要塞都市戦(五)
「おやおや、あなたたちはお呼びではないのですが」
「知るかよ。それで糸音、状況は?」
「ごめん。ルクスリアが吸血鬼の血栓を打たれた。その横にいる子供にもな。吸血鬼化を止める薬はあるらしいがそれはジャックが持っている。先に言っておくが私は、その薬をルクスリアに使うべきだと思う」
「そう判断を早急にすることはないぜ。なんとか打開策を考えよう。今はとりあえず早くアイツをぶっ飛ばそうぜ」
「三人ならなんとかなるよー。それにしても糸音が苦戦してるの珍しいね」
「あぁ。どうやらアイツの声には人を惑わせる作用があるらしい。それにプラス不死身で、すぐに再生しやがる。おまけに影に潜むことができる異能持ちだ」
「さすが吸血鬼。ほぼチートだねー。まだ完全に成ってないことを祈るばかりだね。でもあれだけどねー、そうなっていたとしても攻略方法はあるけどね」
「は?今なんて言った?」
「え?だから、吸血鬼を殺す方法を知ってるってこと。まぁ正確には死なずに抑える方法だよ」
「詩織。そんな方法があるのか?」
「うん。要は殺さなければいいんだよ」
「どういうことだ?」
「まぁ、作戦があるから耳貸して二人共」
詩織は紅羽と糸音に作戦の内容を耳打ちした。ジャックはその様子を腕を組み様子を伺っていた。
「こそこそ話。まぁいいでしょう。演目が少し変わるだけ。結末は同じなのですから・・・」
詩織は話を終えると後ろへと下がる。紅羽と糸音は互い、武器を構え、ジャックへと向き直る。
「話し合いは終わりましたかな。では、始めましょうか第二幕を!」
ジャックを二人へと飛び掛かる。先に狙われたのは紅羽の方だった。
「先に邪魔なあなたを片付けましょうか。それから後ろの彼女を」
ジャックのナイフが紅羽を襲う。紅羽は辛うじてその剣筋を見ることができた。僅かな隙を突き、反撃するも致命傷にはならず。だが、それでも攻撃を止めることはしなかった。
(さすがに速いな。吸血鬼は初めただ。俺の演武でなんとかなるか試してやる!)
紅羽の動きが変わる。それは先日、糸音との模擬戦で見せた和刀演撃剣舞。滑らかにまるで川の流れの様に、先読み不可の刀技。
「ほう。やるじゃないですか。少し舐めていました。しかし、先読みはできずとも私は不死、死なぬのなら突っ込むまでです」
ジャックは斬られ、刺されようとも、紅羽へとナイフ一本で迎え撃つ。斬られた箇所は瞬時に修復され、紅羽は次第に押され始めた。そして、ジャックは紅羽の腕を掴む。瞬間、糸音が針剣で背後からジャックへと襲い掛かる。二人の剣撃を器用に躱しつつ、ナイフで悠々と反撃するジャック。針剣がジャックの手のひらに刺さる。そのまま針剣の柄まで自分で刺しこんでいき、糸音の手を掴むと壁まで投げ飛ばした。
「流石に痛いですが、問題ありません。さて・・と!」
糸音が飛ばされた瞬間、詩織がクナイをジャックに投擲していた。しかしそれを容易く体を反らして躱すジャック。
「紅羽!」
糸音の掛け声で紅羽はジャックから距離をとる。瞬間、ジャックへと一直線上に音波が駆け巡り、地面を削り、凄まじい音波がジャックへと命中する。ジャックの体は弾けたが、すぐに再生して一瞬で詩織との間合いを詰めて、まず腕を折ると壁まで投げ飛ばす。次の瞬間、糸音の目前に迫ってきたジャックは拳を糸音の腹に叩き込み壁へと吹き飛ばした。
「なかなかどうして、戦いとはこうでなくては。もっと舞いましょう!」
「まじかよ・・・」
紅羽は呆然とした。それもそのはず、戦闘において一目置いていた二人が一瞬でやられてしまったのだから。
「!?」
ジャックの猛攻は止まらず。紅羽の目前に暗闇と共に現れる。紅羽は咄嗟に和刀で斬りかかるが間に合わず。強烈な鉄拳により、後方の壁へと吹っ飛び壁が崩壊。
「それで、作戦とやらがあるのではないですか?これがその作戦ですかな?」
ルクスリアは目を開けると視界には三人の倒れた姿。そこに立つは一人、ジャックのみだった。
「糸音・・・紅羽・・詩織。くっそ・・私は・・私は・・・」
何もできぬまま、また失うのか・・・




