアの腹に刺すと、そのまま投げ飛ばす。ルクスリアは空中で回転すると着地後、すぐにジャックへと飛んで再び爪を立て、襲い掛かる。
「回復力も素晴らしい。私と同等、いや、それ以上ですか!」
ルクスリアは横目で遠くにある紅羽の和刀を見つけると、その場所まで一瞬で移動する。
そして和刀を手に取ると自分の腕を切って血を流す。その血液はまるで意思でもあるか如く、刀身へと纏いつく。
「ほう、面白い。血液操作のようなものですかな?」
「ルク・・スリア。どうなって、いる・・」
「おー、起きたか糸音」
意識を取り戻した糸音の側には、いつの間にか詩織がいた。
「あぁ、それよりどうなっているんだ?あれはルクスリアなのか?」
「うん。ルクスリアが吸血鬼になっちゃったみたい」
「吸血鬼だと。大丈夫なのか?」
「さぁ。でも、今は味方みたい」
ルクスリアは二人が起きた事に気づくと一瞬で糸音達の元へと移動した。
「大丈夫か、二人共?」
「あ、あぁ。ルクスリアこそ大丈夫なのか?」
「はっは。絶好調だよ。なんかよくわからないけど」
「はっは。そうか。加勢しよう・・・」
「いや。大丈夫だ、それよりも紅羽を」
「・・あぁ、わかった」
糸音はそれ以上何も言えず立ち上がると、詩織と共に紅羽の元へと移動する。
ルクスリアは血剣を構えジャックへと向き直る。
「さぁ。もっと楽しみましょう!ルクスリア殿・・!?」
次の瞬間、ルクスリアはジャックの目の前に現れた。まるで最初からそこにいたかのように。
(速い!?いや、これは・・)
「・・!?」
ジャックの視界は気づくと逆さになっていた。そして自身の体が視界にうつる。
「なっ!ばかな!」
ジャックの頭部は地面へと転がり、首から上を失った体からは噴水の様に鮮血が飛び上がり辺りに血の雨を降らせた。その前には再び血を浴びるルクスリアの姿があった。
「・・・詩織。今の見えたか?」
「だめだめ。全然見えなかった」
その様子を気絶した紅羽の横で見ていた糸音は息をのんだ。
「さっさと再生しろ。こんなものじゃないだろ?ジャックザリッパー。いやこう呼んだ方がいいか。クレイン・ベルフェナーレ!」
「・・・へぇ、気づいていたんですね?いつからですかな?」
「吸血鬼に覚醒して、何故か急に記憶の中のお前が変わったんだよ。この血を浴びて、何故だか感じた、血のつながり。そして確信した。お前が本当のジャックザリッパーではないと。いや、そもそもそんなやついなかったんだ。記憶の操作がされていた」
「なるほど。直観、いやはや、血のつながりは恐ろしいな。それにしても実の父親を呼び捨てはいかんな、ルクスリア」




