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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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要塞都市戦(三)


「くっそ!何てこと考えやがるんだ!ジャックって奴はよう!」

 

子供は紅羽へと向かって、何度も爆弾を抱えて走り、爆発の度に死んでは生き返っていた。

 

(それにしてもこの子供、眷属崩れなのか?・・・でも眷属崩れなら理性が無いはず・・・)

 

「一体どうなってんだ・・・?」


逃げ惑うことしかできず、子供の特攻を躱し続ける紅羽の動きが止まる。さっきまで、追いかけて近づいて来る子供がピタリと動きを止めて、突然その場に倒れたのだ。

 

「おい!大丈夫か!・・!?」

 

倒れた子供に近づくと子供は跳ね起き、獣のように紅羽へと飛び掛かって来た。そんな咄嗟の子供の行動に反応が遅れた紅羽は足を引っ掻かれてしまう。

 

「くっ!」

 


紅羽は足に鋭い痛みを感じ思わず膝をつく。紅羽の片足には、まるで獣にでも引っ掛かれた様な傷があった。

 

「ぐぁぁあああああああぁぁ!」

 

瞬間、子供の目は正気を失い、獣の様な咆哮を上げる。よく見ると、その子供の爪が鋭く鋭利なものとなっていた。

 

「吸血鬼化かってやつか・・・」

 

子供は紅羽へと飛び掛かる。狂気に迫り来る子供の攻撃を、負傷した足でかろうじて躱しながらながら後方へと飛び下がる。

 

(しくったぜ!思ったよりも傷が深い。まさかこんな子供にも・・・なんて下種野郎なんだジャックって野郎は!・・・・しかしなんで急に吸血鬼化したんだ?それまでは普通に会話ができていたはず。吸血鬼化のスピードは人それぞれってことなのか?)

 

「やむを得ん!」

 

紅羽は子供を近くにあった牢屋へ誘導すると隙を突き、蹴りを入れて牢屋にぶち込み鍵をかけた。

 

「ごめんな、しばらくそこで大人しくしていてくれ・・・・詩織はなんとなく大丈夫そうだが、糸音の方は心配だな。なんだか嫌な予感がしやがる」

 

紅羽は急ぎ元来た道を引き返し、糸音が進んだ道を目指すことにした。


 

糸音は何もない通路をただひたすら進んでいた。通路の壁はコンクリート壁になっており、冷たい空気が辺りを一層、冷ややかにしていた。

 

「なんだ、何もないな。不気味なくらい静かだ・・・」

 

糸音は警戒をより一層に強めしばらく進んで行くと、大きな扉の前へと辿り着いた。

糸音は一息つき開け放つと、そこには大きなエントランスがあった。そしてその奥、玉座が一つ、そこへルクスリアが鎖で拘束されていた。

 

「やぁ、やっと会えましたね夕凪糸音殿」


玉座の前、闇の中、真っ黒のローブに紳士服を着た、怪しく嫌悪感を抱く男が一人、ジャックザリッパが床から現れた。

 

「お前がジャックか。私と戦いたいなら、こんなくだらん真似はせずに正面から来い」

 

「正面から・・・くっくっく。ノーノーノー。私は、悲劇を、喜劇を、惨劇を見たいのです。そしてこれからそれをあなたが演じるのです」

 

「何をわけがわからない事を言っている。お前のふざけた思想に付き合う気はない。さっさと終わらせよう」

 

糸音がジャックへと距離を詰めようと一歩前へ出ると、柱の影から眷属崩れ達がぞろぞろと現れ糸音の行手を阻む。

 

「全く、まどろっこしくて面倒だな」

 

「夕凪糸音殿。こちらを見なさい」

 

「!?」

 

言われ、糸音はジャックの方を見る。ルクスリアの横には、いつの間にか幼い子供が鎖で拘束され倒れていた。そして糸音にはその子供に見覚えがあった。この街に来た時に家へと招き入れてくれた子供の一人であった。

 

「何のつもりだ!」

 

「さぁ、始めましょうか」

 

ジャックは懐から赤い注射器を取り出すとルクスリアへと刺して、その赤い液体を注入する。

 

「それはなんだっ!」

 

「慌てずに・・・これは吸血鬼の血ですよ。そして、こちらにも・・」

 

ジャックは子供にも同じ、赤い液体が入った注射器を取り出して注入する。数秒後、二人は苦しみ出した。


「ぐああああああああ!!!!!!」

 

「くそッ!」

 

「まだですよ!」

 

糸音は咄嗟に二人のいる場所まで駆け出すがジャックの静止の声に足を止める。

ジャックは懐からさっきとは別の緑の注射器を取り出すとそれを糸音へと見せつける。

 

「これは吸血鬼化の進行を抑える薬。しかし残念ながらこれ一本しかないのです。あぁ、悲しい・・・ということはわかりますかな?」

 

「この下種野郎がッ!」

 

糸音は怒り、辺りの眷属崩れ達をなぎ倒す。その姿はまさに鬼。鬼人のごとく殺しの限りを尽くす。

そうして数秒後、その場にいた約百人ほどの眷属崩れ達は糸音一人によって秒殺された。


「素晴らしい!まさに鬼人!本当にあなたは人間ですか!これなら私自身も楽しめそうですねぇ。さぁ、では私も舞台へと上がりましょうか」

 

「・・・・」


糸音は目を閉じ一息つく。少しばかり落ち着きを取り戻した。

瞬間、目を開けた糸音は一瞬でジャックへと間合いを詰め、針剣を振りかざしジャックへと襲い掛かる。その凄まじい一振りをジャックはナイフ一本で受け止めた。


「いいですねぇ。素晴らしい速さ!さぁ、第二幕と行きましょうか!夕凪糸音殿」

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