要塞都市戦(四)
一
紅羽はようやく三人が分かれた分かれ道に戻って来た。
「たしか、真ん中だったな・・・!?」
紅羽が一歩踏み出すと右側の道に凄まじい殺気を感じ、立ち止まる。
(この道は詩織!?まさか何かあったのか・・)
「何者だ!?」
「・・・・あれ?兄貴じゃん」
「詩織?」
暗闇から現れたのは詩織だった。特に変わった様子はなくキョトンとしていた。
「どうして戻って来たんだ?お前も行き止まりだったのか?」
「・・・そうなんだよねー、てことは兄貴もか。なら糸音の道が正解かな」
「みたいだな。とりあえず急ごうぜ。なんだか嫌な予感がする」
「はーい。じゃあ早く行こ!」
「おうよ」
(なんだったんだ?さっきのは・・・まぁいいか)
二
「ところで夕凪糸音殿。言い忘れてましたが、と言うよりあなたが先走ったせいで伝え忘れてましたが、薬は一本しかありませんよ。どうするおつもりで?」
「そんなの、ルクスリアに使うしかない。子供には悪いが、ルクスリアはこの革命の要、ひいては今後この地方の現状を立て直すためには、彼女の様な人間が絶対必要になる。だから、ここでルクスリアを失う訳にはいかないんだ」
「素晴らしい!建前であり、その身、事実冷酷な人間性が見えますね、あなたは」
「うるさい!」
糸音が振るう針剣がジャックの腕を引き裂く。瞬間、腕が再生。そんな風にジャックの体を斬り倒し、しばらくの時間が経った。ジャックも爪を尖らせて糸音の攻撃に応戦する。凄まじい速さでぶつかり合う両者。しかし、やはり吸血鬼のアドバンテージがある分。ジャックに分があった。それもそのはず、吸血鬼は不死身。ジャックのステージは詩織の言っていたステージ三に近づきつつあった。
「さぁさぁ、どうしますか?疲れが見えますねー夕凪糸音殿。まだまだ、こんなものではないでしょう!」
「化け物が!・・・!?」
珍しく糸音が隙を突かれた。ジャックの爪が腹に刺さり、そのまま投げ飛ばされ壁に叩きつけられる。
(おかしい・・・・なんでこうもイライラする・・・さっきから攻撃が絶妙のタイミングで躱される。まるで先読みでもされている様な・・)
「糸・・おん・・・」
ルクスリアの霞む目には糸音の姿が映る。かろうじてルクスリアの意識はあった。そして、ルクスリアは叫んだ。糸音に伝えるために。
「糸音!!そいつの話を聞くな!!そいつの声には人の心を奮闘させ、冷静さを裂く力を有している!!だから、無心で戦え!!!!」
「ふん。まだ意識が。それに余計なことを・・・まぁ、耳が聞こえる以上、不可能な話ですが」
(なぜならそう、私の声に秘密があるのですから・・・声の出し方、話し方で相手を刺激し、落ち着かせることも、奮闘させることも可能にしている。どうやら、あなたはなまじ耳が良いみたいだ。軽く効いてしまう。そして私は吸血鬼、死なない体。まさにグレート!)
「ルクスリアのやつ、自分がやばい状況ってのにデカい声なんかだすんじゃねーよ」
(でも、なるほどな。たしかに、さっきからおかしいとは思ったんだ。妙にイラつく。それも全部こいつの声が原因ってか)
糸音は立ち上がると、懐から針を取り出し、辺りへと投げ飛ばす。その針には目では視認しにくい細い糸がついていた。糸音によって辺りには糸が張り巡らされた。
「何をするんですか?こんなに糸なんて張って。私の動きを封じるつもりですかな?・・・・いや、よく見ると・・針と針で紡がれた糸の線上に、少しばかりの小さな針がぶら下がっていますねー」
糸音はそのぶら下がった針目掛け、持っていた自身の針を投擲する。投擲した針はぶら下がる全ての針に当たり、金属音が鳴り響いた。
「なかなかうるさいですねぇ。何をしているのか全くわかりませんが、こないのならこちらから行きますよ」
ジャックは糸音へと接近。糸音はその場から動かず。そのかわり、目を閉じ針剣を構えてた。
「おやおや諦めましたか!夕凪糸音・・!?」
糸音はジャックのナイフを、目を閉じたまま躱して、すかさず針剣で反撃をくらわせた。
一秒間に約十回の乱れ突き。ジャックの四肢は引き裂かれ破裂した。糸音が放ったのはただの乱れ突きではなく、音波を切っ先に乗せた波状連撃。突かれた箇所が、切っ先が当たるのと同時に爆散。音の異能を駆使した糸音独自の技。
「やっ・・たのか? 糸音・・」
「残念でしたねぇ」
ジャックは闇の中から再び現れた。
「やはり、暗闇へ仕込んでいたんだな。まったく小賢しいな」
「イエス。私は吸血鬼になるのと同時にある特異な能力に目覚めましてね。影へ潜ることができるのですよ。さらに、そこにはあらゆるモノを収納できるんですよ。だから、私はやられる寸前、体の一部を切り離して影に潜ませておきました。しかし、何故避けれたのですか?まさか耳栓を?」
「なるほど、影か・・・耳栓?そんな物は持っていない。ただ私は、針が奏でる音の波長でお前の声の波長を中和したまでだ」
「くっくっくっ。なるほど。この金属音はそのためですか。器用な事を・・・これも耳が良いあなただからできる芸当!本当にあなたは楽しませてくれますねー。しかし、それが出来たところで、どうやって私を殺しますか?」
「はっは。さてそうだな、どうやって殺そうか」
ドンッ!
その時、入口の扉が前触れなく吹き飛んだ。砂煙がはけると、そこには紅羽と詩織がいた。
「いきてるかーーーー?」
「ルクスリア!糸音!加勢するぜ!」




